ブラコン妹。
「兄さん、今日から同じ高校ですね、宜しくお願いします!」
元気に挨拶をしてくる彼女は、『樹山澪』高校一年生。
堤防沿いに咲き乱れる桜も霞んで見えるような美貌を持つ澪は同い年の妹だ。
妹とはいっても、実のところ血は繋がっておらず、親の再婚で出来た義妹である。
因みに俺の名前は『樹山湊』妹と同じく高校一年生だ。
義妹とは同い年だが、『一応』兄扱いではあるものの、妹に何一つ勝る所が無いのが悩みの種である。
だが、そんな妹も何故か俺には凄く懐いてくれており、本当に俺に似ず(当たり前だが)成績優秀、容姿端麗でとても良く出来た妹である。
「おぉ、今日から宜しくな!制服、似合ってる!」
女子生徒は全学年白のワンピースタイプの制服で、リボンは男子生徒と同じ配色になっており、一年生は赤色、二年生は緑色、三年生は青色。
胸元には校章のエンブレムがあしらわれており、胸元から腰の辺りまでに、2列ボタン(合計12個)が付けられている。
スカート部分、裾の少し上部分に黒い横一線のラインがワンポイントとしていれられている。
因みにスクールバッグは自由制。
「兄さんもすっっごく良く似合っています!」
妹の澪はそう言ってはくれるが、実のところ男子生徒の制服は地味で、ブラウンのブレザーに胸元には校章のエンブレム。そして白のワイシャツ、一年生は赤色、二年生は緑色、三年生は青色のネクタイ。
アッシュグリーンのパンツに黒の革靴。
ーーーー地味だろ?まぁ、いいけどさ。
今日はそんな俺達の華々しい入学式である。だが、俺は素直には喜べなかった。
何故なら妹の学力ならば、もっと遥か上の高校を狙えたのに、わざわざ『中の下』程の俺が通うつもりだった高校に入学してきたのだ。
ーーーーその理由は唯一つ。
俺と一緒の学校に入学し、一緒に学園生活を送る為である。いや、自意識過剰とかではなく、『本気』である。
そう、義妹の澪は極度のブラコンであり、わざわざ俺が通おうとしていたありきたりな高校に入学したのだ。
「これで兄さんと少しでも長い間一緒にいられる事が出来ます!」
ありきたりな高校でありきたりな入学式を終えた澪はキラッと光る笑顔を俺に向けてくる。
澪は先にも言ったが、成績優秀で容姿端麗。茶髪(地毛)のロングヘアーをシニヨンアレンジしており、結目に白い大きなリボンを着けている。
高校一年生とは思えない程に大人びており、切れ長の瞳にツヤツヤの唇、透き通る様な白い肌をしている。
身長は俺よりちょっと小さめだから170センチ位だろう。とにかく脚がスラッとしていて長く、顔が小顔だからモデルに間違えられる事もあるらしい。
「兄さん、同じクラスですね!今日から一緒に帰れますね!私は嬉しすぎて死んでしまいそうです!」
そう言い残し、クルクルと踊りながら、澪は一足先にクラスに戻っていった。
一体俺の何がいいのか、全くもって理解できないが……。入学式が終わって、あとはホームルームをやっておしまい。
俺も続いて教室に戻り、自分の席に着く。俺の席は窓側の最後列。今年一年は席替えが無いみたいだから有り難い。
俺みたいな陰キャボッチはこの席がお似合いだな。
俺の隣の席の子も、大人しそうな女の子だし、このまま一年無事に終わってくれたらそれでいい。
とにかく俺は目立ちたくない。何事もなく一年が終わる事だけをただひたすらに祈るだけだ。
だが、そんな俺のささやかな願いはことごとく打ち砕かれる事になるのだった。
「では、明日からは平常通りの授業になるからな。」
ちゃっちゃと終礼を済ませて、担任の先生が教室を出ていくと、俺はさっさと帰り支度をする。今日から澪と一緒に帰るって約束をしていたな。
ーーーーそんな事を考えていた時だった。
「兄さん、隣の席でないのは残念ですが、一緒のクラスで私は幸せです!では早速ですが、一緒に帰りましょう!」
俺の席とは離れており、澪は俺と対角線上の廊下側の最前列。そんな澪がわざわざ呼び掛けてくるのだ。
男子生徒がざわつかないはずが無いのだ。