意外と友達想い。
俺の妹達は基本的には男女問わず塩対応である。だが、友達思いでもある彼女達は、普段は塩対応ながらも、友達が困っていて救いの手を差し伸べている時は、それはたとえ自分達の為にならない事であっても、全力で助けようとする。そういう妹達なのだ。
「坂崎さんからメッセージがやっと来た!」
俺と澪、梓は3人揃ってスマホを覗き込む。
『ということは、皆さんの中では私が引っ越す事になっていたという事ですか?』
坂崎さんの言うように、俺たちの中では坂崎さんが引っ越すという認識をしていた。
でもそれはあくまで、俺達とやり取りをしていくうちに、俺達との仲が悪くなっていき、『これ以上学校にいられなくなったのでは』と言う俺達の勝手な憶測に過ぎなかった。
俺達は、坂崎さんがどんどん性格が荒くなっていったのは、『俺を誰かに取られるのでは』という焦燥感よりは、『いっその事嫌われてこのまま学校から去っていくのが一番いい選択肢なのでは』と考えている事を恐れていた。
俺たちはそのままの思いの丈をメッセージに込めて坂崎さんにぶつけた。
『お兄ちゃんを取られるのはそれは腹が立つけどでも全力で向かって来てくれる方のが嬉しい。だけどやっぱり、昔のような優しい坂崎さんの方が私は好きだな。』
『兄さんから坂崎さんの事はちょくちょく聞いております。私自身、同じクラスでありながら坂崎さんと話す事は滅多にありません。 ですから正直、グループメッセージのような坂崎さんと、いつもの教室で優しくおとなしい坂崎さんとのイメージが、全く合致しませんでした。 急に変わるのは無理かもしれませんし、そしてどちらが本当の坂崎さんかも分かりませんが、私は優しくておとなしい坂崎さんの方が好きです。』
『坂崎さん、俺達同様他のグループメンバーも、坂崎さんがいつも通り楽しく暮らせることを願っています。澪の言う様に、どちらが本当の坂崎さんか分かりませんが、俺もいつもの教室の坂崎さんの方が好きです。 俺にもばれちゃいましたし、グループメッセージ……やめちゃいませんか?』
俺達からは、どんな心でどんな言葉をかければ良かったのだろう。……ずっと考えていたけれど、最終的には思った事を書くのが一番だとそう感じたんだ。
俺のたぬき親父はいつも言っていた。『人の心を理解るようになってやれ。だけど決して自分の心を隠すんじゃねぇ』
ーーーー俺達の言葉は坂崎さんにどう伝わったのだろうか。その日、坂崎さんからメッセージは無かった。




