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新たな冒険

 

 吾輩は猫、いや、やめておこう。露骨過ぎてお叱りを受けてしまうだろうから。


 気を取り直して──勇者マロンは猫に生まれ変わった。アメリカンショートヘヤーという血統書付きである。お値段は、現段階で188800円。今日、少し値段を下げて様子を見ようかという話しを店員さんがしていた。つまり、思っていたほど人気がないという事なんだろう。アメリカンショートヘヤーは人気者だが、前世勇者マロンであるこの子はそうでもないみたいだ。



「はーい! ご飯の時間ですよー」



 係の人が、丸いピンクのお皿にドロっとした何かを入れてもってきた。ショーケースの中の扉が開く隙を狙って外に出ようと毎回試みるが、係の人に頭を掴まれて毎日押し戻される。係の人の爪はマロンのそれに比べて硬く、鮮やかな色でキラキラしている。マロンは次のチャンスが来るのをただひたすら待っている。このドロっとしたものを貪り食いながら。


 そうは言ってもこのショーケースの中は至れり尽くせりである。お水も蛇口のようなものが透明の壁に付けられていて、口を持っていけば補給できるし、トイレだって付いている。隣には白いフサフサした毛並みのスコティッシュフォールドのメスもいる。彼女とは気が合うのか時折アイコンタクトでお互いの調子を確認し合ったりしている。



 何故に人気がないのか──おそらく愛嬌の問題だろう。顔は猫界でもイケメンの部類に属するはずだが、見に来たお客さんを睨みつける癖が治らない。



「この子、何か睨んでいるように見えへん?」


「猫って睨んだりするんか?」



 20代前半ぐらいの今時カップルが興味を示しているが、マロン、いや、『アメリカンショートヘヤー』略して『アメショー』は睨みつけている。大魔王ババローアの手下が人間に姿を変えている可能性はゼロではない。武器はこの拙い爪と、まだ乳歯の牙だけである。絶対にやられるであろう事は分かっているが、そこは前世勇者である。気持ちだけは逃げないという勇ましさは健在である。



「こっちのフレンチブルちゃんめっちゃ可愛い!」


「どれどれ?」



 特殊能力『威嚇』が成功したと勘違いしているアメショー、彼のご主人様はいつ現れるんだろうか、そして無事に可愛がってもらえるのだろうか、前途多難である。

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