37話 テイム開始
----(大島視点)----
空間スキル所持者の経験値の底上げは即日開始された。そのための小型魔獣のテイムに駆り出された。
それは気力スキル持ちのギルド員によるテイムだ。
機体や保育園で必要となる小型魔獣を、まずはギルド員がテイムしてくる。
小型の魔獣は比較的捕まえやすい。というのも、それほど太い木でなくとも割とそこらじゅうに居るからだ。ただ、弱い。小型の魔獣は魔虫とほぼ同格の強さだ。とは言え人間よりは強い。
エサ役の隊員が大騒ぎをすると直ぐに集まる。俺のボックス内からテイマー隊員がテイムを行う。
唯一大変だったのは、魔獣の種類だ。
「お触りカフェで使いますから色んな種類をゲットしてきてくださいね」
おまっ、ふれあいカフェだろ!
「そこそこ小さくて思わず触りたくなる、そういうのを最低でも15〜20種類、お願いします」
一応テイムチームの班長に向かって言ったようだが、その班長が俺を縋るように見つめた。
知らんがな。
虫系なら10や20くらいあっという間に集められるが、小型の魔獣はどうだろうか。しかも、そこに『可愛い』や『触りたい』が付く風貌か……。
俺らのチームは普段は迷宮探索がメインであるのだが、今回は地上の森を進行している。
と言うのもそれには理由がある。
この世界の魔物(魔虫、魔獣も含む)は、地上と地下で強さがかなり違うのだ。
もちろん、迷宮の奥深く、地下深くまで潜ったわけではない。たまたま弱い階層あたりを人間が探っているだけとも思う。
過去に、迷宮内でテイム班がテイムした魔物を地上に連れ出して全滅した事があるそうだ。
地下の魔獣は、あっという間に大きめの魔虫に喰われたと。
サイズ的にはトントンだったらしい。地下と地上、何が違うのかいまだに不明だ。
このへんはデスエにも情報が全くない。彼らはずっと地下から出ない種族だったからな。地上の魔物は伝説で語られるくらいだそうだ。
強さより器用さを求めて猿系の魔獣はよく迷宮でテイムをしているそうだ。
地上の魔獣は、そもそも木のかなり上に居る事が多い。見つけてソレを降ろす前にそこらじゅうの虫系が寄ってくる。小さいと思っても降りて来たらそこそこデカイ事も多い。前途多難だ。
もう、いっその事、昆虫カフェにしてくれないかと思う。
虫ならそこらじゅうに居る。ほら、幹に巻きついている三色ムカデ、アイツは頭部が綺麗なグリーンだ。
それからその直ぐ上に異常にぶっとい胴体の蝶……蛾かな、触覚が縦ロールで可愛いと思うぞ?きっと虫界のお嬢様に違いない。
根っこ付近には亀サイズのてんとう虫の集合体。キモっ。まぁ、1匹ならね。七つの赤い斑点のそれぞれの中に目がある。模様ではなく本物の目、瞬きしている。
カフェの客が入るかはわからんが、昆虫好きには垂涎のカフェになるぞ?
「なかなかに難しいですね。上を向きすぎて首が痛いっす」
「そうだな。上探索と、周り探索者交代するぞ。大島はこのままゆっくり進んでくれ」
「はい」
乱暴に進むとその音で地面に居る虫系が寄ってくる。森って本当に怖いな。
「班長! ソレっぽいのを発見。落としてみますか?」
上を探っていた大乃木が指差した方向に全員が目を向けた。
「ケモノか? 虫じゃないか?」
「モサり感があるんだ。光の加減かもしれん」
「さっき、もふもふ系と思って落としてみたら、フサフサの毛虫系だったよな」
「アレは無理だ。モフモフに見える」
「とりあえず落とす。魔獣の場合は山崎さん、直ぐにテイムしてくれ。大島、山崎さんがテイムしやすいように近づいてくれ。皆はソレ以外の除去を」
班長の久瀬さんは気力スキル持ちでスライム持ちでもある。スライムに命令をしたようで、彼のスライムが幹をスルスルと上がっていった。
程なくしてカビの生えたサッカーボールが落ちてきた。一瞬、スライムが落下したのかと思った。同じサイズだ。横にスライムが飛んで降りてこなければ、班長のスライムが汚れたのかと思った。
桂と七海倉が周りにどさどさと落ちて来た虫を鈍器で潰して回る。ふたりひと組で、餅つきのように交互に叩いている。
俺たちは学んだのだ。地面に居る敵は斬るより潰せ。
そう、剣や刀は立っている相手にこそ有効である。と言うか、よほどの技術がなければ、物体だけを地面ギリギリに斬るなど無理なのだ。特に森の中、土、岩、木の根など邪魔な物が数ある中、ソレだけでトドメを刺すなど、どんな剣豪だ。
そう、俺たちは学んだ。潰そう。それが早い。
桂さん達が魔虫を潰している間に、山崎さんはテイムを完了した。
「なんだ、これ? 虫か?獣か?」
「ケセランパサラン?」
「マリモじゃないか? 乾いたマリモ」
カビの生えたサッカーボールに見えたそれは、山崎さんがテイムをすると、カビがもっとフサフサに伸びた……ような?物体だった。毛の部分を入れてサッカーボール大なので、中心は小さいのかもしれない。
そして、謎の細い手足が伸びていた。
「これ、カフェ採用可能ですかね?」
「どうだろうな?」




