1、2日間だけ俺TUEEE−いち−
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そういえばバイトだった。
動くのも億劫なトド状態だった俺を動かしたのはバイトという3文字が頭をよぎったからからだった。
俺は1年前に高校を辞めている。
理由は多々ある、が、割愛することにしよう。
そして晴れてフリーターぷー太郎伝説が幕を開けたわけだ。
学歴?何それ食えるの?状態に陥っていた俺は危機感なんてまったくなかった。
どうせこの田舎で一生を過ごして朽ちていくのだろうと思っていたからだ。
田舎というぐらいだから、俺の地域は村だ。
広義でいうと郡なんだが考えても考えても村だから村でいいや。
俺のバイト先はそんな小さな村の小さなホテルというか旅館というかの洗い場と布団敷きだ。
外観だけ見たらどこをどう見てもホテルなんだろうけど(プールもついてるし)部屋は和室しか存在しない。
ホテルマンといったら聞こえがいいかもしれないが、やってることはベッドメイクなんかじゃなくただ畳に布団を敷くだけだから、胸も張れない。
ただ、休むわけにもいかないからいくしかない。
そんな感じで毎日バイトに行っていた。
その甲斐あってかいつもは夜からのバイトなのだが、プールサイドの露店や朝からの掃除の話もちらほら入ってきていた。
実際はがんばってるところを評価されたわけでもなんでもない。
良く言えば仕事が出来る。
悪く言えば自給が安くあがる出来のいいバイト。
ただ、それだけだった。
俺の同級生にあたる奴らはだいたい街にバイトにいっている為、こんな辺境の地でバイトをしようなんざ、誰も思わなかったんだろう。
結局人手不足なだけだった。
手に持っていた漫画を本棚にしまうと、バイトの準備を始めた。
準備といってもタオルをもっていくぐらいなものなんだが。
行く前に何か食べようと思い、俺は居間に向かった。
バイト先ではまかないらしきものが出るのだが、それまで持たないのが成長期の男子たるものだと思う。
が、居間に行っても何も見当たらない。
というか人がいない。
母親も父親も兄弟すらいない。
「あれれー?」
暢気な声を出しつつ、自分の食事そっちのけで捜索を続けるとテーブルの上に置手紙があった。
『俺へ
今日から旅行にいってきます
食い物は冷蔵庫に入ってるから適当に食べてくれ
戸締りはちゃんとしろよ 父』
「ああん?」
そういえば2,3日前にそんな会話をした気もする。
母方の実家だかに2日ぐらい行ってくるっていってたっけ。
家族の重圧から開放される、俺勝ち組グッジョブとか思案をしながら時計を見ると、バイトの時間が迫っていることに気が付いた。
「うわ、やべっ」
俺はその一言だけ残し、家を出た。
あれ、鍵閉めたっけな?