101話 番外編 『俺、犬だけど異世界転移した①』
異世界に転移して1年目の話です。
-----(清見視点)-----
裕理を連れて保育園に行く。最近は裕理や郁未君達も保育園で他の園児とともに過ごしている。
「おはようございまーす」
園の玄関から中に声をかけたけど誰も出てこない。いつもなら保育士さんが出てきてくれるのに。
何やら園庭の方が騒がしい。中には入らずに園庭へと回った。
砂場の中央、そこには大きな黒い塊が落ちていた。大型犬くらいの大きさだろうか?シーツとか布団の汚れ物の塊???
「清見くん、危ないっ! 近寄っちゃダメ」
声がした方を見ると園庭へ出るガラスドアがピッチリと閉められてそこに園児や保育士さんが鈴なりになっていた。
慌てて裕理を抱き上げた。
音を立てないように後ろ足でゆっくりと下がり始めた時に、その黒い物体が動いた。
顔らしき物をこちら向けた。目がある、ふたつ。
あれ、これ…………。
俺はササっとガラス戸まで下がり、扉を開けた保育士さんに裕理を渡してからまた黒い物体へと近づいた。
「ちょっと! 清見くん、危ないって!」
「それ、魔物じゃないの?」
ああ、やっぱり。これ、かなり汚れているけど犬だ。長毛で汚れが固まっちゃった感じか。
「だいじょーぶ、です。こいつ、犬っぽい。水道お借りします」
これだけ近づいても吠えない。かなり真っ黒いのは毛が黒い種類なのか? 目がクリックリだな。おっ、口を開けた、喉が渇いてるんじゃないか?
そこに置かれていらおもちゃの器を借りて水を入れてから、その黒いやつの前に置いた。
ガフガフと飲んでいる。ポケットを探るとビスケットが出てきた。袋から出してそれも横に置いてやると、十分に水を飲んだ後にクンクンと匂いを嗅いでからパクっと食べた。
俺はそっと手を差し出して匂いを嗅がす。
「触っていいか? 撫でるぞ?」
そう言いながらそっと顎らしきところを撫でた。うわっ、バッチ。お前、どこで何を付けてきたんだよ。
あ、ほら、そうだ。首輪がある。黒く汚れた毛に埋もれていたが首回りに首輪らしき物があった。
首輪に何か書かれているかもしれないが、これはちょっと全てが汚すぎてわからん。洗わせてくれるかなぁ。お風呂好きな子ならいいんだけど。
水道まで首輪を引いて連れていったが、嫌がる事もなく、水を出してもジッとしていた。
保育士さんに風呂ママさんとこでシャンプーを貰ってきてくれるように頼み、とりあえず水でゴシゴシと泥土を落としていく。
大人しくていい子だなぁ。
結局シャンプーを7回繰り返してようやくある程度の汚れが落ちた。
黒毛ではなかった。白っぽい毛だ。完全に汚れは落ちなかった。お風呂に入れてお湯を使わないとダメだな。
とりあえず、首輪が見えるようになった。文字が消えかかってしまったが、かろうじて読めた。
『さえ』
真っ白い大型犬名前は『さえ』。女の子か。サエちゃん。んん〜???付いてるな。男の子?サエ君???
サエが4本の脚を大きく開いて、ブルブルブルっと犬がやる水切り(水飛ばし?)をするかと思いきや、ブォンッッとサエの周りを空気の渦が舞い上がった。
見るとサエの身体からは完全に水気が無くなっていた。
ふわふわの真っ白だ。
「あら、この子、サモエドさんじゃないかしら。まだ若そうね」
保育士さんらが庭へと出てきていた。子供達もだ。
「かわいー」
「ふわふわぁ」
「こら、急に触っちゃダメよ。びっくりしちゃう」
「ひとりずつ、優しく撫でてあげて」
保育園にアイドルが誕生した。サモエドのサエ君。…………さっき魔法を使った?気のせいだよね?
完
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因みに首輪の消えかかった文字『サエ』は名前ではありません。
サモエドで名前はコロ
飼い主はうっかり『もさえど・コロ』と書き、それが消えかかっていました。




