28話 スキル消滅の検証①
----(清見視点)----
久しぶりの同窓会で風呂ママさんはスキルを『消滅検証』の実験に差し出す事を決め、兄貴からギルドへ伝えれらた。
風呂ママさんが何度かギルドへ呼び出されて、色々と話し合ったそうだ。
「実験はいつ行うんだ?」
「2〜3日後には行うそうです」
修繕屋のバイトに来ていたドドからの情報だ。
ドドとクサはうちの修繕屋のバイトと並行してギルドのバイトにも入っているそうだ。
なのでリアルタイムで情報が流れてくる。…………それ、情報漏洩では?
「あ、ダイジョブっす。シショー限定で情報開示許可はもらってますから」
あ、そうなの。ギルドの体制がガバガバなのかと思ってた。
「で、実際にどんな検証するんだ?」
「結構地味ですよ」
ドドが語ってくれたのはこうだ。
まずは、現在水場近くに設置されていたバスルームだが、街の中心からかなり外れへと運び出すそうだ。
今の場所だと風呂ママさんが炊事場へ近づくと、いつまで経ってもスキルが消滅しないからだ。
「炊事場から遠く地上階段からも遠い、あまり人が近づかない場所へ持っていくみたいです」
ふむふむ。うっかり近づいたら実験は失敗だからな。
「とりあえず距離的には2000メートルほど離れた、かつ、居住区も何も無い場所だそうです」
そう言えば俺は自宅がある地下10階層を隅から隅まで見た事はなかった。
自宅とギルド本部と水場と風呂とトイレ、そして地上へ出る螺旋階段くらいだ。
「2000メートル……2キロか。10階層って結構広かったんだな」
「シショー、何言ってんすか。かなり広いですよ。居住区以外でもギルドの施設だ何だのと、謎の空間もあるし、俺ら一般人は立入禁止区域もあるし。今回バスルームが置かれたとこはまだ街寄りですよ」
「へぇー。で? 風呂を遠くにおいてどうするんだ?」
「璃子ママさんが、これから毎晩確認をするそうです。ほら、祝福タイムってあるじゃないっすか」
ああ。深夜の祝福タイム。空間スキルで毎晩24時(0時)を越えた瞬間に、物資が再生する。
俺らはそれを『祝福タイム』と呼んでいた。
「璃子ママさんが、自分の空間であったバスルームに近づかない状態で、何日目にスキルが消滅するのか確認をするみたいです」
「0時に? 毎日0時に? うわぁ、それ、キツイな。寝不足になりそう。朝起きてから確認でもいいんじゃないか?」
「そうなんすけど、ギルド員が現地バスルームで物資再生を確認するのと同時に、璃子ママさんのステータスも確認してもらうそうです」
まぁ、滅多に出来ない検証実験だからな。
ただ、それには落とし穴がある。
「スキルが消えなかったら? いつまで深夜0時確認を続けないとならないんだ?」
「スキルが消えない?」
「だって、もしもさ、経験値100の特典が、『今後一生スキルは消えない』とかってのもありえるじゃん?」
「確かにぃ。それはありそうっすね。ギルドでは距離ばかりが注目されてましたね」
「清見兄貴、流石にギルドもエンドレス実験は考えてはないですよ。4年前、経験値がまだ少なかった頃、1週間から10日ほどでスキルが消滅した人が何人か居たじゃないですか。だから今回の検証も、せいぜい2週間くらいじゃないですかね」
ところがである。クサが考えていたよりもギルドは厳しい考えであった。
今日で2週間経ったが、風呂ママさんのスキルは消えていないそうだ。
そして実験も続行中である。
いや、風呂ママさんとは低い壁を隔てた隣なもんだから、夜中の確認作業が漏れ聞こえてくる。
ギルド員が23:50に風呂ママさんを起こしにくるのだ。ちなみにリコちゃんの睡眠の妨げにならないように、リコちゃんは暫くはキチママさん宅にお泊りだ。と言っても、うちのトイレママ側の隣だ。
検証をいつまで続けるのか兄貴を通してギルドへ聞いて貰った。事と次第によってはうちの裕理君も、他の場所に避難させたい。
眠りが浅く、風呂ママさんちの音で俺が目覚めてゴソゴソする事で、裕理と兄貴も目覚めてしまっている。ごめんと言うか何と言うか、俺のせい?
検証はあと半月、30日間を考えているそうだ。それでスキルが消滅しない場合は、夜中の確認は中止にするそうだ。
あ、風呂場のギルド員による物資の確認は続けるそうだ。
「あと、2週間か。しばらく上の仏間で寝起きするか?」
兄貴に聞かれたが、俺は風呂ママさんのステータスが気になってしまって、このまま自宅に居たいと思った。兄貴と裕理だけ、暫く別の場所へ避難してもらった。
15日目。ステータスにスキルあり。
16日目。ステータスにスキルあり。
17日目。ステータスにスキルあり。
・・・
20日目。ステータスにスキルあり。
これはもう、経験値が100になるとスキルは固定される、が確実になってきたな。
ってことは、俺の仏間も経験値は100。
仏間から何日離れようが、どれだけ遠くに離れようが空間スキルの消滅の危険は無いって事か。
そう思った直後の事。
21日目。
スキル消滅。
風呂ママさんは最近は23:30には起きてスタンばっていた。そして、いつものように23:50にギルド員から声をかけられてステータスを確認した。
いつもなら、
「あと10分か。まだかな、あと7分、まだか。あと4分……あと1分」
「ジャストです」
「スキルありまーす、おやすみなさい」
「ご苦労様でした。おやすみなさい」
と言う会話が続く、が、その日は。
「あと10分ね…………!!! ちょ、ちょっと! スキルあるけど点滅してまあす!」
風呂ママさんの絶叫が近所に響き渡った。
びっくりして慌てて自分のスキル確認してしまった。俺のスキルは普通だった。特に点滅はしていない。
ギルド員のみならず、近所のママさん達も飛び起きた。
「皆さん確認してみて! 点滅してるかどうか」
「してないわ、いつもどおり」
「私もよ。普通に表示されてる」
ギルド員のひとりが本部へ走った。
「ステータスから目を離さないでください」
風呂ママさんに言ったのだろうが、その場にいた全員が自分のステータスを開いて見ていた。




