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遅かった。

 結論から先に言おう。俺は高校一年生の体力テストで好成績を残した。

 これはマグレでもなんでもない、実力から来たものだ。


「おいおい、樹山がそんなに運動できるヤツなんて知らなかったぞ……。」

 クラスメイトの安永は俺とパートナーになり、互いの体力測定を行った。

 結果、俺は高校一年生の平均値を遥かに上回る数値を叩き出した。


「凄いな、樹山!この成績なら、どこの運動部でも通用するんじゃないか!?」 

 体育教師の先生も舌を巻くほどの成績を出した俺は、絶賛される事になったが、驚いていたのは教師だけではなかった。


「樹山君って、普段はそんなに目立つタイプじゃないのに、実は運動神経抜群なんて、めちゃくちゃカッコよくない!?」


「そうそう、ちょっと運動神経が良いからって自慢しちゃう男子よりも、運動が出来るけどそれを敢えて言わない樹山君の方が、カッコいいよねー!」

 クラスメイトの女子達は、男子達に向けてわざと聞こえるように大声で話す。


ーーーー頼むから女子達、余計な事しないでくれ!


 これは下手したら、澪が見たら怒り狂うかもしれない……。

 実は以前にも似たような事があったのだ。中学時代にも体力テストというものはあり、そこで好成績を残した俺はクラスメイトの女子達からチヤホヤされることになった。

 それを見ていた澪は大激怒し、家に帰ってから一週間もの間、目すら合わせてもらえず、ずっと無視を貫かれた。


ーーーーだから俺はそれ以降、自分自身にセーブをかけることにし、必要最低限に済ませることにしたのだ。


「せ、先生!すみません、ちょっとお手洗いに!」

 俺は体育の先生にそう告げると、猛ダッシュで体育館を去り、教室に駆け込むとバッグの中からスマホを取り出した。


 今の内に事情を説明すれば、まだ何とかなるはず!

 澪自身も、今回の体力テストでは全力で行って来いと応援していたくらいだし。


ーーーーそう思い、スマホの画面を映し出した瞬間、俺の目に飛び込んできたものは……。


『兄さん、やっぱり実力は出しては駄目です!程々でお願いします!』

 澪からはそう送られてきていた。送信時間を見ると、澪から応援メッセージを受け取った直後の時間だった。


 やっちまったー!最後の最後にもう一度だけ、メールを確認しておけばよかった!

 そもそも澪が、俺の実力を女子達が見ている前で、見せつけたがる訳が無いんだ!


 やっぱり澪はこうなる事を予想していたんだ……。しかしもう遅い、俺の実力は見せてしまった後だ……。


「澪に何て言おうか…………。」

 俺は体力テスト云々よりも、この後の澪の対応の事ばかりが気になってしまっていた。

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