10話 テイムのスキル
----(絹田視点)----
自衛隊がニッポンギルドへと組織を変えた。
この世界の事が少しずつわかるようになり、日本と同じままでは成り立たない事もようやく理解した。
ギルドと言ってもこの世界の、例えばデスエのギルドとは少し異なっている。いきなり日本国民をこちらの世界に解き放つ前に、擬似的な仕組みを作り慣れてもらう事にした。
ニッポンギルドの迷宮探索チームには、『アニマル課』から魔物及びそのテイマーを出向して参加させている。
特に迷宮の探索には地上でテイムした魔物が役に立つ。
ギルド防衛部門には『テイム課』というチームがあるのだが、こちらは『テイム』する事にのみ特化して作られた課である。
テイム希望者はまずはこのテイム課に配属希望を出す。テイムに成功した後に『アニマル課』へ移動、その後の魔物の使い方や身の振り方をそこで勉強、訓練を行い、その先へと繋がる。
攻撃特化の魔物は迷宮探索チームへ、移動や運送、癒し系などで、配属先も変わってくる。
地上探索班のライダー部門は、まさに、騎乗専門の魔物とテイマーのチームになる。
地上ライダー部門作成に力を入れたのは、地上で生き残っている日本人を少しでも早く見つけて救助をしたいからだ。
とは言えあの事件からすでに3年半は経った。
間に合わず救えなかった数も考えたくないくらい膨大だろう。いや、実際のところどのくらいの国民がこちらの世界へ来てしまったのだろうか、結局それは不明のままだ。
ただ、3年以上生き残れている者たちは、きっと自力(何かしらの力)で生き残れているのだと思う。
自力で生きているからと放っておくつもりはない。自分達以上の何がしがあるのならそのままで良いが、そうでないなら手助けはしたい。それがニッポンの総意であった。
『自分達が助かった。他の人も救えるなら救いたい』
地上ライダー部門は、その総意の元に作られた。
まだまだテイマーの数は多くない。そもそもスキルに『テイム』が無い事、テイムの際にかなりの危険がある事から、今のところテイムには大島氏の協力が必須となっている。
それと長谷川さんのミニバンもテイムの役に立つ。
持ち運びが便利な大きさの空間スキルがなかなかみつからない今、テイムは大島氏の完全防御と長谷川さんのミニバン頼みだ。
それ以前に、テイムに関係するであろうスキル石の入手がなかなかに難しいのだ。
今のところ、テイムに成功しているのは、空間スキル持ち、もしくは『気力』スキル持ちだ。
デスエのギルドで『気力』のスキル石の購入をしたかったのだが、気力のスキル石はそれほどドロップをしないそうだ。
実はこの世界でも『テイム』は知られていなかった。
そもそもスキルとしてのテイムはないようだ。ダイソナーや他の騎乗獣は、それを専門にした者が仕事にしているだけで、冒険者や一般人が魔獣を従える事はないそうだ。
なので、この世界でも気力のスキル石はほとんど重宝されていないそうだ。
それでもあるだけの気力スキル石をギルドから譲ってもらった。
そして森で探した魔獣をテイムして地上探索班が作れる程度の人数のテイマーを確保出来た。
だが、森の中の探索はかなりの危険が伴う。
と言うのも、この世界の森は日本と比べるとかなり樹木の育ちが良く、背の高い木、太い幹の木が多い。そして魔物は大概上の方に居るのだ。
そして獲物(俺ら)を見つけると上から降ってくる。しかもそれだけではない。草の陰、岩の陰からも魔虫、魔獣は襲いかかってくるのだ。時には大量に。
騎乗用の魔物だけでは対処出来ない。
が、実は発見した事がある。地上、森の中ではスライムがかなり強い。
いや、全てのスライムが強いわけはないだろう。ただ、コアラパンダとスライムを連れていると、弱い魔虫はまず寄ってこない。魔獣が寄って来てもスライムがあっという間に捕食する。
ただし、数の暴力には勝てないだろう。一対一ならスライムが勝つが、五対一なら、一体の魔獣にかかっている間に残りの四体がこちらに向かってきてしまう。
大島氏のボックス防御か、清見君のスライム軍団が必要なのだ。
大島氏はニッポンギルドへ加入してくれた。しかし、清見君は修繕作業などもありギルドでの活動は難しい。
ただ、ギルドからの単品での依頼は受けてくれるので助かる。
清見君には、森の中を仏間を引いて木を薙ぎ倒して道を作ってもらう作業を頼む事が多い。
上空の木が切り開かれただけでも、森の中の安全性はかなり上がるのだ。
とは言え、それほど余裕があるわけではないようなので、時間があるたびに好きに回ってもらっている。
別に地上の森をまるはげにするつもりはない。ただ、ある程度避難可能な道がそこかしこにあればいいのだ。
そうして、ある程度移動可能になった地上部を、地上ライダー達が走り回り、新たな救助者を探している。
実は日本の物体、元建物だったり車両だったりとした遺物はあちこちで発見されている。
それらの位置をマップに記している。そこにそれが落ちている。つまりはそこには最初に人が居たはずだ。近くを探す。どこかに隠れて生き残っている者は居ないか。人が居た痕跡を探す。
3年半……持ち主が近くにいない場合は錆び始めたり綻び始めている。
そうでない場合は、その空間が生きている。スキルの持ち主が近くで生きていると言う事だ。
最初の1年は自分らの事で手一杯だったが、その後の2年で、生きている空間スキルの避難施設を幾つか見つけていた。
おもちゃのブロックで作った団地を分解したように、バラバラに落ちている場所があった。
恐らく、同じ団地で『空間スキル』を取得した親子が居た空間が、ボトボトと近場に転移したのだろう。
清見君達が最初に集まったように、いや、それよりも多くの家庭がそこには集まっていた。
寝室だったり、キッチンだったりとそれぞれだが、皆が協力をして生きてきたそうだ。
そこの近場に身体ひとつで落ちた人たちも集まったようだ。




