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17 リナ先輩の家にお泊まりとか奇跡かよ

 僕は悩みに悩んだ結果、いや、本能のままリナ先輩の家にお邪魔することにした。

 そして今まさにリナ先輩の部屋に僕という異物がいる!

 二人掛けのソファーに僕が一人で座っている!


 リナ先輩も僕と同じで都内で一人暮らしをしているだ。一応同じ区には住んでいる。歩くと遠いけど。

 それにリナ先輩の家は僕と同じボロアパートではない。ちょっと家賃が高そうなアパートに住んでいる。


 部屋はしっかりと掃除がされている。

 意外にもウサギのぬいぐるみがいっぱいある女の子らしい可愛い部屋だ。

 清楚系ギャルの見た目とギャップがあって可愛い部屋だ。


 それと良い匂いが……リナ先輩の匂いがする!

 女の子の部屋ってなんて最高なんだ。というか女の子の部屋とか人生で初じゃね?


 やばい!


 無意識に意識しないようにしてたっぽいのに、意識してしまった。

 意識した途端、胸のドキドキがやばい!

 緊張してきた!



 リナ先輩はどこにいるかって?

 リナ先輩は風呂だ! 風呂に入っている!

 恋バナの続きがしたいと言ってたのに、帰ってきて早々風呂に入り出したのだ。

 なるほど。これが所謂(いわゆる)、放置プレイってやつか……。

 待ってる間のこのドキドキも楽しめって事なんだな……。

 なんて小悪魔な人なんだ。



 シャワーの流れる音が消えた。

 風呂場の扉が開く音も聞こえてきた。

 リナ先輩のお風呂が終わったんだ。


 風呂上りのリナ先輩が来る。

 き、緊張する……。

 童貞だからか? 童貞だからこんなに緊張するのか?

 落ち着け。まずは落ち着け。平常心を保て。

 すぐに風呂に入ったのは好きだからだろう。

 部屋を見てもかなり整理整頓されている。


 やましい事なんて一切考えるなよ。

 何も起こらない。何も起こさない。僕にはカナちゃんとレイナちゃんがいるだろう。

 それにリナ先輩には好きな人がいるんだ。

 だから何も起こらない。何も起きちゃいけない。


「お待たせっと。いや〜、家に上がらせたのにさ、待たせちゃってごめんね」


 黄色い花を咥えたウサギが描かれたTシャツとショートパンツ姿で出てきた。

 はい。可愛い。心臓張り裂けました。


 金髪の長い綺麗な髪はまだ乾かしておらず濡れている。

 いつもと違うリナ先輩の姿にドキドキが止まらない。


 豊満なおっぱいもTシャツを盛り上がらせている。

 バイト中は見えない褐色肌の足も大胆にさらけ出している。

 童貞の僕には刺激が強すぎる部屋着だ。


 なるべく目線をズラそうとするけど、どこを見たらいいんだかわからない。

 あっちもこっちも見ちゃいけない物がありそうで目線に困る。


 明らかに動揺するとリナ先輩は察しがいいからまたからかってくるぞ。

 ここは自然に、普通に、いつも通りに接しよう。

 僕は男だ。余裕な態度でいつも通りしてればいいじゃないか。


「だ、だだ、いじょ、うぶ、でしゅ、待ってまひぇん……」


 やってしまった。

 動揺し過ぎて盛大に噛みまくった。緊張で呂律(ろれつ)が回らねぇ。


「ぷふっ、なんだよそれ。もしかして緊張してるの〜? あっ、童貞だもんね、仕方ないか〜。今、髪乾かすからもう少しだけ待っててね」


「ちょ、ちょっと噛んだだけですよ。緊張なんてこれっぽっちもしてないですよ!」


「あれ? 緊張してないんだ〜」


 強がれう僕にリナ先輩は八重歯をチラリと見せて小悪魔のような笑顔を浮かべた。

 ニヤニヤと近付きながら僕が座っているソファーに座り出した。

 二人掛けのソファーと言ったけど、二人で座るとめちゃくちゃ狭い。

 肩と肩がくっつく距離だ。近い! 近すぎる!


 風呂上りの良い香りが漂ってくる。ミルク石鹸の香りか?

 その香りを感じた瞬間、鼓動がさらに激しくビートを刻む。

 隣に座るリナ先輩に鼓動が伝わってしまう。聞こえてしまう。


 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。


 というかなんで隣に座ってきたんだよ。

 早く髪乾かしに行ってくれよ……。

 強がった僕がバカだった。

 童貞は童貞らしく目を回して挙動不審になってればよかったんだ。


「か、髪は! 髪は乾かさないんですか!?」


「うん。あとで」


 えぇ、なんであとでなの?

 なんでだ。なんでなんだ。

 しかも何? その笑顔は。

 どうしよう……。


 そ、そうだ。恋バナだ。

 そのつもりでここに来たんだ。

 恋バナをして気を紛らわそう。


「あ、あのリナ先輩……恋バナの続きって……」


「そう、そう、恋バナだったっけ。えーっと告白されるにはどうしたらいいかなって思ってさ〜。アドバイスちょーだい!」


 腕が掴まれた感覚を味わった。リナ先輩の手が僕の腕に絡んできたのだ。

 豊満なおっぱいも当たりそうだし、何がしたいんだこの人は。

 というか、近い! 近い!


「っちょ、リ、リナ先輩! 近い、近いですって、か、からかいすぎですよ!」


「ぷふっ、ウサギくん可愛い!」


 先輩の様子がおかしい。

 昨日のレイナちゃんみたいにおかしい。

 女の子ってみんなそうなの?

 僕が知らないだけ?

 風呂に入ってのぼせたとかそんな可愛い理由じゃないよね?


「それでさ〜。続きなんだけど……好きな人に告白させるにはどうしたらいいかな〜?」


 顔を近付けて目と目を合わせながら誘惑するような甘い声で言ってきた。

 吐息がかかる。それほど顔が近い。


「だ、だからリナ先輩! 近いですよ!」


 とっさに離れた。離れたくないけど離れるしかない。

 このままだとリナ先輩の誘惑に負けて、僕までどうにかなりそうだったから。


「そんなに嫌がらなくてもいいのにな〜。あっ、そうそう。これ練習だよ。練習! こうやって誘惑したら告白してくるかなって思ってさ」


 まただ。また笑いながら八重歯を見せている。

 小悪魔なリナ先輩だ。いつも僕をからかうときに見せるリナ先輩だ。


「な、なんですかそれ……誘惑って。ビックリするだけですよ。というかやりすぎですよ……」


「ウサギくんが言ったんだぞ。男の人から告白だって。だから誘惑しないと」


「言いましたけど、そんなに誘惑してきたら襲われちゃいますよ? 僕みたいな童貞だと困って挙動不審になるだけです。告白どころじゃなくなっちゃいますよ。絶対やめた方がいいですっ」


 リナ先輩の好きな相手がどんな人か知らないけど、こんなやり方だと男をダメにしてしまうと思った。


「へ〜。男の人ってそうなんだ。タヌキくんは襲ったりしてこないわけ? あっ、童貞だもんね。しっしっし」


「な、何ですかその笑い方はー! というか僕が童貞じゃなくても襲うわけないじゃないですか! 僕たちは先輩と後輩の関係なんですから!」


「ふ〜ん、そっか……そうだよね」


 その時のリナ先輩の表情は、どこか寂しそうにも見えた。

 なぜだろう。この胸の変な感じは。

 わからない。わからないから変な気持ちなのか。


「あっ、そうだ! お腹空いてるでしょ。ちょっと待っててね! 髪乾かしてから簡単なものだけど作ってくるよ……」


「だ、大丈夫ですよ。バイトで疲れてるでしょ? 僕は家に帰ってから食べますよ!」


「いいや、いいって、いいって! それに疲れてるのはウサギくんもでしょ? せっかくだから食べてってよ〜。あたしの手料理を食べれるなんて、滅多にないことだぞ?」


「た、確かに! で、でも……申し訳ないというか、なんというか……」





 ◆◇◆◇◆◇◆◇





 で、結局食べてしまった。

 リナ先輩の手料理を。愛情が詰まった……かどうかは知らないけど、リナ先輩の手料理を!


 今思い返せばじゃがいも料理が多かったな。


 肉じゃが、コロッケ、ポテトサラダ。


 しかしどれも美味いしかったな〜。居酒屋でもメニューとして出せる。食べた僕が保証する。


 料理もできて綺麗好きで、本当に良い女性だ。

 リナ先輩と付き合う男は幸せ者だろうな。うらやましい。


 食事中も恋バナの続きをしたが、やっぱり相談する相手を間違っていると思う。

 だって僕は恋愛経験ゼロの二十五歳童貞だぞ。僕との恋バナで得られるものなんて何一つもないと思う。


「ご馳走様でした。すごく美味しかったです。久しぶりの家庭の味って感じでした。今度なんかお礼しますね!」


「ありがとう。お礼はいいよ。恋バナ色々楽しかったわ。あっ、ちょっとこれ着てみて!」


 リナ先輩はタンスの中から大きめのピンクのスウェットパジャマを取り出した。

 透明の袋に入っていて新品のように見える。


「こないだサイズ間違って買っちゃったやつなんだ。ウサギくんのサイズにピッタリだったらあげるよ!!」


「えっ? いいんですか? じゃ、じゃあ一回サイズ合うか着てみますね」


 恥ずかしさはあったもののその場で着替えた。

 別に裸になるわけじゃないからね。


「おぉ、ピッタリじゃんか! あげるよ。それ着て()()()()()っ」


「ビックリすぎるほどピッタリですよ! 本当に貰っちゃっていいんですか?」


「うん。いいよ。寝間着があった方が寝れるでしょ?」


「はい! それじゃあ遠慮なくもらっていきま……ん? 今なんて?」


「時間も遅くなったし泊まってきなよって話。お風呂も入っていいからさ。あたしの残り湯でも楽しんで〜」


「は? え? あっ?」


 またからかってるのか?

 これはやりすぎだぞ。

 熱い。熱い。このスウェットのせいか?

 いや、リナ先輩のせいだ。

 お泊まりだなんてハードルが高すぎる。

 女の子の部屋も初めてなのに!

 こ、ここは断らないと。


「お、お泊まりですか!? い、いや、いいですよ! そこまで迷惑かけられないですし、帰りますよ! 電車もまだありますし、頑張れば歩いてだって帰れますし」


「まぁまぁ落ち着きなさいって! 何もしない、何もしな〜い! 童貞のウサギくんだって何もできないでしょ? じゃあ安心じゃない?」


「そ、それは、そうですけど……」


 こ、断れない。

 本音は泊まっていきたい。けど、迷惑じゃないのか?

 何でここまで親切にしてくれるんだ?

 どうしよう。何もしないって言ってるし大丈夫だよな。

 お言葉に甘えてもいいんじゃないか?

 お言葉に甘えても……


「ほ、本当に何もしませんか? 僕は何もしないって誓えますよ」


「おっ! 童貞の誇りってやつ?」


「そうです。って! 違いますよ! なんですかその不名誉な誇りは!」


「あはは! 冗談だよ。何もしない。何もしないから泊まっていきなって〜。まだまだ相談したいことあるからさ〜」


「わ、わかりましたよ。朝起きたらすぐに帰りますからね……」


「オッケー! オッケー! そうこなくっちゃね。ふふっ」


 なんだその笑い方は。くっそ可愛すぎる。

 やっぱり笑顔のときのリナ先輩はすごく可愛い。

 八重歯がチラッて見えてそれで……それですっごく可愛い。

 リナ先輩の笑顔に僕の心臓がまた激しくビートを刻んでいる。


「そ、それじゃ、お、お風呂に! は、入りますね!」


「は〜い、いってら〜。あたしの残り湯を楽しんでね〜」


「た、たのしませんよ!」


 残り湯か〜。楽しみだな〜。

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― 新着の感想 ―
[一言] 部屋が綺麗な女性っていいですよね。最近部屋が汚い女性の話を聞いただけに、部屋が綺麗、というのは希少価値なのかもしれないと感じました。
2023/06/08 09:57 退会済み
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