兄さんチラ見ランキング。
「ところで先ほどの私の『兄さんの顔チラ見ランキング』の結果の話ですが、兄さん恋愛マスターの私としては、数に狂いは無かったと思うのですが、いかがでしょうか。」
澪はさっきのランキングを持ち出してきてみんなに話しかける。 皆は何やら俯いてしまっている様だが、澪の気迫のせいだろう。
「恋愛マスターってお前、今までに1回も彼氏できたことないじゃないか。」
「私は言いましたよ。兄さん恋愛マスターだと。」
なんだそりゃ、意味が分からん……。兄さんチラ見ランキングといい、兄さん恋愛マスターといい……。
いつもいつも、澪のやる事は、なんの脈絡も無いというか突拍子も無いというか……。
「お兄ちゃんは分からなくても当然というか、気付く訳無いというか……。とにかく、お兄ちゃんはこの五人ともからチラチラと見られてたって事!」
その言葉に反応したのか、五人の視線は明後日の方向へと向けられる。それが何を意味しているのか、流石に鈍感な俺にも解った。
「確かに、この図書館でお兄ちゃんと出会ったのは偶然だろうけど、空いていた席にお兄ちゃんを座らせたのは……必然だよね?」
5人の事をジロリと睨んでいる梓だったが、遂にとある女子生徒が口を開く。
「確かにウチら5人は樹山君を呼んだよ。勿論、下心もあったけどさ。それとこれとは妹ちゃんには関係なくない?」
梓に噛み付いたのは予想外の人物。その人物とは、始終眠っていた栗山さんだった。
「は?お兄ちゃんの妹なんだから、お兄ちゃんに悪い虫が付かないようにするのは当然の事じゃない!?」
「ウチらから見たら、あんたたち姉妹の方がよっぽど悪い虫に見えるけどね。」
「何ですって!?アンタ、お兄ちゃんと同じ歳だからって調子こいてんじゃないわよ!?」
掴みかかって取っ組み合いをし始めた梓と栗山さんを、残りのメンバーでやっとこさ引き剥がす。
「梓、落ち着け!新学期早々に、お前何やってんだよ!」
俺の一喝もあってか、梓はシュンッと一気にしおらしくなっていった。
「確かに澪さんの言う通り、ウチは樹山君の事、寝てるフリしながらチラチラと見てたよ。他のみんなのことは知らないけど。」
栗山さんは、どうやら本当に寝ていたわけではなく、寝ていたフリをしながら俺の事をチラチラと見ていたらしい。
「それに他の四人もチラ見してたなんてな。中っちはともかく、他の三人も樹山君狙いだったって訳ね。」
「栗山さん、勘違いしないでほしいのですが、兄さんはあくまで私の婚約者です。勝手に恋のライバル扱いしないでいただけますか?」
「はぁ!?誰が勝手に、お兄ちゃんはお姉ちゃんの婚約者だなんて決めたのよ!? お兄ちゃんの婚約者は私に決まってるでしょ!?」
またしても、日頃から行われている妹達の醜い争いが始まるのだった。




