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ボイコット。

「兄さん、やはりここは梓の言う通り、全員で実行委員会を辞めて、先生方を困らせてやるのも一つの手かもしれませんね。」

 澪の一言から俺達全員の決意が固まった。俺たちばかりがシワ寄せを食らって、肝心の先生達が何もやらないんじゃ意味がない。


「そうだな、実行委員は解散だ。せっかくやる気を出してきたところだっていうのに、俺達の決意は何だったってんだ……。」

 俺たち実行委員は何もする事無く解散する事になった。何もする事ができなかった無力感、脱力、虚無感……。


 俺達はさておき、少なくとも体育祭を楽しみにしていた生徒達がいたはずだ。 


「兄さん、そんなに気に病まないでください。実行委員は出来る事が限られていますから。 しかし兄さんをこんなにも困らせるなんて、先生方を許す事は断じて出来ません!」


「そうだよ!お兄ちゃんをこれだけ困らせておいて、絶対にタダじゃ済ませないんだから!」

 まだ高校生でもない妹の梓でさえ怒っているのだ。実行委員や生徒達が怒らないわけがないだろう……。


「じゃあ、俺達はこっちだから。じゃあな!」

 他の実行委員達と途中で別れ、俺達はトボトボと四人で歩いていた。


「って、ちょっと待って下さい!なんで中野さんまで一緒に歩いてくるんですか!?」

 澪は今更ながら、一緒に下校してくる中野さんに気付いてツッコミを入れてくるが、中野さんはキョトンとしている。


「いえ、だって私の家は皆さんの家の先にありますから。多分、今まで知らなかったとは思いますが。」

 

「そっか。じゃあそこから先は一人になっちゃうのか……。中野さんさえよかったら、送ってくよ!」

 夜に女子高校生を一人で下校させるなんて、危険過ぎる!


「出た!兄さんのお得意、いらぬお節介!その行為で一体何人の女共が勘違いを起こしたか、ご存知ないでしょうね!?」


「何をそんなに怒ってるんだよ。ただ送ってくだけだろ?」


「はいはい、お兄ちゃんには到底理解出来ないでしょうね。 まぁ、確かに夜に女子高校生が一人ってのは、後で何かあった時に目覚めが悪くなるから、私達も付いていくよ。 どうせ私達が何か言ったところで、お兄ちゃんは聞かないだろうし。」

 ジト目で睨んでくる澪と梓。一体俺が何をしたって言うんだよ、全く。実行委員の件といい、ツイてないな……。


「ありがとう……ごめんね、樹山君。私のせいで迷惑掛けちゃって……。」

 

「いやいや、迷惑なんて事は無いよ。俺の方こそ、何か中野さんに迷惑掛けちゃってるかなって……。」


「な、そんな訳無いよ! 樹山君がいなかったら、私は今日の実行委員の件も今も……心細かったし、何より怖かったから……。 だから、樹山君がいてくれてとても心強いなって心の底から思ってるよ、ありがとう!」

 中野さんの心の声を実際に言葉で聞けた気がして、俺はとても救われた気がした。

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