体育祭に向けて。
入学してから1ヶ月ほど経った頃から、澪をつけ狙ったストーカーがいた。 俺は残念ながら、そのストーカーの存在には気付く事ができず、最終的に様子のおかしい事で、ストーカーがいる事が把握できた。
ストーカーの正体は、この学校の教師。 自宅に侵入しようとしているところを、澪が庭から顔を見ていたという事だ。
俺は澪が咄嗟に撮影したという動画を警察に提出し、ストーカー規制法というよりは住居侵入という形で捕まったようだ。
「さすがストーカーだな。家の合鍵まで持っているとは思わなかったよ。」
「兄さん、感心している場合ではありませんよ!? また家の中に入られるのではないかと私は不安で仕方がないです……。」
確かに澪の言う通り、家には澪と梓という可愛い妹がいる。
「確かに危険だな。家の鍵は全て付け替えよう。そして監視カメラもセットする事にしようか。」
「さ、さすがにそこまでは……。」
澪はさすがにちょっとやり過ぎだと言ってくるが、いつまた新たなストーカーが現れるか分からないしな……現れない事を祈るが。
教師のストーカー事件後、学校側からの謝罪があって大変だったが、なんとか鍵を付け替える事は完了した。
「樹山君、聞いたよ!大変だったみたいだね。」
中間テストも終わりやっとこさ日常が戻ってきたある日、俺の席へ栗山さんがやってくる。
「私はストーカーの男は山田だと思ったんだけどなぁ……。」
そうぽつりと呟く栗山さんの言葉を、どうやら山田くんは聞き逃していなかったようで……。
「ぼ、僕は確かに、樹山さんの家に行ったけど…………そんな事するわけないだろう!?」
栗山さんにものすごい剣幕で山田くんが食ってかかる。まあ正直、その気持ちはわからんでもない……。
「ごめんごめん、山田っち!冗談、冗談だって!」
必死で弁明する栗山さんだが正直冗談にしてはタチが悪い。しかし、山田君を擁護しなかった俺も同罪っちゃ同罪だが。
「あ、ほら、来月って、体育祭があるじゃん!? 樹山君は何かするとか決めてあるの?」
無理やり話を捻じ曲げてくる栗山さんだが、確かに来月の6月には体育祭がある。
しかし当クラスの担任は、その事に対してやる気があるのか無いのか、全く話題に出てこないのだ。
「今のところは特に決めてないな。それにクラスの担任はやる気がないのか分かんないけど全然体育祭の話をしてこないよな。」
「そ、その事なんだけどね……。私が実行委員を決める事になったんだ。」
俺達の会話を丁度通りかかった坂崎さんが聞いていたらしく、会話に入って来たのだった。




