103話 番外編 『スキル消滅①』
スタンピード発生したのは異世界転移をして丸4年経った頃の話、これはそれからさらに少し経ち、落ち着いてきた頃の話です。
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----(清見視点)----
「スキルが消滅した?」
俺達はニッポン街があった踏破済み迷宮の地下10階から、地下15階へと移り住んだ。
10階のままとはいかなかったが、ほぼ同じメンバーで町内会が作られた。
そしていつものメンバーが(何故か)俺の自宅スペースに集まり、いつものように寛いでいた。
そこにドドクサコンビが飛び込んできた。
「あれ? 今日はギルドのバイトで残業になるって言ってなかったか?」
「切り上げたっす! シショー!大変っすよ」
「そうなんですよ! とにかくアニキに知らせないとと思って早退してきました!」
残業の早退………? それは、定時あがりなのでは?
「落ち着いて。あなた達、夕飯は食べたの?」
風呂ママさんが立ち上がりながらドド達に聞いた。おっと、もう『風呂スキル』は無くなっていたんだっけ。つい癖で『風呂ママ』と呼んでしまう。今は……リコママか。
「まだです。とにかく、早く、シショーに知らせようと思って」
ドドは息を切らしながら俺を見ている。風呂……リコママがドド達の夕飯を取りに調理場へ向かう。
ええと、理由は知らないけど俺のために定時退社?をしてくれたみたいなので、とりあえず聞いてみるか。
「それで? 何があった?」
「スキルが消滅したそうです!」
「スキルが消滅した?」
「あらやだ。誰のスキルが無くなったの?」
「スキルが消えるって、空間スキルの事よね? どこの空間が消えたの?」
そう。空間スキルは、その空間である建物から一定距離、一定期間の離れ続けるとスキルが消滅するのだ。
それは過去にリコママが『風呂スキル』を捨てて消滅検証に協力した。なので、空間スキル持ちは、常に『一定』ルールを守って生活をしていた。
「ギルド承認の元、スキルを手放したんじゃないのか?」
裕理達とトランプをしていた兄貴がこちらを見ずに話にくわわる。ちなみにトランプは『空間(機体)』で再生された物資のひとつだ。
「ギルドで騒ぎになっているくらいだから、ギルドも知らないうちに消えたみたいっすよ」
「知らないって、かなりしっかりスケジュール管理していたはずだろ?」
「そうよね。間が空く時は3日前にはお知らせが来るし、当日は確認検査官も立ち会いしてるわよね」
そ、そうなんだ?
俺は、ほぼ毎日仏間に行ってたからそれは知らなかった。色んな人が出入りするしギルド員も毎日沢山くるからな。あの中の誰かが検査官だったのか?
「じゃ、何で消えたんだ?」
どう考えてもありえないよな? 空間スキルは、その空間にある物資が毎日再生する。それをギルドが管理して住民の生活に役立てているのだ。『もう要らない』と判断をしない限りは、スキルが消えないように常に慎重に取り扱っているはずだ。
皆で顔を見合わせた。そして慌ててそれぞれが自分のステータスを確認しているのか、宙を睨んだ後にホッとした顔になった。
俺も確認した。
『スキル:空間(仏間100)』『スキル:回復(極)』
うん。ある。良かった。
「何で消えたのかはともかく、何が消えたの? 知ってる人?」
「うちの町内会は今ここに……あ、大島君以外は全員居るわね。消えた人、居る?」
「大丈夫。あったわー。空間トイレ」
「私もあります。機体」
「キッチンもあるわよ」
「仏間あります」
「あぁ、私の風呂はね、とっくに無かったから」
リコママが苦笑いになった。
「ミニバンもあるわ。これ、無くなったら、私泣く」
「洋子さん、車命だもねぇ」
「1番は翔洋よ! 車は2番、かな」
ママさんらは、へぇとかふふふと笑っていた。
「で? ドド君、何が消えたの?」
「バス……都バスって言ってました」
「それが、3日前に確認したばかりだって……」
「本当に確認したのかって疑われて、あの検査官、かなり言い張ってたよな」
「ギルドから通達が出ました」
大島氏が入ってきた。
「夕飯、まだあるかな。通達持って来がてら今日は帰社していいってさ」
「あら、じゃあ取ってくるわね」
今度はマナママが席を立った。
「で?」
「検査官以外にも目撃者が居た。確かに3日前にバスまで行った。なのに、スキルが消えた」
「うっそ……」
「何それ」
「それで、ギルドでも今てんやわんやだ。とにかく空間スキル持ちは暫くの間、毎日空間タッチを義務付けるみたいだ。消えた理由が不明だからな」
「都バス……再生物資は?」
「それは大して重要じゃないそうだが、消すつもりが毛頭なかったスキルが消えた、そこが大問題らしい」
「もしかすると、…………タイムリミット?」
皆がハッと息を飲んだ。
「そうだ。どうしてあるのかわからない『スキル』、いつ消えるのかも不明。それが、今、来たのかもしれない。ってのが、ギルドの考えかな」
俺も含めてママさん達がまたも宙を睨む。ステータスを確認しているのだろう。
「出来るだけ頻繁に確認をした方がいいかもしれませんね」
その日はそれでお開きになり、皆、自分のスペースへと子供を連れて戻っていった。
「兄貴……、俺、今日から仏間に泊まる」
「そうか、わかった。時々様子を見に行く」
「きぃちゃん、のんのん様に行くの?」
「うん。のんのん様のとこに泊まる」
「僕も行く。お父さん、僕も行っていい?」
「だーめ。夜はこっちに居なさい。昼間は上に行こう」
「…………わかった」
裕理は本当に聞き分けが良い。母親が居ないけど良い子に育ってる。
俺は裕理と兄貴におやすみを言い、螺旋階段へ向かい通路を進んだ。
「15階かぁ…………」
エレベーターもエスカルも、もう終わっちゃったかなぁ。
因みにエスカルとは、小型の魔獣に木箱を引かせてそれに乗ってる地上へ向かう坂道を移動するのだ。
ギルドがいつの間にか開発していた。ブラボーである。




