妹が言うには。
「ま、まさか……俺が何かしてしまったとか!?」
「い、いえ………そうではなくて、彼女自身も自覚がなかったので、最終的には私が判断致しましたが、彼女は『ヤンデレ』だったんです!!」
な、なんだってーーーー!? じゃなくて、普通に考えてあり得ないだろう……。
「そんなアニメや漫画の中での様な話、信じられないんだけど……。」
唐突すぎるというか、なんだこの展開。ヤンデレだから栗山さん達を攻撃してたって事?
「まぁ、正確には『ヤンデレになってしまった』と言うのが正解ですけど……。」
「お兄ちゃんの事が好きなのは、坂崎さん自身だけだと思っていたら、次々に好きな人が出てきてしまって、妹達までもが好きってなったから、坂崎さんは焦りだして最終的に『誰にも渡さない』っていう感情に飲み込まれちゃったって訳。」
梓の言葉に、俺はついつい『なるほど』と感心してしまったが、よくよく考えたら感心している場合じゃなかった。
「じゃあ、俺は今結構ヤバくない!?」
俺は何だかんだで恋愛もののアニメや漫画を沢山読んだり観たりしていたから、ヤンデレのヤバさは分かる。
ただ、身近に存在しているとは……。
「大丈夫ですよ。まだ坂崎さんは自分自身を振り返る事ができるくらいは感情が呑み込まれていませんでしたから。」
「もし何かあっても、お兄ちゃんには指一本触れさせないから、大丈夫!」
この妹達が言う事には凄まじい説得力がある。 ただ坂崎さんがヤンデレ化していたのは、ちょっとショックだったな……。
ヤンデレ自体が嫌いというわけではなくて、そうさせる原因を作ってしまったのが俺にあるという事がショックなのだ。
「お兄ちゃん、私……あれから何回か坂崎さんに連絡を取ってみたんだけど、応答がないんだ。」
「実は私にもないんです。他の皆さんにも聞いてみたんですけれども、一切連絡が無いらしくて……。」
「とりあえず、明日学校だからその時に聞いてみよう。」
「学校に来るといいのですが……。」
「こんなフラれ方をしちゃったら、私だったら行きたくないなぁ……。」
うっ、た、確かにこんな公開処刑みたいなやり方で坂崎さんをフッておいて、翌日学校に来ることを前提に話していたなんて……なんてバカだ俺は……。
「本当は教えたくなかったんだけど、このまま坂崎さんが登校して来なかったら後味悪いし……。」
梓が嫌々ながらに、そうポツリと呟いた。
「前にも聞いているかもしれないけれど、お兄ちゃんは昔、坂崎さんと会ってるんだよ。その事をメッセージで伝えてみるってのが一つの手かもしれない。 敵に塩を送るみたいで本当は嫌だけど……。」




