ギャルの本気。
「やほー、山田っちじゃん!」
「く、栗山さんがなんで樹山君の家にいるんだい!?」
慌てた様にそっぽを向く山田君。インターホン越しなのに……。
「いや〜、私さ、澪ちゃんから相談事されててさ、何でも『告白を断ったのに、しつこく迫られて困ってる』とか。サイテーだと思わない!?」
「は、はぁ!?だ、誰だそんな酷い事をしている奴は!? 告白を断られたならとっとと引っ込めよ!」
山田君は自分の事だとは気付かずに、『告白してきた奴』を罵り始めた。
「山田っちもそう思うよね!思うよね!」
「勿論だよ、誰だソイツは!?」
インターホン越しの山田君の馬鹿でかい声に、俺達は呆れてしまう。
「オメーだよ。なに彼氏気取りになって『誰だソイツは』だよ。オメーが告った後にあっさりフラレたの、もう忘れたのかよ!? 告白してフラれたなら引っ込むのはオメーなんだよ!! 調子のってんじゃねぇぞ、ド陰キャが!」
白熱してしまった栗山さんは通話ボタンを押しながら、山田君に罵詈雑言を浴びせている。多分、コレでも彼女なりに言葉を選んでいるのだろう……多分。
ーーーーーー。
あの栗山さんの発言からすぐ、山田君は無言のまま去って行ってしまったのだが、その後振り返った栗山さんは、何事も無かったかの様に『さぁ、勉強しよ〜!』と二階へと上がって行ってしまった。
俺達はあまりの栗山さんの変貌っぷりに開いた口が塞がらなかった。
栗山さんはギャルである。そして勉強が嫌いな美少女である。ちょっとヤンキーぽいところもある彼女は、怒ると口が悪くなってしまうようだが、実は友達思いで、エンジンさえかかれば勉強熱心でもある、という事がわかった。
「栗山さんがまさかあんなにハッキリと言うタイプだとは思いませんでした!凄いです!」
澪はバシッと、思っていた事をハッキリ伝えた栗山さんを称賛していた。
「ありがと〜!でも、真似しないようにしてね!」
栗山さんは今回の件で、澪と梓の心をガッシリと掴んだようだな。
「って事でさ、中間テスト終わったら、私と一緒にショッピングに行こっ!」
「ちょ、ちょ、ちょちょちょい! 何勝手にデートの予約してんですか!? お兄ちゃんとは、私と行くという『先約』がありますので!」
いやいや、ない。そんな約束は一つもしてないぞ、梓よ。
「いいえ。兄さんとは私が一緒に行く事に決まっておりますので、お二方共に諦めてください。」
澪まで何をアホな事を言っているんだ……。大体から、こんな分かりやすい冗談に乗るなんて、澪も余程勉強が飽きたんだな……。
「ってか私と樹山君、実はもうデートの約束してるんだよね!ね、ね!?そ・う・だ・よ・ね!?」
栗山さんの目が笑っていない。俺はその眼力に見事に敗北を喫し、気が付けば首が折れそうな程に、首を縦に振っていた。




