24話 祝福の距離①
----(清見視点)----
「ところで、皆さんのスキルについて何ですが……」
兄貴が話を逸らしてくれた。
「スキル?」
「ええ。空間スキルが100でストップしているのが清見と看護師長さんと郁未君ママと璃子ちゃんママの4人ですよね」
「仏間と病院、トイレ風呂か」
「どれも毎日頻繁に出入りがあるので経験値が貯まるのが早かったんですね」
「うちのキッチンは78」
「保育園は52ですね」
「機体は49……もう少しでやっと50」
「でも、これ、100になっても何も貰えないのよね?」
「そうなの。特に超豪華なトイレになったりしなかったわぁ」
「まぁ、空間スキルはソレ自体で十分なチートだからそれ以上望むのは贅沢ですよ」
確かにそうなんだろうけど、俺は、気になっている。
「でもさ、空間ソレ自体で完結しているなら、経験値があるのがおかしくないか? 数字が表示される以上、何かはあるはず」
そうだ、俺がずっと心に引っかかっていたにはそれなのだ。何もくれないなら経験値の表示は無くてもよくないか?
回復はランクアップするたびに修復が速くなったりした。空間はランクが無いので最初から変わらずなんだ。
「言われてみるとそうっすね」
「空間スキルの現在のチートは、空間の安全、物資の再生。それ以外で何かあります?」
「うん。見た目は特に変わらない。仏間が豪華になったり仏壇がバージョンアップしたりもない。となると、目に見えないレベルアポがあったのかも」
「例えば?」
「例えば、空間スキルの弱点の緩和」
「弱点?」
「そう、空間スキルの弱点と言えば、離れるとスキルが消滅する」
「なるほど……」
「それは? 経験値が100で消滅しなくなるって事?」
「それ凄くない? 気にせず離れられるって事?」
「あ、それ、ギルドが検証するっ言っていたが、万が一消えてもいい空間が少ないのと、それの経験値が貯まりにくいのとで直ぐには結果が出せないって聞いたぞ?」
そうなんだよなー。検証が難しいのが難点なんだよ。でも……。
「検証出来る部分もある」
思わず口に出ちゃったら皆の注目を集めてしまった。
「あ、その、えとな」
「うんうん、清見くん。ちゃんと聞いてるからゆっくりでいいよ。私達にもわかるようにお願い」
「ええと、あ、その前に。経験値が100になったらスキルが消えない、とは、俺……の考えはちょっと違う、んだけど」
俺がそこで口にたまった唾を飲んで息を整えた。いや、皆の目が怖い。瞬きをして欲しい。
「俺達の空間スキルには、最初から微とか中が無かったじゃないか。数字のみ。しかも、10で繰り上げではなく通しで100。俺、10を超えた後からちょっと気になって、距離を測ってみた」
「距離?」
「距離って何の距離を?」
「仏間の押入れから出した物資の再生。ギルド……あ、あの頃はまだ自衛隊だったけど、自衛隊に許可を貰って、防災のミネラルウォーターをひと箱貰ったんだ。ほら、水はどこの空間でも入手が楽だったから仏間の2リットル6本入りの。もし失敗して無くなっても大丈夫かなーってさ」
この世界に来た最初の頃に再生について調べた事があった。『ミネラルウォーターのペットボトルを押入れから出すと次の日に再生する』そう思われていたが、正しくはそうではない。
A)開けていないペットボトルを押入れから出して仏間内においてあると、翌朝押入れでの再生はなかった。
B)少しでも口をつけて減った状態だと、押入れ内に新しく再生していた。
C)ペットボトルを仏間から離れた場所に置くと、押入れ内に新しく再生していた。
つまり、ABCとも、仏間内には『新品のボトルが6本』。
BCはボトル6本と、Bはプラス飲みかけ、Cは外にプラス1本増やせた。
ボトルを6本、外に出しておいたら、翌朝には押入れに6本、外に6本の合計12本になった。
そこで俺は、仏間からボトルを離して置いてみた。1m間隔で6本。
すると、翌朝、押入れのペットボトルは5本しか再生しなかった。
一本失った。
飲んだり食べたりで失っても毎朝再生していたのに、人間が使用したのではない状態で仏間から一定の距離を離すと再生しない?
いや、そもそも、プラス再生だったのだ。それを消費(飲む)でなく仏間から離したら再生しなかった。
以前に夜中の再生を『祝福』と表現していたが、ペットボトル1本の祝福を失ったという事だろうか。
仏間から5mの距離までは祝福がある。空間スキルの祝福には『距離』がある。仏間の周囲5m以内?
ペットボトルのケース内で5本になってしまったミネラルウォーター。
外で再生した一本をそこに突っ込んだ。明日、どうなるだろうか。
とりあえずひと晩、祝福を浴びせるためにそのままにした。
翌々日、外ではなく仏間内に6本置いた。どれも口をつけて飲みかけにした。次の日は5本再生のままか?それとも。
良かった。6本再生に戻った。
「お前、そんな実験してたのか、自衛隊に怒られるぞ」
「あ、うん。でもその後数日間はちゃんと6本に戻ったし、自衛隊はくれるって言ったから……」
「清見兄貴、凄いっすね」
「あ、でね、俺が今言いたいのは……」




