14話 秘密のスキル会議③
----(清見視点)----
「ドド、クサ、この秘密会議に大島氏も召喚していいか?」
ふたりから聞いた情報があまりに重要すぎて、俺ひとりでは受け止めきれない。そんな時は大島氏を巻き込むにかぎる。
二人の許可を得て大島氏を呼びに行く。と言ってもスマホも使えないし、『今どこ?』と聞けないところがこの世界で一番の不便を感じているところだな。
まずは仏間近くに居たギルド員に大島氏の今日の情報を聞いた。するとちょうど外回りから戻ってきて産院でシャワーを浴びているとこだと言う。俺は産院へ向かい大島氏をゲットした。
「清みん、久しぶりだな。3日ぶりか?」
「うん。久しぶり。3日前に森散歩で会ったぶりだね」
「で、どした?」
「うん。あの、……えっとその」
「うん? 今暇だしいいぞ?」
何がいいかわからないけど付き合ってくれるみたいなので仏間へ連れ帰った。
仏間で待っていたドドクサと合流、ドドのスマホ画面を見せた。
最初は営業マンのような笑顔だった大島氏の表情が真顔になった。
「これ。どこ情報?」
一瞬怒られたのかと思ったドドクサが固まった。代わりに俺が答えた。
「ええと、デスエ民情報だって」
俺に続いてドドがさっきのサッカーの話をした。
大島氏は何を考えているのかわからない真顔で俯き、しかし直ぐに顔をあげた。
「で? その後は普通にサッカーが出来たのか? パッシブを外して」
「はい。あの後はボールを足で蹴っていたから……」
「物理防御のパッシブを外した。…………つまり、スキルは自由にアクティブ、パッシブを選択出来るのか」
大島氏は目の前にスキルを表示させたのか、宙を睨んでいた。こっちからは見えない。
スキルボードを他人が見る事が出来るのは迷宮にある石版に触れた時のみだ。
「スキルボードには何も表示されていない。俺のスキルは彼らとは違うからか?」
大島氏のスキルは『完全防御(箱型)』だ。
普通の物理防御ならパッシブスキルだが、大島氏のスキルはどうだろう。
「小宮君、その彼はどうやってパッシブを消したか聞いた?」
大島氏が呼んだ『小宮』はドドの本名だ。つい忘れがちになるが、ドドは小宮圭介、クサはうちの親戚で加瀬秀だ。
ドドはクサと顔を見合わせながら思い出しているようだ。
「あの時は……特に何かやったふうではなかったな」
「ローシャンはベンチじゃないか。コートの仲間達に防御のパッシブを消せって叫んでたぞ?」
「そうそう。それで、コートの中のデスエチームの奴らが顔の前で手をシュっと振ったりしてたな。割と自然な動作だった」
顔の前で手をシュ…………。ステータスボードに何かしたのか。
俺もステータスボードを開く。
空間(仏間)と回復のみ。俺は物理攻撃の取得を断った。スキル石が余っているから取るように言われたが断った
俺は器用では無いからいくつもあると混乱する。今は仏間と回復だけでいっぱいいっぱいなのだ。
そのスキルボードを隅から隅まで見る。シンプルすぎて何もない。ドドもクサも自分のボードを見ているようだ。ふたりは確か物理攻撃だったな。
大島氏は顎に手をやり宙を睨んでいる。と思ったら突然右手を顔の前で小さく動かし始めた。
「そうか。わかったぞ」
わかったんだ。
流石は元エリートサラリーマン。元引きこもりニートの俺にはわからん。
そもそも『仏間』はアクティブもパッシブも無関係だ。
『回復』も物理攻撃と一緒で、『使う』時に『使う』のだ。常時そこらじゅう回復し続けるとかありえん。
いや、大量の修繕が目の前にあったらパッシブでお願いしたいかも。
ドド達もパッシブは無関係なスキルだから大島氏が何をどうわかったのかわからないみたいだ。
「なるほど、なるほど」
大島氏はニコニコしながら何かを納得している。
ようやく俺たちの怪訝な顔に気がついた。
「すまん。いや、スキルって凄いな。清みん、小宮君、加瀬君ありがとな。長年の悩み、この3年半の悩みが今、解決した」
「ひとりで喜んでないで説明してよ。大島氏のスキルってパッシブなのアクティブなの?」
「ボードに何か出たんすか?」
皆が大島氏の目の前の空間を見た。当たり前だがそこには何もない。
「いや、ボードには出ない。出ないから今まで理解が出来なかった。人間ってさ、つい、目に見える物を重視するよな」
「見えないならどう……何をしたんだ?」
「ただ唱えた」
「え……唱えただけ?」
「そもそもスキルなんて地球には無かったからな。スキル自体が謎のシステムだよ。俺たちはソレを地球のゲームや小説のように、システムで作られたボードか何かで操作するかのように思ってた。そこにレベルやランクが乗っていたりとかね」
うう、確かに。スキルがある世界と知って、目の前にあるスキル名だけが記載されたシンプルなやつじゃなくて、実はもっとごちゃごちゃしたのを想像してた。
今はまだレベルが低いからシンプルなのかって。
「大島っち、ステータスは変わらず?」
「ああ。変わらない。だが、完全防御の使い方がわかった」
「え……今までも普通に使っていたよね?」
「ああ。でも、謎は多かった。森の中で細い木を薙ぎ倒せる時とぶつかって進めない時の違い。床の防御地面はどうなっているのか。他人の空間防御とぶつからないのは何故か。迷宮内の細い通路を壁を壊さずに進めるのは何故か」
言われてみると不思議だ。人のスキルだから真面目に考えた事はなかった。
「ほら。昔に迷宮で清みんに床や壁を凹ませてと頼まれた時があっただろ?」
「うん。やってもらった」
「俺の完全防御が床や壁を凹ませるのに、地面に寝ても凹まない時がある。いや、凹まない時の方が多いな」
「それは、力み方が足りなかったとか?」
「ある意味正解。力み方と言うか意識するしないの問題。小宮君達が調べたさっきのアレ見て思った。アクティブとかパッシブって意識するしないで調整可能なんだ。アクティブは元々、使用する事を意識するスキルだからいちいちアクティブとは言わない。けど、サッカーの時、デスエの彼らは普段『物理防御』をパッシブ化していたけど、そのボールゲームでは使用しないように各自が設定しなおした。設定と言う言い方だとまたゲームっぽく聞こえるか。防御を無くすように意識調整したって言い方の方がいいか」
「つまり……? 大島っちの完全防御は、結局パッシブだったの?アクティブだったの?」
「アクティブに近いか。俺は必要と思える時に無意識にパッシブ化をしていたみたいだ。しかし元々地球にはないスキルだし、使い方が中途半端なんだよ。待って、ちょっとまだ練習が必要だがやってみる。わかりやすく言葉に出してみる」
そういうと大島氏は床のを見た。
「床面防御固め!」
特に何かが変わったようにが見えない。が、大島氏に腕を引っ張られて完全防御内へと入れられた。
畳じゃない!
仏間の畳の上で話していたのに、大島氏に引っ張られて入った大島氏の完全防御内、足元が完全に硬い何か、床面に俺は立っていた。
大島氏がゆっくりと移動する。俺は自分の足を動かしていないのに大島氏の防衛の床面に乗ったまま移動した。
「おおお!」
「すげえ」
ドドクサも大島氏から手招きされて防御内へ。
俺たち3人は大島氏の謎の床面に乗ったまま移動した。何なら座れるのでは?そう思った時には先にドドが座っていた。
大島氏が仏間の端へまで移動する。仏間から地面へと飛び降りた。
俺たちは大した衝撃も受けず、また反動で防御内から転げ出る事もなかった。
今までは大島氏の防御の壁がイマイチわからず、はみ出るのが怖かった。それで必死にしがみついたりした。
大島氏の外から石を投げつけると石は防御で跳ね除けられたが、俺たちは出入り自由だったのだ。
しかし今はしっかりと箱型の電話ボックスのような空間に俺たちは入っていた。




