平和。
あれからというものクラスの中の雰囲気は、どんどん良くなっていく一方だった。
今ではすっかり坂崎さんは笑顔を取り戻し、毎日楽しそうに学校へ通っている。
坂崎さんと栗山さんは和解したらしく、とはいっても、元々栗山さんは坂崎さんとは敵対していたわけではない為、すぐに仲直りができたらしい。
「兄さん、あれからクラスの中が明るくなりましたね!」
「そうだな。この様子を見てみると、あの四人組は裏で結構ワルをやっていたみたいだな。」
これは生徒指導の先生や担任の先生が取り調べを行ってから気付いた事だが、他の四人は他にもグループメッセージをいくつか作っていたらしく、脅迫まがいの行為をしたり、無視したりと結構ひどい事をやっていたらしい。
「とはいえもう5月だぞ、中間テストが始まる頃だ。てかいつだったっけ?」
「兄さんは頭が良くていいですね……。本当は頭いいのに隠すなんて勿体無いのに。」
自分で言うのも変な話だが、澪の言うとおり、俺は本当は頭がいい。 ついでに言ってしまうと運動神経もいい。
だが、色々と面倒事は避けたいので、わざと出来ないフリをしているというわけだ。
ーーーーだが勉強が出来ない、運動が出来ないという事をネタに、今度はいじめられるんだよな。
まあ俺としては、勉強が出来たり、運動が出来たりして、変な係を任せられるよりもいじめられていた方が、ずっと楽でいいんだよなぁ。
「まぁ、今回も可もなく不可もなくって感じでやっておくよ。」
「いい加減に兄さんも、本気を出した方がいいんじゃないですか? たぶん先生は気付いていると思いますよ?」
澪はそう言うと自分の席へと戻っていった。
「何、樹山君は本当は勉強できるの!?」
隣の席に座っていた栗山さんが、どうやら俺たちの話し声を聞いていたらしく、いきなり食いついてきた。
「ま、まあ出来るっちゃ、出来るけど……。」
「だったらさ、私に勉強を教えてくれない!? 中学の時とかさ、成績壊滅的だったんだよね……。 中間テストで赤点とったり、期末テストで赤点とったりなんかしたら……ゲームも漫画も没収されちゃうよ!」
重要なのはそこか?と思いつつも、俺も勉強で苦労した時期があったから、他人事のようには思えなかった。
「う〜ん、澪と梓がいいって言うなら、いいけど……。」
「わかった、なんとか説得してみせるよ!」
そう言って早速栗山さんは澪のもとに走って行ってしまった……。
ーーーーしばらくの後、澪の冷たい視線が俺に浴びせられる事になるのは言うまでもない。




