ただじゃ済ませない。
俺達はあの後、競技種目や種目の順番などを取り決め、ある程度の計画は固まっていった。
近隣住民への体育祭の挨拶などで結構時間を食われてしまい、帰りの時間は夜7時を過ぎていた。
「みんな今日は集まってくれてありがとう。きっと俺達二人だけだったらまだ半分も済んでいなかっただろうな。」
俺の言葉に他クラスの実行委員達は『ハハハッ!』と軽く笑って見せてくれた。
「それにしてもムカつくぜ。俺たちはこんなに必死になってやってるってのに、あれから先生達の一人も来やしねぇ!」
実行委員のうち、一人の男子生徒が不満をあらわにし、それに同調するかのように他の実行委員たちも『そうだそうだ』と声を荒げる。
ーーーー確かに、あれからとっくに会議は終了しているはずだ。あれだけ忠告したというのに、一体何やってんだ……。
「おい、皆で職員室に行かねえか!?」
先ほどの男子生徒が先生達に一言物申したいらしく職員室へ行こうと言い出した。
「確かにこれは看過できる状況じゃないな。先生達がどこまで話を進めているのか見に行こう。」
俺達は体育祭についてどれだけ話が進んでいるのか、その進捗状況と一言物申す為に職員室へと向かうことになった。
ーーーー職員室。
「マジかよ…………。どうなってんだよ、こりゃ。」
俺達が目にしたのは誰もいなくなって、静まり返った暗い職員室だった。
「な、何で誰もいないんだよ……。」
確かに俺達はあの時、体育祭について話があると先生達に訴えかけたはずだ。それから会議をしたのであれば、その後は実行委員たちの集まる会議室に来ていたはず……少なくとも俺達はそう思っていた。
「何やっとるだん、あんた等は?」
不意に俺達の後ろから声をかけられ、俺達は全員大声を上げながら後ずさった。
「し、宿直の先生か…………。ビックリしたぁ……。」
そう俺たちに声をかけてくれたのは、今宿直を担当されている先生で、入学したばかりの俺達に、とても気さくに話しかけてくれる心優しい先生だ。
「もうとっくに下校の時間を過ぎとるに? どうしてこんな遅くまで学校におっただん?」
えらく訛りの効いた言葉遣いで、優しく話しかけてくれる先生だが、どうやら下校時間をとうに過ぎている俺達を見て、心配になって声をかけてくれたらしい。
俺たちは宿直の先生に今までの経緯を話すと、まるで自分の事かのように激怒して、先生達の内の一人に電話をしていた。
俺達は時間も時間ということで、宿直の先生に促される形で下校した。
「お兄ちゃん、遅かったね……一体何があったの?」
俺達の下校が遅かったのを心配した梓が、校門の前まで迎えに来てくれていたのだ。
俺は梓にも事情を話し、他のクラスの実行委員達と一緒に下校する事にした。
「お兄ちゃん、それって職務怠慢どころじゃないよ……。 だって先生達は、ロクに校舎の中を確認もせずに帰ったってことでしょ?ありえないよそんなの! まるでドラマの中の話みたい……。」
梓もとてつもなく憤慨しており、今回の実行委員は降りるべきだと提案をしてくれた。
ーーーー確かに先生達がやる気がないのに俺達、生徒ばかりやる気になって行動を起こしても、どうしようもないよな……。
「なぁ樹山、悪いけど妹ちゃんの言う通りだぜ。やっぱり俺は降りる。 正直やってらんねぇよ。」
他クラスの実行委員が俺にそう話しかけてくる。正直言うと、俺ももうやりたくない気持ちでいっぱいだった。
「兄さん、やはりここは梓の言う通り、全員で実行委員会を辞めて、先生方を困らせてやるのも一つの手かもしれませんね。」




