11話 新しい避難民
----(絹田視点)----
地上ライダー隊が発見した新たな避難所の人達。
聞くとどこかのマンションに住んでいた人達で空間スキル持ちの親子が空間ごと、近場にボトボトと転移してきたようだった。
どうも『子育て』に力を入れて優遇した街づくりを行っていた市に新しく建ったばかりのマンションだったらしい。
若い夫婦が多く、空間付きでこの世界へと転移していた。
出来ればマンションごと転移していればよかったのだが、あの時間に子供と保護者がセットで居た空間のみなのだ。
バラバラの空間での転移となったようだ。しかし寝室やキッチンなどがそれなりにそろっていたお陰で、今まで生き延びてこれたようだ。
もちろん彼らだけでなく、近場に身ひとつで落ちた人たちや、警官や消防士がいたのも良かった。
彼らはまとまり、この3年半を生き延びた。
この集落には自衛隊関係は居なかった。地上ライダー部隊から報告が上がり各方面の課長を集めての会議となった。
「しかし、よくこれだけの世帯が集まりましたね」
「そうですね。同じ場所に移転するとはラッキーな」
日本全国バラバラな場所からの転移が多い中、同じマンションから異世界の同じ場所への転移もあるとは、転移のルールがさっぱりわからない。
いや、そもそもルールなどないのかもしれない。
「キッチンがあるなら水にも困らなかったでしょう」
「ええ、何とか食べ物を皆で分け合って過ごしたらしいですね。食糧の復活にも早い段階で気がついたそうです」
「何世帯がこちらへ? 名簿の作成はあるのか?」
ライダー課が現地で彼らに『ニッポン街』の事を話した時に意見が割れた。
ニッポン街へ合流したい組と、このままここでも問題がないという組。
前者は身ひとつで来た者が多かった。後者は空間持ちがほとんどであった。
やはり他人に寄生しないと生きていけないという不安から、ニッポン街という『平等』な場所へと移りたいという思いがあるようだ。
現在困っている事などを聞き出して、切迫していないようなら一度『ニッポン街』へ見学を勧めるか。全員ではない、それぞれ数人ずつでもまずはニッポンを見にくればいい。その後にゆっくり決めればよい。
今日明日、食うに困っているのなら別だが、3年以上ここで生活してこれたのだ。急がなくて大丈夫だろう。
もちろんこちらが知っているこの世界の情報、例えばデスエの事なども伝える。
「これだけの数が集まった空間ブロックだ。もしも移動するにしても一筋縄ではいかないだろう」
「ですね。それにニッポンの地上部分ももっと切り拓かないと置けないでしょう」
「現在の公園や動物園は移動させずにその向こう側へ住宅地を持ってくる事になりますかね」
「移動してくるにしても、移動希望が数軒のブロックならともかく、全部一度には無理だな。それに、さきほどの話では移動を希望しない家庭も多かったな」
家庭、と言ってもだいたいは母親と子供だ。あの時間、8時半なら旦那は既に出勤して自宅には居なかっただろう。
この集落に居る男性は皆個別に転移してきた者達がほとんどだ。
妻子と共に居たのはたまたま休暇をとっていたほんの僅かだ。
「もしも、母子以外の者が皆こちらへ来てしまったら、残された母子の安全面も気になりますね」
「まぁ、移動するかどうかは見てから決めればいいさ」
その後、結局その集落は移動をしない事になった。『ニュータウン浦安』と名付けられ、ニッポンまでの移動はなかったが多少の場所の移動は行われた。
地下に迷宮(踏破済み)がある場所の地上部分にニュータウン浦安が設置された。住民は大きく入れ替わった。
元からの空間スキル持ちである母子は概ねそのままで、身を寄せていた避難民はニッポン街へと移り住む者が多かった。
ニッポンからはギルドから新しい赴任先という事である程度の人数が派遣された。
迷宮は踏破済みであったため、有事の際には地下通路を移動できる。とは言え、通路の途中には未踏破迷宮もあるため、危険がない事もない。
そのあたりは駐在するギルド員による警戒は必要だ。




