51話 異世界マック②
----(清見視点)----
ニッポンから丸2日を超えた距離にマックがあった!
遠いな。気軽に行ける距離じゃない。
でも、裕理君達を連れてきてあげたいな、なんて考えているうちに大島氏が仏間から出て、駐車場を突っ切って入口に向かっている。
どうしよう。仏間は駐車場に停めたほうがいい? あ、それともドライブスルーで何か買おうかな。
ドライブスルーのマークを発見してそっちを見たけど狭そう。仏間で通り抜けるのは無理か。なら、うりゆ君に乗ってドライブスルーを……。
「清みん、こっちだ!」
大島氏に呼ばれたので慌てて仏間から出た。駐車場からマックを見ると、窓ガラスにビッチリと人の顔が鈴なりになっていた。
怖い。あれ、本当に人間かな。あんな合体生物だったらどうしよう。
「忘れ物!」
マックの扉を開けて入りかけた大島氏に声をかけて仏間へ戻った。念の為、護衛を持っていこう。ポヨン君とパミュンちゃんをリュックにいれて背負ってからマックへ向かった。
扉からそっと中に入ると、大島氏が人まみれになっていた! 大島氏が食われた!!!
わけではなく、囲まれて一斉に話しかけられていた。俺は後ろでマックの客のひとりになりきる。
大島氏が皆を落ち着かせて、話を聞き始めた。
やはり、あの日、マックごとこの世界へ転移してきたそうだ。
平日ではあるが春休み期間の朝マック、いつもの平日よりも親子連れが多かった。
なるほど、空間スキルの条件はいまだに不明ではあるが、『子供』が条件なのは確かだ。それも幼い子供。
だが、空間スキル持ちは誰なんだろう?
親子の母親なのか、看護師長や園長先生のようにマックの店員さんの可能性もある。
周りが落ち着いてくるとマックの店員のひとりが代表するように話始めた。
「俺ら、あの日からずっとここに居るんだ。あれから3年? 4年か?」
外から見た時、確かに周りは何もない荒れた砂漠にポツンとマックだった。
俺は引きニートだから仏間から何年出なくても平気だ。けど一般の引いてない人やニートでない人、マックでバイトしているくらいだからちゃんと外で働く人に、この空間で4年間!それは確かにキツそうだ。
大島氏が宥めながら話を聞く。
あの日、初日にはマックの店員及びバイト、そして店内に居たお客さんの親子連れや学生などが居たそうだ。
店舗の外に居た人が何かに追われて次々と飛び込んでくる。
やはり、ただの荒れた砂地ではなく『何か』は居るんだ。危なかった、俺、普通に歩いて来ちゃった。駐車場だから平気だったのか? ポヨン君を持ってきて正解だったな。
気になって停めてある仏間を窓から見た。特に問題はなさそう。うりゆ君達も大人しくしている。
「結局、外へ探しに出た人もすぐに逃げ戻ってくるし、他にも逃げ込んでくる人らがいた」
「最近はめっきり来ないわね」
「そうだな。君が久しぶりだよ。いつぶりだ?」
「昨年からもう誰も来てないぞ。来たのは最初の年とその翌年か」
「あれは、家、なのか?」
「何の動物なの? あれで家を引かせているの?」
「危なくないのか?」
大島氏がまたしても一斉に質問攻めなっていた。
大島氏はこちらの事を答えるより先に、ここの情報を探ろうとしているようだった。
「ここには全員で何名が避難しておられるのですか? 4年もと言う事は水と食料は大丈夫だったのですね?」
聞かれた男性は他の人の顔を見ながらも答えた。
「ええと、あの最初の時に店内に何人居たかは覚えてないんだけど、ドライブスルーにあった車は裏へ動かした。何か車が動かなくなったって騒ぎになって皆で移動させたんだ。裏に入りきらない車はあの辺に停めた」
指差した方向を見ると駐車場ではなく、マックの壁よりに車がズラリと停めてあった。
それとは別に充電中の配達カーと、3台のバイクもあった。
これ、保育園と一緒で駐車場ごと転移してきたケースかな。
「それであの頃は皆、大混乱で、外から逃げてくる人も大勢いたし、逆に外へ救助を呼びに出る人らも居た。出たり入ったりで、結局今は50人くらいかな」
車で来た家族連れも車が動かなくなったので、車は置き去りで徒歩で出て行った人らも居たそうだ。
とにかく外から来た人が「化け物に襲われた!」と飛び込んで来るので、数人で車を押して移動させて店舗を取り囲んだそうだ。
ぱっと見、子供は10人前後か。スキル持ちはそのお母さんだろうか。
「ええと、水は出た。何故かわからないが水道は使えたんだ。それと食糧も。オペレー……厨房に置いてある材料が毎日、その、なんて言ったらいいんだ?」
「毎朝、復活している?」
「そう、それ!」
それにしても50人か。外から見たらもっと居るように見えた。あ、せっかくマックに来たんだからトイレ借りよう。
そう思ったが、トイレは無かった。
転移してきたのは、カウンターを挟んだ厨房と客席だけだって。トイレとスタッフルームは来なかったそうだ。
空間が仕切られていると別空間扱いになるんだ。うちが仏間しか来なかったように。
大島氏はひと通り聞きたい事は聞き終わったのか、今度は俺たちの話をした。
この世界が恐ろしい魔物で溢れている事、しかし日本人は何とか生き残って街を作っている事、その街は地下にある事。
地下都市ニッポンの事。
皆から大歓声が沸いた。驚いて泣き出す子供が居た。普通に嬉し泣きを始める大人もいる。
抱き合ったり手を叩き合って喜んだり泣いたりしているのを大島氏は黙って見ていた。
ある程度落ち着きが戻った時にまた話し始める。




