39話 小型魔獣
----(大島視点)----
結局午後はテイムならず、その日は3体で終わった。本部へは久瀬さんだけが行くのかと思ったが、俺らチーム全員と山崎さんやテイム課の人達も大勢の参加での話し合いが行われた。
小型魔獣が欲しいのは空間スキルの経験値の底上げのため。
では実際に経験値がマックスになりテイムに力を入れるとして、それはなんのためか。
「空間スキル保持者にテイムを推奨するのは、この先有事の祭に空間を移動させられる魔獣を所持してもらいたいからです」
「すると移動専用の大型魔獣、という事でしょうか」
「そうですね。戦えればそれにこした事がないが、両方を望むのは今はやめましょう。移動は移動、戦闘は戦闘でそれぞれ特化した魔獣をテイムしていただいた方がいい」
「遠回りのようでそれが速いですな」
「ギルドの気力スキル持ちは、戦闘特化及び、本人の移動用の騎乗魔獣のテイムをされていますが、一般の空間スキル所持者はそれとは異なって考えた方がいいでしょう」
「問題は近場に手頃な森が無い、という事です」
「現在、この街の空間スキル持ちはそこまで人数も多くない。一個団体でのテイム遠征を計画しますか」
「そのためにも、全員が経験値マックスになっていただき、15日以内の遠征を組みたい」
「なるほど、全員が各自の空間を持っての移動は時間がかかりますからな」
「と言うわけで、テイム課にはこのまま小型魔獣の収集を早急に進めていただきたい。移動空間持ち、バス、車などの車両もちは出来るだけ毎日この近辺を走らせてひたすら経験値のアップを、それから久瀬班は迷宮探索をしばらくは中断して、地上の森探索をお願いします」
俺たちは森探索か。
「あの……」
どこの班かわからないが、挙手する者が居た。
「田嶋君」
「あの、スライムはどうなんでしょう。ふれあいカフェにスライム。大きさも手頃で強さはピカイチ、そして子供にも人気。ふれあいカフェはもふもふオンリーですか?」
「いや、モフモフに限ってはいない。なるほどスライムか」
「それがスライムは小型魔獣より探すのに困難しています。スライムは森よりも平地で見つかったのですが、ここ1〜2年、全く見つかっておりません」
「大島君、スライムのテイムはほぼ君が同行して行っていたと聞いた。どうだね?」
「あぁ。この世界に飛ばされた初期地が荒地で、樹木が無い場所でしたね。初年度に石や岩の土地を探索してテイムされた皆さんがいますが、見つけるのは苦労しました」
「当時のメンバーに聞いた事があります。餌を撒いても出てこない事が多いと」
「何でなのか。あの初日は襲われまくったんですけどね。腹がいっぱいになったのか。ただ、まぁ、戦力としてのテイムなら荒地検索をおすすめします」
「そうか。今回は一般人のテイムだ。スライムは運が良ければ、でいいだろう」
----(清見視点)----
「ってわけでさぁ、テイム作戦が暗礁に乗り上げてるんだよ」
久しぶりの大島氏がうちの部屋(地下10階の自宅)へと来て寛いで居た。いや、大島っちの部屋って隣じゃん。自分の部屋で寛げよと思わない事もない。
最近は個々に大忙しだ。俺はいつも大忙しだ。修繕する物が大量に仏間の押入れ前に積まれる。
こないだ、珍しく休みをくれたと思ったら、結局その翌日の仕事が山積みになるだけだった。
スキルを手放した風呂ママ改めリコちゃんママは、最近はコタ君ママの機体を手伝っているそうだ。ママさん仲間で経験値がマックスでないのはキチママさんとコタ君ママさんのふたりだ。
キチママさんのダイニングキッチンは現在地上勤務のギルド員で混み合っている。
仏間横にあったキッチンは機体に横付けされて、機体を利用したふれあいカフェのキッチンとして使用するらしい。
そこにあれば、キチママさんがわざわざキッチンに足を運ばなくても経験値が入る。トイレの郁未君ママさんも一緒に行動している。
大島氏は機体に作るふれあいカフェのための小型魔獣集めに、地上の森を攻めていると思っていた。
「虫は居るんだけどねぇ。触れ合いたいと思えるジャストサイズのが居ないのよ」
大島氏がうちの居間で寝返りを打ちながら愚痴る。
「そっかぁ。地上って若い森かデカイ森のどっちかばかりだもんな。俺たちがゴリゴリ開拓しちゃったからなぁ。小さいのどこに行ったんだろうな」
「デカイのに食われたか、虫に食われたかか、俺たちが食ったか」
「えぇー。俺たち虫は食う……食わされるけど、獣はあんま食わないよね? あ、でも、デスエから来る肉って魔獣なの?」
「ああ、うん。デスエからのは魔獣だけど、あれは迷宮産。デスエ人は地上に出ないから」
「あ、そうか。そうだよね。そうだよ。小型の魔獣は他のにやられたのかぁ」
「もうさ、モフモフカフェじゃなくてさ、昆虫カフェでよくない?」
「よくないです!!!」
よくない!絶対よくない! 良くない通り越して悪い!
昆虫を見ながらカフェでスイーツとか食いたくない。無理無理無理無理。
いつもなら援護射撃してくれるママさん達も、最近は一日中地上で忙しそうだ。
俺はいつも通り午前中の仕事を終えて、今日は園児達の散歩も無いので早々に地下へと戻ってきたのだ。そこでひとりまったりと転がっていたところに大島氏が参加して転がり始めたのだ。
俺は身体をガバリと起こして無い知恵を振り絞り出す。出てこい出てこい、小さい魔物小さい魔物。
「あ、迷宮でいいじゃん。何で地上で探すのさ」
「ああ、迷宮のは弱いからダメなんだって」
「えっ、でも、カフェ用の可愛いやつでしょ? 迷宮にボロボロいそうじゃん。や、俺迷宮探索しないからその辺は大島っちのがよく知ってるっしょ」
「ギルドは、弱いとすぐ死ぬから森産にしたいらしい」
「そんなにすぐ死ぬ? 育て方が悪いんじゃない? 腕ウータンまだ生きてるよね? 看護師長さんとこのだっけ? あれ迷宮産だよね?」
「園長先生のとこのだな。まぁね」
「カフェで可愛さを売りにしたいなら、強くなくていいんでしょ?」
「空間マックス後は、有事の際に守ってもらえる程度の強さは欲しいらしいぞ?」
「だからさ、カフェの魔獣ってママさん達がテイムするの?」
「いや、そこはギルドのテイマー」
「ママさん達が大暴れしないといけない有事って、どんな有事か知らないけどさ、そこまで要求するもの? 強さと可愛さを兼ねた魔物って、あっ!ポヨン君達は確かにそうだけどね」
「うん、スライムはさ、見つけるのが大変みたいだな」
「うりゆ君達も可愛いけど流石に大きすぎて機体には入らないねぇ。最初はめちゃ小さかったのにね」
大島氏がガバリと体を起こした。




