21話 仏間のレベル
----(清見視点)----
俺は少し前から悩んでいる。ずっと悩んでいるのだが、一向に解決しない。
悩みは『スキル』についてだ。
スキルはいまだに謎に包まれたままだ。なので俺がどんなに考えても謎は謎のまま、解けない。
でも、気になる。
気になるからついつい考えてしまう。食事中も箸を咥えたまま考えこんでいたようで、兄貴に気づかれた。
「どうした? 清見。何かあったか?」
「うーん、うん、いや、何も無いけど何も無いのが何かアレっつうか」
「いや、すまん。何を言っているのかわからん」
「ええと、何も無いのが、何も無くていいのか悩みっていうか」
「んん? 何も無くてよかった、のでは? 何も無いと何か困るのか?」
「何もないからって困りはしないけど、何も無いんだって思って」
「ちょっと!!! 兄弟の話に顔を突っ込んでごめんなさいねっ!だけど、隣から、もにゃもにゃもにゃもにゃ聞かされる身になって」
隣との壁越しに郁未君ママが顔をニョキっと出した。
「あ、すみません」
兄貴が勢いに押されて謝っていた。天井も天井までの壁も無い長屋は会話が筒抜けになるんだよね。
ふと視線に気がつき反対側の壁を見るとまなちゃんママも心配そうな顔でこちらを見ていた。
今は昼間で子供達は保育園だ。
今日は仏間の修繕屋は休みなので久しぶりに地下の自宅でゆっくりしていた。
兄貴と昼飯を食っている時に両隣ママさんが参戦してきた。参戦……ではなくて、ふたりともご飯を持ってうちに合流した。
各町会で炊事場の使用時間が決められているので、町会内では合同で料理をする。なので毎回メニューも一緒だ。外で集まって食べる人や、自宅でゆっくり食べる人などそれぞれらしい。
うちの花笠町会はかなり仲が良いらしくて、朝晩は合同で食べている。昼食はそれぞれだ。
最近配給で手に入れたちゃぶ台(元はうちの仏間にあった)に、持ち寄ったご飯とおかずをつつき合う。いつの間にかリコちゃんママとコタ君ママも居た。
「それで? 清見君は何を悩んでいるの?」
「さっきスキルがどうとか、無いと困るとか言ってたけど」
「うんうん。ゆっくり、少しずつ話してみて?」
ポリポリコリコリ……、あ、奈良漬。どこの土産だろう?これ好きだ。それを飲み込むまでママさん達は待ってくれる。
誰も俺をジッと見つめたり急かしたりしない。
俺は口の中の物をゴクリと飲み込んでから口を開いた。
「あの、俺のスキルの仏間なんだけど、ステータスには空間(仏間)ってあるじゃないですか」
「うんうん、そうね」
「仏間の後に経験値。この世界に来た頃は、小数点以下が6桁」
「そうねぇ。今は78.300987……もう面倒だから今は聞かれたら78って答えているわ」
キチママさんが自分のステータスボードを確認しているのか宙を見つめていた。
「そう、それ。それが謎」
「どれ?」
「何? どれが謎?」
「兄貴はスキルが物理攻撃で、経験値が(微)9.9999の次は、微10じゃなくて(弱)になっただろ?」
「ああ」
「弱10の次は、中10、そんで強10」
「いや、俺はまだ中なんだが……」
「何で空間スキルは10ずつじゃないんだ? ダイニングキッチンが78って10でランクアップが7回はあったって事だよな」
そうなのだ。空間スキルは他のスキルと違って10ごとのランク名称がない。
物理攻撃が(微)から(弱)(中)(強)へと変化するのと同じようには空間スキルは変化しないのだ。
俺の回復スキルも現在は(強)まできている。
回復は小数点以下6桁とは言え、かなりの頻度で使用していたので他の人に比べて経験値が貯まりやすかった。
そして同じように人が頻繁に使用する事で仏間の経験値もどんどんと貯まっていった。
実は、仏間の経験値が10になる寸前、俺はめちゃめちゃ期待した。
『仏間』が何に変化するのだろうかと。
『凄い仏間』とか、『イケてる仏間』とか『スーパー仏間』になるかもしれない。となるとどんな機能が付加されるのか。
物凄く楽しみにしていた。
しかし、だ。空間(仏間10.000000)……。え?
空間(仏間9.999999)の次は、空間(仏間なにがし0.000000)にならなくないか?
でも、仏間は仏間のまま、『仏間なにがし』にはならなかった。
あくまで、空間(仏間10.000000)だった。その後も仏間のまま変わらず、経験値は増え続けて、とうとう空間(仏間99.999999)へ。
さすがに、これは期待するだろう! するよね? だって99.999999だぞ?
しかし、次は空間(仏間100)だった。
ただの『仏間100』な上に、小数点以下も消えた。
しかもね、それ以降全くあがらない。
はい、上限来たぁ。
でも何も貰えない、何も起こらない。
と言うモヤモヤを抱えて今に至る。俺は上手く説明出来ただろうか?
顔を見合わせていたママさんらだったが、誰かが立ち上がりどこかへ走っていった。
「とりあえずご飯を食べちゃいましょうか」
そう促されて食事の続きをした。
気がついたら園長先生が居た。いつも忙しい看護師長さんも居る。
「と言うわけで、清見から相談されたけど、俺は空間スキルは持っていないしで、皆さんにお伺いしたくて本日の会議を開かせていただきました。小宮君、加瀬君、倉田さん他数名はオブザーバーだ」
えっ?
いつの間にか会議になってた???




