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過酷な運命
診察を終えて再び待合室。
心無い人に捨てられて、親と離れ離れになって、カラスに襲われて、怪我をして、飢えて…
なんて辛い運命を背負った仔なんだろう。
幸せにしてあげないと。
手のひらに乗せていることを忘れるくらい軽いけれど、重たい命を実感しながら、薬の処方と会計を待っていた。
そして私の名前が呼ばれたので受付に行くと、下剤と化膿止めの薬、そして初めて猫を迎える人にという冊子をいただいた。
ただペットショップで購入した子を対象とした冊子なので、離乳していない猫については書いていない。なので追加の説明書をいただいた。
会計を済ませようとしたところで、予想だにしない言葉が受付の人から発せられた。
「診察券を作りたいのですが、猫ちゃんの名前はなんですか」