105話 番外編 『スキル消滅③』
----(大島視点)----
「空間スキルって譲渡出来ないのかなぁ」
清みんがポツリと呟いた。それはギルドでも散々出た話題であった。そもそも『スキル』自体の正体さえ不明なんだ。それを自在に譲渡など、まずあり得ない。
「空間仏間ってさ、元は裕理を守るために俺が持ってたスキルなんだから、本来は裕理のスキルを預かってたとも言えないか?」
「そう言えなくもないが。裕理君って今5歳だっけ?」
「そう」
「3歳くらいから清みんと仏間で地上を走り回ってるよね」
「あとウリ坊にも乗ってる」
「ウリ坊は郁未やマナ達他の子も乗ってるだろ」
「俺たちより異世界に馴染んでいるよなー」
「日本での知識が無い分、馴染むのもラクそう。俺、日本では馬にさえ乗った事ないからなー」
「俺は自転車くらいだな。乗れたの」
「俺だって自転車は乗れたぞ」
「仏間……譲渡出来ないかなぁ」
再び、清みんが呟いた。
「再生物資はどうでもいいんだ」
「いや、よくないでしょ」
「空間スキルが消えて、押入れが無くなるのがなぁ」
「シショー、スキルが消えても仏間は残りますよ」
「それに地下の家にも押入れはあるじゃないですか」
「岩壁の穴と日本家屋の押入れじゃ月とスッポンなんだよ、暖かみ?が無いと言うか」
わからん。
「裕理だって嫌だよなー? 仏間が無くなったら」
仏間で遊んでいた子供達がいつの間にか俺たちの近くで話を聞いていた。
「スキルが消滅しても建物が消えるわけじゃないじゃないんだから」
「それでも! 畳が傷んでも張替えしてもらえないんだぞ? 仏間の畳は綺麗でなくちゃ」
全くわからん。
「きぃちゃん、僕、お手伝いするよ?」
裕理が清みんの前に来て小さい手で清みんの手を掴む。
「仏間の神様、仏間の神様、ここを無くさないでください。僕、畳のお掃除もするし、押入れも綺麗に使うよ? それに毎日のんのん様にぱんぱんもするし! きぃちゃんのスキル無くすなら僕にください」
「あ、消えた」
「はっ? 何が?」
「えっ、何が消えたの?」
「俺のスキルが消えた。空間(仏間)、無くなった」
一瞬の沈黙。
「はあああああ?」
「ええっ!」
「あ、僕のとこにスキル出たよ? きぃちゃん!」
「「「「「はああああああああああ?」」」」」
その後、ニッポンギルドは大騒ぎになった。
そして『スキル譲渡』の検証が色々と行われた。
他人でも可能か、空間以外のスキルも譲渡が可能か。
その結果、『空間スキル』は、その元となる幼児にのみ譲渡可能であった。
譲渡後の保有期間は不明である。この世界で7歳を迎えたときに消えるのか、残るのか、果たして。
譲渡は残り猶予が短い者から行われた。
そして、当時1歳前後だった子らが7歳になった時に、スキルが消滅しない事も発覚した。
残りの(当時)0歳児達も7歳を迎える前に譲渡を行った。産院や保育園では、複数の中から本人が希望する子を選んだ。
各地域に散らばっているマックでも急ぎ譲渡が行われた。ただし、マックが置かれている場所が場所だけに、引き継ぐ側の親もなかなか首を縦にふらず、マックの場所をニッポンの近くへ配置換えするなどの措置が取られた。現在ニッポンの地上にはマックが5軒並んでいる。
スキルを譲渡した子供らが幾つになるまでそのスキルがあるのかはわからない。だが、しばらくは大丈夫そうだ。
「譲渡の譲渡って出来るのかな? だってさ、マックは永遠に引き継いで行った方がよくない?」
『そのうち異世界産の似た店舗を造ればいいんじゃないか?』
皆が心の中でそう思ったが、口にした者はいなかった。優しい仲間達である。
完




