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白い蝋梅の咲くころに

作者: エリス

 露ゝとしたふゆでございます。ティシューペーパーがひとひら落ちます。貴方に逢いたくござります。青く固い空はこうべを裏返し、歩に歩めば草の茂みに日が返します。貴方へ手紙を告げず越しましたのも、ふゆになったためでございます。私達は何年お付き合いしてきましたでしょう。貴方より届かれましたのは少なくとも五着、重ねたふゆの中、そです。お会いしたこともございません。二度、逢いましたことのみです。書物屋へ()き、鬢を解き、初めの頁に空白と続きます文章に貴方のお気持ちを汲み取るのです。朝鮮朝顔の花が降りています。私の眼にはとてうつくしく取られ、貴方のお胸には存じ上げられません。そのような四季を通り過ぎまして、私は一人で待つことにしたのです。お家、山茶花、根本、住所を書き留めて。

 私はいつたりとてお手紙をお待ちしております。けれども、私にも人生ときがあります。いつまでも本を見据え、父母の仕送りに生きて往くこともおこなえないのでございます。友人もいませず、ただ一人青さに憂いている訳にも往けませぬのです。貴方の憂いにも、お付き合いできないのです。貴方が居なければ。

 このまま往けば私はここより去るでしょう。貴方が去っても、去るでしょう。ふゆの日に、焼けてゆきます。私は貴方を忘れてきてゆきます。私は眼の前にあるものだけを確かだと思っております。(ふみ)は、一時(ひととき)前の呼吸に儘なりません。文通だけが確かなのです。白い蝋梅が愛でています。忘れれためにも、お手紙をお待ちしております。

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