5話 自衛隊からギルドへ
----(自衛官視点)----
あの日、突然、知らない世界へと連れてこられた。何が起こったのかは今でもわからないままだ。
だが、気がついたその世界ではのんびりしている間もないくらいに厳しい世界だった。
聳り立つ樹木の上から落ちてきた巨大な虫に襲われたかと思うと、足元の石の影から飛び出した見たこともない粘液状の生物、あれを生物と言うのか。形の崩れたクラゲのような物にも襲い掛かられた。
森の中を逃げ惑ううちに、襲われている民間人を助け、同じ自衛隊(別の地域の隊だが)と出会い、逃げ隠れしながら森を進む。
見つけても救えない場合が多かった。身を挺して救おうとしていた仲間達ごと失い、身を隠した自分を恥じつつ森を彷徨った。戦うよりも身を隠した方が危機から逃れられる事に気がつく。
静かに、少しずつ、危険から身をかわして、仲間と出会い、水場を見つけ、食べられそうな物を探して彷徨い続けた。
たまに地面に置かれた地球の産物を発見した。車だったり、何かの建物の一部だったり。
そこを寝床にして、仲間が増えていった。
厳しかった最初の数ヶ月が過ぎた。死ぬ者は死に、生き残った者も明日はどうなるかわからない日々。
拠点にしていたこの世界の何かの遺跡、まさかそれがこの世界に住む人達の地下都市に続いていたとは思いもしなかった。だが、ようやく俺たちに生き残れそうな未来が見えた。
乗っていた宇宙船が墜落した未知の惑星で、その星に住む人々に迎え入れられた。そんな感じだ。
勿論俺たちは宇宙船なんてものには乗っていなかったし、宇宙に居たわけでもなく、墜落をしたわけでもない。
来ようと思ってこの星に来たわけでもない。彼らからしたら宇宙人は俺たちか。とにかくこの星にいた地底人は、地球人である俺らととても似ていた。それも良かった。タコ型や爬虫類型だったらどこまで仲良くなれたかわからないからな。
この星は、趣味がオタク系の隊員の話によると、ファンタジー小説に出てくる世界にかなり似ているらしい。
それは、魔法と冒険の世界、らしい。つまり、この世界で暮らす俺たちも、魔法を覚えて冒険をしないとならないそうだ。
冒険はもう十分なほどしてきた。出来ればこれからは平穏な日々を送りたい。
この世界に来たのが自分ひとりなら、または数人の仲間だけならそれもありだった。この世界の人に紛れて市井の者として生活をする。しかし、俺たちは自衛隊員で、大勢の被災者である国民を連れていたのだ。
そう、今年に入り年号の改正が行われた。
俺たちの地球、日本の年号であった令和8年が『異世界元年』に。
実際この世界にきた令和8年から3年半が経っているので、今は異世界四年になる。
もしもあのまま地球に居たら、今は令和11年だったのか。地球は、日本はどうなったのか。あの混乱の後に平静を取り戻せたのか。俺たちを探してくれているのか。今は知りようがない。
年号の改正と共に自衛隊も解散となった。今まで『自衛隊』として国民を守り戦ってきたが、俺たちは一国民になった。
自衛隊は解散されて新たに『ニッポンギルド』が発足した。
最初は自衛隊が改名されると聞いた。
俺はてっきり『地球防衛軍』とか『日本防衛隊』とかになるのかと思っていた。
その……、子供の頃に見たテレビに出てくるアレっぽいやつを想像していた。
だが、発表されたのは『ニッポンギルド』、この地下都市が『ニッポン』だから、そこにある『ギルド』って事だ。
そもそもギルドとは組合とか自治団体の事らしい。
アニメやファンタジー好きの友人から聞いた話だと、魔法のある世界にギルドがあるのは普通らしい。
そうなのか。俺は魔法系のアニメや漫画はほとんど見たことがなかったからな。
「うーん、わかりやすく言うと、職安に近いかなぁ」
友人の説明にますます混乱した。
自衛隊が無くなり新しく出来たのが、職安のような組合?
「すまん、もう少しわかりやすくしてくれ」
「そうだな。例えば、ギルドは魔物を倒して欲しい依頼と、その依頼を受けたいやつが来る。受けると報酬が貰える。斡旋とかマッチングみたいなものか? 魔物退治に関わらず、スキル石が欲しい、スキル石を売りたいってのをギルドを通して行うと便利だろ」
「メルカ◯みたいなもんか?」
「あー、違うけど、まぁ、やってる事は一緒か」
「つまり自衛隊はこれから職安+メルカ◯みたいな、そう言う仕事をするのか」
「あ、でも、俺ら全員一度解散して、新規に募集をかけるらしいぞ」
メルカ◯やハロワだったらもう隊員に戻らずに一般人として生きていくのもありか。
だが、いざ募集が開始されたのはニッポンギルドの部門別だった。
事務部門:事務のエリート
防衛部門:戦闘に長けている
製造部門:あらゆる物を製造
産業部門:農林水産のみならず、金融、医療、福祉も束ねる
元隊員の多くは『防衛部門』へ応募していた。もちろん俺と友人もだ。
隊員は全員が応募をしていた。が、面接の段階で別部門へ飛ばされる者もいたようだ。
ギルド長は絹田3佐……3佐という名称はもう使わないそうだ。ギルドマスターは絹田さんだ。
寄せ集まりの自衛官だった俺たちは新しい組織の部門の中でも幾つものチームに分かれて新しいスタートをきった。
友人とはチームが別れた。友人はテイムを目指すチームに配属された。俺は他都市の情報収集チームとしてデスエで冒険者活動をする事になった。




