栗山さんは告りたい。その2
「ちょ、ちょっと待って!! き、着替えるって、いきなりどうしたの!?」
あたふたとする栗山さんだが、俺は至って真面目である。彼女が今の姿に少しでも不安に感じているのなら、そんな格好を無理強いさせるべきではないと思ったからだ。
「いや、さっきの話からすると、その格好は栗山さんに無理強いさせてると思ったんだ。だから、俺は自然体な栗山さんの方がいいかなって、そう思ったんだよ。」
俺はありのままの気持ちを、栗山さんに伝えた。彼女がどうして好きな格好でもないコーディネートをしたのか、それはわからないけど、でも……無理している気がした。
「馬鹿だね……樹山君は。私は、樹山君の前では……自然体だよ。」
少し俯きながら、栗山さんは小声でぽつりぽつりと呟いていた。
もしそうだとしたら……俺は凄まじく失礼で、恥ずかしい勘違いをしていたのか!?
「ご、ごめんなさい!この部屋で気付くべきだった!本当にごめんなさい!」
俺は床に頭を擦りつけながら謝罪する。一歩間違えば、いや、間違えてなくても完全にセクハラだ!
「あ〜あ、私は別の事を期待して、メチャクチャ緊張しながら部屋の中に入れたのにさ……。まさか、こ〜んな事で連れて来られたなんて。」
うわ〜!栗山さんめちゃくちゃ怒ってる……って、無理もないよな……。
「本当に、本当にごめんなさい!何でもしますから、許してください!」
「何でもしてくれるの?」
「今月はお小遣いとかあまりないから高い物とかは買えないけど、出来る事はするから!」
「ふーん……………。ぷっ、ははははははっ!」
何やらしばらく考えていたような様子を見せた栗山さんだったが、何が面白かったのか、急にお腹を抱えて笑い出した。
「じゃあ、さっきの続きしよっか。デートの続き!」
栗山さんはニッコリと微笑むと、床にひれ伏す俺に手を差し出してくる。
「で、デート!? それにさっきの続きって一体……。」
「デートはデート。さっきの続きは、さっきの続きだよ。樹山君はまだ思ってないかも知れないけど、私こういう、いかにも『女の子』みたいな服装が好きなんだ。 私は中山さんみたいなサバサバした性格で、普段はギャルで通してるから、周りからはこういう格好は似合わないって言われてるんだけど、部屋の中を見てもらえばわかるように『ザ・女の子』って物が好きなんだ。」
栗山さんの『好き』は本当に好きで、話している言葉や雰囲気からもわかる。もっと周りを観察したり、言葉の端々から伝わってくる真意を見極めなければならなかったというのに……。
「だから乙女の気持ちを理解していなかった樹山君には罰ゲーム! 今からさっきの続き、デートをしてもらいます!」




