34話 要るスキル
----(清見視点)----
今まで謎のまま放置気味であった空間スキルだが、ギルドは今回前向きに色々考えているようだった。
今まではスキルを消滅させないために、何となく定期的にその空間を訪れる事のみを持ち主にさせていた。
元から個人的な空間であったのもギルドがあまり手を出さない理由ではあったが、経験値100がマックスである事、マックスでも21日目にはスキル消滅の危険がある事などから、少し踏み込む事にしたようだ。
そこで、まだ100でない者の空間スキルをマックスにする事、そしてマックスを目指さない者でスキルを不要と思う者には検証の手伝いを願い出ていた。
ギルド員の話は続く。
「二点目はテイムに関してです。魔獣、魔物のテイム。これはテイムと言うスキルが無いにも関わらず、空間スキル持ちの方はテイムの成功率が高い。100%に近いくらいです。そこで、内田さん、三原さん、羽田さんにまずお聞きします」
3人の女性は少し緊張したように立ち上がった。
「もしも空間スキルを手放した場合、テイムが難しくなると思いますがそこはどうお考えですか?」
「えっ? あ、別に。その、魔物をテイム?とかしたいと思っていません。犬や猫ならともかく魔物は飼えないわ」
「私もです。今、子供との生活で手一杯です」
「私も。動物を飼える状態じゃないですし……、その、もし飼ったら戦いに行かないといけないって聞きました」
えええええっ!そうなのか? 俺、戦いに行かないといけなかったんだ。
うっかりいっぱい飼っちゃたよ。やばい。
小説で読む分には『冒険者』に憧れるけど、いざ現実で冒険者になりたいかって聞かれると、なりたくない。
毎日戦いに明け暮れるとか無理。ダンジョンだって行きたくない。
アニメや漫画では『俺TUEEEEE!』みたいな格好いい主人公の活躍が描かれているけど、実際の戦いなんて全く違う。
引きこもりニートの俺が異世界で感じた大きな違和感はソレ。
戦うってもっと汚れて臭くて痛くて辛い。
ファンタジーのような魔法で一瞬で汚れを落とせたり、回復したり、家を建てたり、アイテムボックスから便利な物が出てきたり、そんな世界に転移したなら別だけど、少なくともこの世界は違った。
魔虫と戦い倒した時、魔虫の返り血……魔虫汁を浴びた服の臭さといったら、もう、ね。
いや、俺は倒せないけど、過去に森の中で自衛隊が魔虫汁まみれになった時とか、本当に鼻が曲がりそうだった。守ってもらっておいて言ってはいけないセリフだけど、口に出さない本音。
それに自衛隊だって本当に毎回の命懸け。冒険者や探索者って厳しい仕事だよな。
そっか、テイムしたらそれに参加しないといけないのか…………。
あちこちでコソコソ声が聞こえた。俺含め、戦いが怖い人達の声が漏れていた。
「そうですか。いえ、戦いを強制するわけではありませんが、テイムした魔物は自分たちを守ってくれる関係上、どうしても前線に立つ事が多くなるかもしれません」
「うん、なおさら無理、空間スキルも魔物のテイムもいりません。私、普通の一般人でいたいです」
「私もです」
3人が手を取り合って懇願するようにギルド員を見ていた。ところで今話しているギルドの人って偉い人なのか? ドドクサの話だとギルドに沢山の課があると聞いた。今日の会議はどこ主体なんだ?
俺、ギルドで偉い人って絹田さんしか知らない。今日はこの会議に来ていないな。そう言えば大島氏も居ない。
まぁ、今日は空間スキル関係の会議みたいだからな。
「わかりました。今度は他の皆さん、今後も空間スキルを持っていかれる皆さんにお聞きします。テイムをしてみたいと思う方はおられますか? 病院、保育園、キッチン、仏間、ミニバン、トイレ、バスルームなど、すでにテイムされている方もいらっしゃいます。ギルドでは、まだテイムをされていない方のテイムを率先しておこなう予定であります」
すると数名の手があがった。
ここで、いくつかのグループに分かれてもっと詳しい話がされるという。突然の会議の解散……。
俺は何グループなんだ?
「清見、お疲れ様。一旦自宅に戻ろうか」
俺、帰っていいグループ?
仏間はもちろんこのまま保持だし、すでにポヨン君たちを持っている俺はどうやらお役御免のようだ。
というか、何で呼ばれた? この会議、俺居なくてよくない?
自宅に戻り俺はその疑問を兄貴にぶつけた。
「うん、あー、そうだな。実はテイムの件で昨夜の話をするつもりだったようなんだ。だから清見も出席するように言われてたんだが」
昨夜の件? スキル消滅の検証の件か? それは話したんだよな? それとテイムに何の関係が?
「フンガー話の前に、分けて個別でって事に急遽決まったみたいだな。テイムしない人がフンガーを聞いてもな」
兄貴さっきから何を言ってるんだ? 憤慨憤慨と、何か怒ってるのか?
「まぁ、清見やママさん達は今までと変わらないだろう。あ、愛菜ちゃんママと光太郎ママと園長先生は、100を目指す方向で今個別に面接しているはずだ」
キッチンも機体も無くなったら困るからな。早めに100にしておくべきだ。
「あ、そういえばスキル要らないって言ってた人達、どうするんだ?」
「ああ、ギルドで早急に検証をするらしい」
「ふぅん……」
それから、後にドドクサに聞いた情報だ。
そもそもバスも電車の車両も地上に置いたまま、週一回、地下10階から地上へ行きタッチしてすぐにまた地下に戻るをしていたそうだ。
それは、かなり面倒だな。あの超絶長い螺旋階段を一瞬タッチするための週一回登り降り。
何か物資があるならともかく、本当にただの避難空間にすぎなかったわけだ。避難所が地下に出来たらもう用済みだな。
「特に内田さんがね、彼女、すっごく痩せた人で足にその、骨の障がいがあって階段が苦痛だったんだってさ」
それは大変だ。健康だったり体育会系にはわからない辛さだよな。と、俺はただのヒョロなので俺が解った風なことを言うのは烏滸がましいが、あの頃は自衛隊に担がれつついつも思ってた。
自分で登れるなら……、いや、頑張って1日かけて登って足腰がガクガクになってもまた翌日頑張らないとならない、エンドレスの虚しさ。人にうまく伝わらない。言っても『もっと頑張れ』『もっと鍛えろ』って言われるんだ。
兄貴は俺のヘタレを知っているから言わないでくれた。でも周りの目は厳しかった。
俺は『出来ない人』は無理をしなくていいと思う。自分がしたくてする無理ならいい。けれど、周りの知らない奴のための無理は絶対にしなくていいと思う。
だから今回、内田さんとか誰さんとかが空間スキルを要らないなら消滅させていいと思う。
だってそれ、個人のスキルじゃん。その空間で守ってあげてただけでもありがたがって然るべきなんだ。
お疲れ様と言ってあげたいけど、知らない人だし、俺コミュ障だからな。心のなかで言う、お疲れ様でした。
その後、またしてもドドクサ情報だが、彼女らは無事(?)スキル消滅を終えたらしい。
「で、何日目だったんだ?」
「3人とも、11日目だったそうです」
「って事は、初期で10日の猶予があるのはほぼ確定だな」
「そうですね。まぁ、この都市の空間スキル持ちにはもう初期経験値のやつはいないですけどね」
「消える時間も一緒? 深夜0時?」
「はい。23:50からステータスのスキルが点滅し始めたって」
「その10分前カウントダウンさぁ、一見親切っぽいけど、点滅が始まって10分以内に戻れる場所に居ればいいけどな。遠かったらアウトじゃん」
「ですねぇ。まぁ、消滅の心の準備?が出来るみたいな?」
「えー、心の準備を10分もしないといけないのって長すぎません?」
「だよなー。だったら、急に消えててくれた方がある意味親切」
「空間から離れないってのが1番確実ですね。だってシショー、地下の自宅で点滅を確認しても10分で螺旋階段を上まで上がってこれないでしょう?」
「上がれるわないだろ。そんときゃすっぱり消滅してもらう。てかさー、これ、譲渡できないの? もう面倒過ぎる」
しまった!本音が口から漏れ出てしまった。




