見舞い。
俺と澪、そして帰り道待ち合わせで集まった梓は、3人揃って先日を仕掛けた坂崎さんの家に着ていた。
「お待たせ致しました!どうぞお上がりになって! まあ二人ともすごい綺麗ね、女優さんかモデルさんみたい!」
玄関で出迎えてくれた方は、坂崎さんのお母さんらしい。
気さくで明るくてとても話しやすい人だ。
「ちょ、ちょちょちょ! お母さんは下がってて、私の部屋に行こう!?」
バタバタと2階から降りてきた坂崎さんは、パジャマ姿で俺達の前に姿を現すと、俺と昔馴染みである梓の手を引いていく。
澪は俺達の代わりにぺこりと頭を下げると、後ろからパタパタと小犬の様についてくる。
「お母さんがごめんね、いつもあんな感じでテンション高くて困っちゃうよ……。」
坂崎さんは、登校していた頃よりもなんか顔色が良さそうに思える。
「気のせいかな……。」
俺はついついポロリと思っていた事を口にしてしまっていた。
「兄さん、何かあったんですか?」
「いや、坂崎さんが学校に登校していた時よりも、顔色が良さそうだなと思って……。」
俺の言葉に、パァッと顔を明るくする坂崎さん。
「ほ、本当に!?じ、実は私もそう思ってたんだ。」
「何かが負担になってたとか……ですか?」
妹の澪の言葉に坂崎さんは重たそうな口を開く。
「私実はすごく人見知りなんだ……。念願だった樹山君の隣に座れてとっても嬉しかった……。だけどそんな幸せは長くは続かなくて、嫉妬からか私を間接的に攻撃する生徒達がいたの……。」
聞いてるこっちまで胸が痛くなるような話だ。
「だから私は『これ以上私をいじめるなら、樹山君に録音していた音声を聞かせる』と脅して、半ば強制的にあのグループメッセージのメンバーに入れて、私が樹山君と仲がいい事を理由に、上位に立つことでいじめはなくなったの。」
「じ、じゃあ………そのいじめっ子って……。」
「そう。あの5人組の内、栗山さんを抜いた4人よ。」
その後の坂崎さんのイジメの告白はとてつもなく筆舌しがたいものだった。
ーーーーその後、録音音声を聞いた俺達は、いてもたってもいられなくなり、坂崎さんから録音した音声を貸してもらうと、学校に駆け込んだ。
「これはとんでもない内容ね……。酷過ぎて聴いてられないわ……。」
校長先生、教頭先生、生活指導の先生も担任の先生も、校長室に集まった全員がその場で耳を塞ぎたくなるような内容の詰まった録音機がテーブルの上に置かれていた。
その録音機から発せられる、罵声やいじめの行為等が全て録音されていた。
「俺も信じたくはありませんが、間違いなくこれは中山さん達の声です。」
「兄さんの言う通りです。中学時代、坂崎さんは元々はとても優しくておとなしい性格の持ち主です。それがある日を境にきつい性格へと変貌を遂げてしまって、私は正直どうしていいのか分かりませんでした。 でもこの音声データを聞いてやっと理解する事ができました。坂崎さんはただ怖かっただけです。だから虚勢を張り、強く見せる事で少しでも今の生活から脱却したかったんだと思います。」
「なかなかに難しくてセンシティブな問題よね……。明日、生活指導の先生と担任の先生とで、この四人から聞き取り調査を実施してちょうだい。それとは別に栗山さんからも個別に話を聞きたいわ。」
俺は正直ここまで妹達が動いてくれるなんて思ってもみなかった……。
ーーーーしかしあの四人、許せねぇ。




