53話 異世界マック④
----(清見視点)----
「今度、子供達と朝マック食べに来ますね」
「来てもらうより俺らが行きたいですっ!」
「そっちに行きたい、頼む、連れて行ってくれ」
あっという間に周り中の視線が俺に集中して焦った。視線だけでなくにじり寄ってくる。
この先どうするかをこれからゆっくり話そうと、きっと大島氏は思ってたはず。
ごめん、大島氏ぃ。プチパニックを誘導してしまった。
「そうだ! 清みん、仏間に非常食あるだろ。あれ、取ってきてくれるか?」
「あ、うん。わかった」
俺は慌てて立ち上がりドアへと向かった。背後から大島氏が皆へ救助計画について語っているのが聞こえた。
仏間の押入れにある防災用の非常食、その他、今回の泊まりがけツアー用にのせてきた食糧。
50人分か……足りないよな。とりあえずあるだけ持っていくか。
とは言えひとりで全部は持てそうもない、そう思ったらいつの間にか背後にマック店員がひとり立っていた。
「俺も運びます。シフマネに行って来いと言われたんで」
「あ、ども。しふまね?」
「シフトマネージャーです。あの人すっげ有能なんすよ。目端がきく? つか、360度常に気を配ってる感じですね」
押入れから出した非常食の段ボールを渡す。俺はひと箱しか持てないが、彼は重ねて二段にして持った。
「大丈夫?」
「平気っす。俺、力は結構自信があります。よっこいせっと……」
俺も残りのひと箱を担いで……おっも、腕が伸びるぅ、頑張れ、俺。
ヨタヨタとマックの駐車場を突っ切った。
「スキルとか魔法って本当にあるんすか? 俺らにもあるのかな。店を動かすスキルは誰が持ってるんすかね。親子連れのお母さんの誰かかな」
色々と話しかけてくれてるんだけど、重くて落とさないでドアまでたどり着くのがやっと。けっして無視をしているわけではないのだ。
見るとバイト青年はあっという間に中に入っていた。別のバイトが俺の箱を受け取りに来てくれた。
もっと身体を鍛えなくては、なんて思わないからな。腕立て伏せとかもしないぞ。俺には押入れがある!
大島氏ぃ、俺もう仏間(の押入れ)に帰っていい?
大島氏から『NO』の合図きた。
店内では歓声が起こった。防災用食糧には混ぜご飯やピラフが入っていた。久しぶりの米だ。
「やった!……4年ぶりか?」
「こっちに来てからパンしか無かったからな」
「嬉しい、お米よ」
「白米! 白米ないの?」
「防災食なので、白米は無いんですよ。単品で食べられる保存食なんですよ」
「皆さん、落ち着いて。大島さん、これは何人分くらいですかね」
「どうだろ? おそらくですが、ひと家族の一週間分くらいなのかな」
「ふむ、とすると、4人かける3食かける7、として……84か。十分足りますね、とああ、あの、これはいただいてよろしいんでしょうか?」
大島氏がこっちを見たので慌てて首を縦に振った。話を振られたら面倒だからな。
米系のアルミパックがカウンターに並べられて次々と水が注がれていく。
「30分お待ちください! ちゃんと全員分あります」
「シフマネ、茶碗はどうします?」
「コーヒーの紙コップに入れてスプーンをそえてください」
「缶詰は焼き鳥鯖と……あとなんだろ、種類が違っちゃうけどどうしますか」
「缶を開けてバーガーの紙ボックスに適当に分けて、ひとりずつ取ってもらってください」
店長はあっちのおっさん……、俺より年上の人、で、皆に指示を出しているのあの人がシフトマネージャーって人か。俺より若いっぽいけど凄いな。やはり働いてる人って凄いわ。
俺と大島氏はさっきマフィンのセットを食べたばかりなのでご飯は遠慮した。遠慮と言うか満腹で食えん。
皆嬉しそうに頬張っている。
良かったな、と思う気持ちと、荒地でマックと言う食事付き空間に来れた人はラッキーだよ、と思う気持ち。
ここに来る途中森で見つけた、ミイラの様なご遺体……。「餓死したのか」大島氏がそっと土被せていた。その光景が浮かんでしまった。
もちろん俺も最初から仏間はあったしキチママさん達とも知り合えたから物凄くラッキーだった。だから俺が言う事ではないのだが、心の隅で思ってしまうのだ。
俺がマリーアントワネットなら。
『お米がないならパンがあるからいいじゃないの』
いや、マリアンはそんな事は言わなかった。
自分でも何がモヤっているのかわからない。4年ぶりにお米が食べられて喜んでいる、ただそれだけ。誰も、何も、悪くない。
飢えてない俺が、飢えて死んでいった人のために怒るのも違う。
あ、やばい。これ、流れでいったら、俺の好き嫌い(芋虫)も克服しなければならなくなる。
『食べ物が無かったら、虫を食べればいいじゃない』
うわー、マリアン様、ごめんなさい。すみませんすみませんすみません! ナマ言いました! 米万歳!パンも美味しいよ。生きてて良かった。
「どした? 清みん? なんかひとり完結してるっぽいな? 大丈夫か? 話したい?」
「あ、ううん。大丈夫。解決した」
俺がひとりぐるぐるをしている間に、皆は食事を終えていた。寝ている子も居た。




