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事情。

「俺から昔の事を話せって……?そりゃ無理だ。」

 正直俺は覚えていない事を覚えていたかのように話す事はできない。

 ただ単に話すのが苦手とかいうわけではなく、その行為は結果として相手を傷つけるだけなのだから……。


「では、どう致しましょうか……。いくら塩対応姉妹と言われている私達でも、私はクラスメイト、そして妹は昔馴染みの女友達ですから、話は別です。」


「そうそう、私達だってそこまで心が狭いわけじゃないんだよ。」


 もちろん俺だって、梓や澪がそこまで冷徹な人間だとは思っていない。 しかし5人組とも連絡を取っておらず、梓や澪とも連絡を取っていないとなると、どうやったら連絡を取り付ける事が出来るのか、その手段がわからない。


「何だ、お前ら。そんな事で悩んでたのか。」

 声の主は思いがけない人物だった……。俺の父親だ。


「話の内容が大体わかったよ。実は俺の会社と、坂崎さんのお父さんが繋がりがあってな。 実は坂崎さん、引っ越すらしいんだ……。それで娘さんが落ち込んでた時に、お前達のその話があって、さらに追い打ちがかかったってことだ。」


「でもお父様、そんな話一度も坂崎さんからは……。」


「そりゃ言いにくいだろうなぁ。大切に思っていたクラスメイト、友達、初恋の人、そしてその妹であり昔馴染み。誰にも言えなかったと思うよ。」

 確かに父さんの言う通りだ。 多分、俺も自分が引っ越すってなったら、なかなか言うのに勇気がいると思う。


「父さん。坂崎さんのいる場所、教えてくれない?」

 俺の言葉に父さんは静かに頷いた。

「さっきよりも随分といい目になったじゃねえか。ウジウジ考える暇があったら、動いてこい!」

 まるで俺たちの言葉を全て聞いていたかのようにそう言うと、父親はまるで俺を鼓舞するかのように背中を強く叩いた。


「行ってくるよ、父さん。」

 俺は、父さんが走り書きで書いてくれた住所を目当てに、外に飛び出した。


「待ってください、兄さん! 私達も一緒に行きます!」

 後ろから澪と梓が追いかけてくる。彼女達も彼女達なりに責任を感じ、そして何より坂崎さんを思って行動をしているのだろう。


 お父さんの仕事の関係上引っ越す事になったとはいえ、彼女自身複雑な心境に悩まされていたに違いない。

 だがこのまま彼女が言わなければ、彼女の事をよく思っていないクラスメイト達が陰口を叩くかもしれない。

 俺達も勝手に憶測で動いていた人間だ。他人事ではなかった。


ーーーー彼女はもしかしたら、以前から父親の仕事の関係上転校するかもしれない事を、予測していたのかもしれない。



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