44話 ボス
----(大島視点)----
「問題があります」
ママさん達は迷宮へウリ坊をゲットしに行く事に気持ちが固まったようだったが、実はそれには大きな問題がある。
「肝心のウリ坊が見つかりません」
そう、俺ら迷宮探索チームは迷宮に潜るたびにウリ坊を探していた。
仏間を引く清みんを見て、ギルドは『ウリ坊』の有用性に気がついていた。
と言うのも、迷宮産の魔物は地上では弱い。魔虫に齧られただけで逃げ回るのだ。そのため制御も難しい。
ところが何故か清みんのところのウリ坊は迷宮産にも関わらず、魔虫を怖がらない。それどころか、魔獣が出ても果敢に向かっていく。
清みんは、『迷宮産魔獣は地上の魔物より弱い』と知らないのだろうか。ウリ坊が放し飼いにされて近くの森に居るのをギルド員が目撃している。
野良ではない。清みんのウリ坊だ。首に可愛いリボンを巻いていたと。
「ふ、ふるふるさん、うりゆ君達にあまり遠くに行かないように言ってきてもらえる?」
今の話でようやく理解したのか、清みんは慌てて地上のウリ坊への伝言をスライムに頼んでいた。
まぁ、今日まで無事に生き残っていたのだ、大丈夫だとは思う。
それよりも問題なのは、清みんのウリ坊だけが何故強いのか。とそれを詰めるより先にママさん達が騒ぎ出す。
「何で見つからないのかしら」
「清見君、うりゆ君達って本当に迷宮で拾ってきたの?」
「え、あ、はい。迷宮です。居たよね? 大島氏もその場に居たよね?」
「居た。実際に拾った瞬間は見ていない。けど、迷宮内なのは確かだ」
この世界に来た最初の頃だよな。迷宮内に地上から入った時だ。いや、入ろうとしたわけではない。地上で見つけた窪み、迷宮か確認して螺旋階段を見つけた。一階層降りた直後、階段が消えたんだ。
それで仕方がなく進んだところ、魔物溜まりのような場所に出てすったもんだしている間に清みんがウリ坊を拾ったんだ。
思い出しながらあの時の状況を清みんとふたりでママさん達に説明をした。
「その後は、いつ行っても猪一頭なんですよ、ウリ坊でなく成長した猪です」
「あそこ絶対にボス部屋だよな。猪も大きいから、あそこでテイムしても地上までは持っていけないよ」
「滅多に人が訪れない迷宮だったのね。それまでの何十年とかで溜まったのかしら」
「だとしたら、もうしばらくは沢山湧いたりしないわねぇ」
「色んな種類の魔物が居たよね、あの時」
「そうだな。あれは不思議だ。普段入っている迷宮は階層で種類が分かれていたり、混合でも数種だけだ。とは言え迷宮チームはあまり上までは行ってなかったからな」
「あ、じゃあさ、未踏破の迷宮を地下からじゃなくて、上から降りて行ってみたら?」
「それもギルドでやったそうだ。全ての迷宮ではないが、この辺りはやったらしい」
「それでも居なかったの? ウリ坊が居なかっただけ? それとも溜まってなかったの?」
「両方ですね。大した溜まりではなかったのと、ウリ坊も居なかったそうだ」
「そうなの。難しいわねぇ」
「うーん、タイミングとか、かな」
清みんがボソリと呟いた。
「タイミング?」
「うん。だってさ、うりゆ君達って俺が寝てる間に大きくなったじゃん?」
ああ、清みんが寝込んでいる間に巨大化したんだった。
「だから、その瞬間を逃すと大人サイズになっちゃうんじゃない?」
「つまり、今、ボス部屋に居る猪魔獣も、生後3日間ならウリ坊だと?」
「知らないけど。ボスでも子供時代はあるでしょ? 大人で生まれてくるわけないし。…………あれ? ダンジョンだと大人サイズで生まれるのもあるのか?」
「たった3日で見つけるって難しくなぁい?」
「ボス部屋前で待機する?」
「いや、ボス部屋の魔物は倒した後、一定期間後には成獣でリポップしたはず」
「大島氏ぃ、それ、ゲーム脳の考えだよ。成獣でリポップとか、見た人いるの?」
「一定期間ってもしかして3日じゃない?」
いやいやいや、待て。今ここで、加瀬家井戸端会議で迷宮の謎が解かれようとしていないか?
「あのボス部屋さぁ、大中小の猪が結構な数居たよ。ボスになるための戦いって思っていたけど、実は違ったのかな。あ、でも小でも猪だった。地球サイズの猪。ウリ坊は居なかった。俺、うちの子は部屋の外というか通路の壁際で見つけた」
「今はその部屋にボスが一頭って、巨大な猪が天井から捻り出されてくるとかなの? 大島君」
「いや、その、ボス部屋は入れないんだ。入口の壁が剥がれ落ちるとそこにはもう巨大な奴がいる、らしい」
「じゃ、中に産まれたての可愛いのが居るのかも」
「迷宮の壁って壊せないの? 大島氏の防御でボコっとかいけそうじゃん」
「でも出産中だったら申し訳なくない? ちょっと失礼よ」
「そうね、せめて出産が済んでからお邪魔させてもらわないと」
ちょっと、俺ひとりの思考ではもう無理だ。
「すみません。ギルドへ持ち帰ります。皆さんがテイムに行く時はご一緒させていただきますので」
俺は頭を下げてから、ギルド本部へ急足で向かった。
あ、俺、休暇だったはずなのに。
何となく、俺の休暇が終わる気がした。




