決意。
「それは樹山さんの妹さんからのお願いで来られたのですか? それとも、自分の意志で来られたのですか?」
これまでに無いほどの、冷え切った声で話しかける中野さんからは、『今更何の様だ』と言わんばかりの殺気が溢れ出ていた。
「そ、それは……。いや……。」
俺は澪に説得をお願いしたが、中野さんはあの時確かに首を縦に振ってはいなかった。
そりゃ、中野さんからしたら裏切られた気持ちになるだろうから仕方が無いな……。
「今回の騒動に関しては、私達というよりも先生の行動自体に問題があったと思います。 そのことに関してはあなた達も承知していたと思われますが。」
キッと他のクラスの実行委員達を睨みつけると、中野さんはさらに畳み掛けるように言い放つ。
「私達にも自分自身の生活というものがあります。 ですがそれでも実行委員になった以上、全力で行動をしていかなければなりません。 もちろん、先生方が今回このような事をしたことは言語道断だと思われますが、それならばまずは、何らかの行動を起こすべきだったと思います。 何もやらずにただただ先生たちが動かないからという理由だけで、『自分達はもう実行委員をやらなくていい』という考えはどうなのでしょうか。」
中野さんは次から次へと怒りのような言葉を他のクラスの実行委員達にぶつけていく。余程思うところがあったのだろう……。
「でもさぁ、普通考えてみろよ。先生達がやりたくもない体育祭を、俺達が自分達だけで考えてやれると思うか? てか、大体から先生達がやりたくないって、一体何なんだよ。 生徒達を馬鹿にしてるとしか思えねぇ!」
他クラスの実行委員の生徒のうち、一人が反発する。確かにこの男子生徒の言う通り、俺もそれは正直思った。
「よし、とりあえずは俺達だけで喧嘩してても始まらない。 俺達は俺達にできることをしよう。そこでだ、さっき俺と中野さんは先生達にあるアイデアを提案してきた。 とりあえずみんな座ってくれ。 今から皆にこの企画書を配る。これに目を通してほしい。」
俺の言葉と同時に生徒達は、会議室の椅子にそれぞれ腰掛ける。
「兄さん、皆さんの説得に手間取ってしまい、申し訳ございませんでした。 それで先生方の説得は……?」
澪が息を切らしながら会議室へと入ってくる。余程動き回ってくれたのだろう……。
「大変な思いをさせてしまってすまなかった。 先生達は話をしてある。そこの椅子に腰掛けてくれ。」
俺達はここまで動かされて来たんだ。教師達には、それなりの動きをしてもらうぞ……。




