32話 テイムと空間スキル
----(清見視点)----
とうとう名指しされたので、しかたなく何か言う事にした。もう夜中の3時を過ぎてるしそろそろ眠いんだよ。
さっさと何かを言ってこの場を解散してもらおう。
「ええと、そもそもテイムはステータスに表示がないじゃないですか。俺はテイムはスキルだと思っていないです」
「ふむ、それは以前にも伺った。とすると何だと?」
「俺はポヨン君やうりゆ達と仲良くしてます。テイムではなくて仲良くしているだけなんです。だからもしも空間スキルが消えてもポヨン君は俺と仲良くしてくれるはず」
「だけど、だとしたら仲良く出来るのがどうして空間スキル持ちだけなんですか?」
もう、この上司に噛み付く部下さん、とうとう俺に直接噛み付いてきたよ。まぁ噛み付くと言うか自分の意見をハッキリ言いたい人か。そして相手にもそれを求める。自分が納得する答えを貰いたいやつ。ちょっと苦手なタイプ。
面倒くさい、面倒くさい、俺は眠いんだよ。
「空間スキル持ちだけじゃないですよ。テイム、この場合とりあえずテイムとしますが、その行為を出来るのは空間スキル持ちだけではないです。気力スキルを持ってらっしゃる方も確かテイムが出来たはず。誰が何をテイムしたのか知りませんが居たはずです。それはギルドの方が詳しいでしょう?俺はただの仏間ぁ(butumer)だからその辺の情報はありません。なので完全に俺の想像によるところになりますが、それでも知りたいとおっしゃるのならお話ししますよ」
「え、あ……」
「知りたいです」
オタクの弾丸スピーチを思い知れ!
部下のほうは俺の早口に引いていたが絹田さんがすかさず返事をした。
「気力スキルは謎と言われていますが、俺は読んで文字のとおり、気力、フンガーと思っています。空間スキルの建物も謎の力で守られている。俺はそれも、フンガーの力だと思っています。この世界は地球には無かったフンガーに溢れている。フンガーが世界を征していると言っても多言ではない。さっき地球にフンガーは無かったと言いましたが、それはちょっと違う。少なくとも日本にはあった。現代の日本は地球の他の国と足並みを揃えてからフンガーは無くなったけど、日本語にはフンガーの跡が多く残っている」
「フンガーの跡……」
もう眠くて何を言ってるのかわからん。そろそろギルド退いてくれないかな。
俺のフンガー談議がまだ足りない?
「フンガー、気ですよ、気って文字。日本の日常の中に気が溢れかえってるじゃないですか。元気、気をつけて、気にする、気になる。気持ち、病気、空気、気体。気って何? そこら中に気って文字が出てくる日本語。当たり前に使ってますよね?謎っぽいけどある意味わかりやすくないですか?フンガーですよ、気はフンガー。いつの時代の日本かはわからないけど日本にはフンガーは溢れていたんです」
「フンガーについては理解出来ました。(いや、本当の理解は出来てないが、何となく言いたい事はわかった)、それとスキルがどう関係するのか」
「テイム、魔物と仲良くなるにはある程度のフンガーが必要、空間持ちはフンガー空間を所持していた事から普通の人よりダントツにフンガーを与えられていた。だから魔物と仲良くなりやすい。気力スキルは言い換えればフンガースキルでもある。気力スキル石を使う事でフンガー値の初期値の底上げ、かつ、その後の経験値貯めもラクになる。だから気力スキルも魔物と仲良くなれる。一般人が魔物と通じ合うためのフンガーを貯めるのは日常生活だけでは難しい。だから一般人はテイムが難しい。けど、難しいだけでフンガー値が高い一般人も魔物と仲良く出来る可能性はあると思う」
「それで? 私は? バスルームを失ったのに?」
「うん。個人に貯まったフンガー値は急に無くなったりしない。別に風呂場にいないとバスグリンと仲が悪くなるとかなかったでしょ? 貧乏になったからって友達やめないでしょ? やめるようなやつは本当の友達じゃない。バスグリンはリコママが好きでずっと一緒にいてくれてる、と思う」
もう、何でもいい。俺は寝るぞ。周りにどんなに沢山人がいようとも、俺は自分ちの押入れ(っぽい穴)に入った。
あとの質疑応答は明日にして。おやすみ。
「寝ちゃったわね」
「よっぽど眠かったのね。最近はずっと深夜起きが続いていたからね」
「私は逆に目が冴えちゃった。清見君がこんなに喋るの、初めてみたわ」
「ほんと、びっくりねぇ。何かが取り憑いたんじゃないかって思ったわぁ」
押入れの外から楽しそうな笑い声が聞こえたが、俺は夢の中へとダイブしていった。




