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嫌いな奴。

「今回の事は、教頭先生と校長先生が処理してくれるから、俺達は直接関わり合いにならなくてもいいらしいぞ。」

 俺は、朝早くから起きて作ってくれた澪の弁当を頬張りながら、今朝の校門での身だしなみのチェックの事について、澪に話していた。


「それなら良かったです。それもこれも全て兄さんのお陰です! ありがとうございます!」

 俺の席に向かい合うように座り、澪も弁当を口にしながら、今朝方の事について礼を言ってくる。

 澪はわざわざ自分の席からイスを持ってきて、俺と向かい合って座り、弁当を食べているのだ。


「ところで、澪は友達と一緒にお昼を食べなくてもいいのか?」


「私には兄さんがいるのに、何故わざわざ友達を作ってお昼を食べる必要があるのですか?」

 俺の問いかけに、全くもって理解できないといった顔をしながら首を傾げる澪。


「ぷふっ!」

 不意に笑い声が聞こえてくる。その笑い声の主は、隣の席で一人黙々とお昼ごはんを食べていた『坂崎つぐみ』さんだった。

 彼女はどうやら、俺達が校長先生と話していた時に、クラス役員を決める時間があったらしく、不運にも学級委員長に任命されてしまっていた様である。


「あっ、ご、ごめんなさい!湊君があまりに鈍感過ぎて……。」

 どうやら俺達のやり取りは、坂崎さんにも聞こえてしまっていたようだ。

 しかし、俺が鈍感とは失礼な。こう見えても気が利くんだ!


「坂崎さん、でしたよね。わかりますか、やはり。兄さんは鈍感であるにも関わらず、自分は鈍感ではない、なんて思ってるんです。 きっと今もそう思っているはずです。」

 あの澪が他の生徒とまともに意思疎通が出来といるとは……。じゃなくて、何で俺はディスられてるんだ?


ーーーーなんて思っていた、まさにその時。


「おい、コラ!地味子ちゃんが何調子くれて澪ちゃんと話してんの? 地味子ちゃんは地味子ちゃんらしく、黙って教室の隅で正座しながら飯食ってろよ。」

 コイツは確か、以前澪に塩対応食らってコテンパンに伸された奴じゃないか?

 確か、『高山真也たかやましんや』とか言ったはず。 何かムカつく物言いだな。


「ねぇ、さっきからうるさいんですけど。」

 俺が文句を言おうと立ち上がった瞬間、澪が高山を睨みつけ一喝する。


「地味子、地味子って、坂崎つぐみさんって名前があるんです。貴方は自己紹介の時にいなかったんですか? 『高山』の不快な声を聞きながら食べると、食欲が落ちますので黙食して頂けますか?」

 相変わらず容赦の無い言葉に、完全に戦意喪失した高山はトボトボ去って行く。何がしたかったんだろうか。他人の事を貶して、澪が振り向く訳ないのに……。


「あ、あの………澪さん!ありがとうございました!」

 坂崎さんはわざわざ席を立ち上がり、頭を下げてくる。余程嬉しかったのだろう。

「い、いえ、気になさらず。私はあの『高山』が大嫌いなだけですので。」

 澪はそう言い、プイッとそっぽを向き、不貞腐れたように弁当を食べだした。


「坂崎さん、気にしないで。澪は照れてるだけだから。」


「に、兄さん!?ち、違いますからね。」


「嫌われた訳ではなかったんですね、良かったです!」

 俺は慌てる澪を尻目に、喜んでいる坂崎さんを見て、もしかしたら澪と友達になれるかも、と淡い期待を抱いていた。


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