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姉妹の本気。

「兄さん、もしかして坂崎さんと一緒に出掛けていたんですか?」

 愕然とする澪だが、強烈な間違いをしている。俺と坂崎さんが出会ったのは、コンビニでだ。


「澪、梓。店の人にも、お客さんにも迷惑だから、取り敢えず外に出て話をしよう。じゃあ坂崎さん、またね!」

 俺は坂崎さんに軽く挨拶をすると、二人を連れてコンビニの外に出ると、そのまま近くの公園に向かった。


 公園に着くなり、澪も梓も一直線にブランコに向かって行く。小さな頃に何度も訪れた事のある馴染みの公園だ。

 澪と梓は、キィキィッと金属が軋む音を響かせながら、ブランコを漕いでいる。

 このブランコもそうだ、俺が二人の背中を押して漕いだブランコ。

 澪も梓も、二人揃って俺に『押して押して!』ってせがんで来たっけ。もう既に乗れたくせにな。


「お前ら、こんな所にまで探しに来るなよ……。」

 半ば呆れ顔で俺がそう言うと、ブランコを漕ぎながら間髪入れず澪が言い放つ。

「ああいう事をするから、ですよ!」

 澪の言うああいう事とは勿論、『坂崎さんと俺が一緒にコンビニにいた』という事である。


「お兄ちゃん、まさか……坂崎さんの事が好きなの?」

「はぁ!?な、何だよそれ!無い無い!」

 梓の思わぬ問いかけにより、俺は必死に否定する。俺が坂崎さんの事を好きなんて、まだ知り合って間もない(坂崎さんと梓曰く昔会ってるらしいが)のに、好きになるのは……。


「嘘はついてない、と。では、本当にたまたま偶然、コンビニで出くわした事に違いなさそうですね。」

 何だよ、澪は心の中でも読めるのか?それとも、表情や話し方から相手が嘘をついているか、そうでないかが分かるとか……。

 いやいや、普通に考えてどれも普通に怖いから!


「取り敢えずバッタリ出会っただけならそれでいいや!……お兄ちゃん、背中押して押して!」

 どこかホッとした様な表情を浮かべ、梓は小さな頃の様にブランコを漕いでいる自分の背中を『押してくれ』とせがんでくる。


「梓!? わ、私もお願いします!兄さん!」

 今度は澪も梓と同じく、背中を押してくれと頼んできた。二人共、もう充分漕げる年なんだから、自分でしろ。

 とは言えるはずもなく…………。


「お兄ちゃん、もっと、もっとしてーー!」

「わ、私もお願いします!梓ばかりズルいです!」

 その言い方だと他の人にも誤解されるから、もう少し抑え気味でお願いします……。


ーーーー。


「久しぶりに公園で遊んだね!お姉ちゃんがはしゃいでるの、久しぶりに見た気がする。」

「そ、そうかしら……。私とした事が……不覚。」

 

 俺達はすっかり日が暮れて真っ暗になった夜道をゆっくりと歩いていた。歩道沿いに植えられた桜の木々。今年は例年よりも少しばかり寒いせいもあってか、桜の花びらはキレイに咲き誇り、夜道を照らす街路灯に、桜の花は更に美しく輝いていた。


「兄さん、私は誰にも兄さんは渡しません。」

「私だってお兄ちゃんは渡さないんだからね!」

 どこまで本気で言っているのか分からないその言葉に、俺は『あー、はいはい。』といつもの様に軽く受け流していたのだった。

 


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