19.無駄に自信満々
19.無駄に自信満々
「さて。次のエリアですね」
結局、ミウが購入したものは直接職場と家へ転送した。
施設全体の半分くらいには来たが、まだあと半分見て回る。荷物を持って歩くのは大変だ。
「次は……」
路は一つだけなので迷う必要はない。ただちょっと薄暗くて先が見えず、ミウは戸惑うように案内板を探す。
「闇夜遊歩道」
「あー……だから暗いんですね。でも、遊歩道ならホラー要素はなさそうかなぁ」
――お化け屋敷とかホラー系アトラクションじゃないなら、大丈夫!
基本的にミウは怖がりだ。ビビリとも言える。
友人達には心臓が毛でモフモフしてると言われていても、ビビリである。
遊園地に行けば、まず絶叫系とホラー系は「待ってる」と抵抗を試みるのがお約束。そして抵抗虚しく連行されるのもお約束。
そんなミウだからこそ、暗い場所などを見ると警戒する。
「行くよ」
「あ、はい」
――サラ先輩は何があっても驚かなそうだよね……。
本物でも偽物でも障害物、全てを無視して進みそう。
絶対、サラにとって興味が無ければ居ないも同じだろうという確信がある。
おまけにミウが立ち止まったり竦んでも振り返らず置いていかれる気がして、ミウは置いていかれないように後に続いた。
――シェルディナード先輩もサラ先輩も、無駄に自信満々だもんね……。
実際、実績もあるのだからそれもそうだろうとは思うものの、何となく釈然としない。
――あたしばっかり振り回されてる気がする。
ちょっと小憎たらしい。
そんな事を考えている内に、どんどん先に進むほど暗くなって行くのに気づいて、ミウは不安げに辺りを見回した。
「あの、これ、照明の故障とか……」
「ない、けど?」
「そ、そうなんですね……」
しかし暗い。徐々になので目は慣れてくるのだが、暗い。そして静か。
何となく不安になり、ミウはサラの側に寄った。何かあったらサラの側にいるのが安全だ。と。そこでサラがミウへ腕を軽く差し出した。
「え?」
「袖。掴めば」
「あ。はい……」
反射的にその袖をちょっぴり掴む。
暗闇の中、それだけでどことなく安心感が胸に広がって、ミウの肩から力が抜ける。
少なくともこれで置いていかれる心配はしなくて良い。
さらに暗さを増して本気で真っ暗になったと思った瞬間、それは起こった。
「うっ……わぁ…………」
真っ暗なそこに一歩踏み込んだ瞬間、踏み込んだ足許から薄緑に光る水草が生えて淡く光る気泡が立ち昇る。
水草も気泡も幻影で作られたもので、ミウ達が水に入ったわけではない。
だが、まるでそこが水中かのような光景。
気泡に触れると弾け、それは小魚の群れに変わったり、一匹の大魚に変わったり。様々な色彩の光る魚や水に棲む生き物へ変わり、周囲を泳いでいく。
光で描かれる水中の風景。
踏み出す毎に水草は揺れ生え、気泡が立ち昇る。
ミウは思わず子供のように一歩、また一歩と先へ踏み込む。次々に芽吹く様子が楽しくて、気づけば怖いなんて気持ちはすっかり無くなっていた。
少し経てばだんだんと薄くなって消えてしまう足許の光。
誰も足跡を残していない雪に一番乗りする子供よろしく、ミウは前に踏み出す。
踏み出し、芽生え、消えて、また芽吹く。
気泡は魚や湖水クラゲに。それらはミウ達の周りを誘うように泳いで先へと導く。
「あ……」
夢中になって踏み出すうちに遊歩道は終わった。
何だか途端に寂しくなったような感じがして、ミウは名残り惜しそうに後ろを振り返る。
「もう一度、やる?」
「え、あ、だ、大丈夫です!」
「そう……」
楽しそうだったのに良いのか。そんな風にちょっとだけサラは首を傾げたものの、それならと前を向く。
――あ。ああぁ!
くん、と。腕を引っ張られるような感覚にそちらを見て、ミウは心の中で声を上げた。
サラの袖、摘んだままだった、と。
つまり。
――サラ先輩を引っ張り回した!?
今の今まで引っ張られる感覚が無かったということは、サラもミウに合わせて動いていたとそういう事で。
子供か犬みたいにはしゃいでそれに付き合わせた、となるわけで。
カアアァ、とミウの顔がみるみる羞恥心で真っ赤に染まる。
サラの顔があらゆる意味で見られなくてミウはしばらく俯いたままだった。




