52話 異世界マック③
----(清見視点)----
「ただ、ニッポン街まではここから乗り物で丸2日はかかります」
「乗り物……?」
大島氏が、マックの駐車場に停められた仏間を指差した。
「この世界が不思議な世界である事はもうお気づきかと思いますが、魔法のような物が存在します。その中に空間を移動させるスキルがあります。恐らく皆さんの中にこのマックを動かせる方がいると思います」
皆がキョロキョロとお互いを見合う。
はたして、マックの空間スキル持ちは誰なのか。
大島氏がスキルの話をした。皆に力んでもらうが、いまひとつ理解してもらえなかったようで、うまくステータスを出せないようだ。
マックの転移に巻き込まれた人でなく、逃げ込んで来た人、その人達は4年前にスクロール画面が出たはずだ。
スキルを取らなかったにしても、誰も覚えていないのか? ゲーム好きとかファンタジー小説読んでた人居ないの? あそこの大学生くらいの数人……4年前は中高生くらいだろ? ヲタはひとりもいないのか?
マックが食糧再生の謎空間のままなら、この中の誰かが空間スキル持ちのはず。
「清みん、とりあえず今日はここでもう一泊しよう」
「あ、うん。あの……そしたら俺、朝マック注文してもいい? 朝じゃないからダメかな?」
「大丈夫です。作りますよ」
バイトの子かな。カウンターの向こうへ入っていった。
「飲み物は何にしますか?」
カウンターの向こうから声がかかると、カウンター前に居た人達が場所を開けてくれた。
カウンターの上にはメニューがあった。
「あ、俺……お金、無い、んだけど……、大島氏、持ってる?」
「む、……すまん。電子マネーなら」
「大丈夫です。現在はフリーでご提供させていただいています」
良い人だなぁ。あ、コーラ飲もうかな。あ、やっぱりシェイクにする!
大島氏も俺と同じセットを頼んでいた。ただし飲み物はコーヒーだった。コーヒーならニッポンの機体カフェで飲めるのに。
店内に居た人達は俺達を囲むように床に座り、話の続きを聞きたがった。
大島氏は質問攻めにあい、口の中の物を慌てて飲み込んでいた。
俺は手に持ったソーセージマフィンをチマチマと齧りながら周りの様子を窺った。
荒んだような薄汚れた感じはあるが、餓死するほど痩せた人は見当たらない。どちらかと言うと逆か? よくあるイメージの引きこもり系に近い気がする。ピザとポテチが主食で陽の当たらない人間。(す、すみません。あまり人の事を言えないな、俺……)
痩せてはいないが不健康そう。狭い空間に大勢が居るせいかそれなりに匂いはするが、浮浪者のような感じはしない。水が使えるから適度に洗濯や身体を拭いたりしていたのかな。
子供はそれほど不健康に見えないな。
「あ、サラダ」
俺は透明なプラスチックの器に入ったサラダを食べている子供を指差してしまった。
「あ、サラダも召し上がりますか? 残ってるかな……、サラダはそんなに数がないんですよ。あ、明日になったら、朝なら大丈夫なんですよ!」
「あ、ちが、すみません。欲しいわけじゃなくて珍しくて……」
「マックにサラダあったんですね」
大島氏が助け舟を出してくれた。
「はい。ありますよ。ただ、普段からあまり出てなかったので在庫が少ないんです。朝の復活でも元からあった数しか復活しないからなぁ……」
そうか。マックにサラダあったんだ。そんで数が少ないから子供優先で食べさせていたんだな。
凄いなぁ。ここのリーダー? 誰なんだろう。自衛隊とか警察関係者かな?
大島氏も気になったようで聞いていた。残念ながらそっち系の人は居なかった。
けれど、店長やバイトリーダー、特にシフトマネージャーが有能なんだって。よくわからないけど凄いな。俺、マックでバイトは出来ないかも。
子供達も、周りの大人も行儀がいいな。ワガママ言うやつとか居なかったのかな。
オモチャで大人しく遊んでいる子もいる。俺がそれを見ていたら近くに居たマックの制服を来た青年が声をかけてきた。
「オモチャなら余ってますから持ってきましょうか? ハッピーセットのオマケなんですが、毎朝同じ物が復活するから子供達もいい加減飽きちゃってますよ」
ちが、違うから。欲しくて見ていたんじゃないから。けど、裕理君や他の子達が喜びそう。
だけど、貰っていくより、裕理君達を連れてきたいな。
「あの、今度、子供達と来ます。その時にください。あ、俺にじゃなくて子供に、ですよ」




