第1章 9社目
~~異世界召喚17日目~~
おはようございます、お元気でしょうか
私は元気です。
さて朝早くに起き食事を済ませる。今日は商業ギルドの配達のお仕事だ
3日行ったところの街に配達し、その街の特産物を受け取りこちらに帰ってくるという仕事だ
この仕事、なんといっても金がいい、宿泊費+食事費+野営費用持ちで20万リズときたもんだ
俺一人では不安なのでケイが同行する。
ケイもかなり戦闘に慣れてきて、今は格闘しながら魔術も使える立派な魔闘士だ
「それじゃ、行ってきます」
「行ってくるっす!」
皆は今日も各自の仕事をこなす予定らしい
俺たちは待ち合わせ場所の商業ギルド前へ急ぐ
「お?、来たな! 久しぶりだなタキ!」
「久しぶりって程でも無いぞ?ドル」
「気にすんなって!」
このドルは商業ギルドの職員、商人もしており主に売っているのはお酒とつまみだ
男性メンバーで飲みに出たとき、いつの間にか一緒に飲んでおり仲良くなった
俺のスキルが乗り物に強いと聞いたとき、この仕事を回してくれた
普段は冒険者5人と馭者を2人雇わなくてはならず、経費がかさんでいたらしい
そんなことをしないでも俺ならば問題ないと伝えると、じゃぁやってみてくれと言ってくれた
「タキ、まずは前報酬10万だ、食費や宿泊費などは後日渡すから、紙に書いておいてくれ」
「おう、そういえば言うのを忘れていたが早く帰ってきても、報酬は減額されないよな」
「あたりまえだ!早ければ早いに越したことはない、早めに売れるのだからこちらとしてありがたい」
「じゃぁ行ってくる!」
俺たちは結構な大きさの馬車に乗り込み、馬4頭を操りミリーナの街を出るのであった
俺たちが向かう街はミリーナの街から馬車で3日のドロアと言う街だ、家畜を飼育しており果物もおいしいらしい
馬車に【固有絶技】軽量 を使い馬車を飛ばしていく
途中で魔獣や盗賊とも出会ったが、馬車を飛ばせば簡単に逃げられた。
ドロアの街に着いたのは1日と半日を過ぎた辺りだった、
ドロアの街は白いレンガ造りの緑の屋根が立ち並び、街を覆う壁はミリーナの街に比べると低いイメージだ
それでも分厚い壁に覆われて人々を守っているのだろう
ドロアの街の周りには森が無く隠れるものが無いので強い魔獣や盗賊などは少ない
街の中の雰囲気もミリーナの街に似て穏やかだ。
「さて、ドロアに着いたな。」
「お兄ぃ、かなり早かったっすね、盗賊なんかは呆然としてたっすよ?」
「はっはっは~、1万1千回転きっちり回せばこんなもんよ」
「馬車で何を回したんすか?」
俺たちは配達を終え、馬たちのブラッシングと飼葉をたんまりと与え
自分たちも食事をする、明日は早い出発なので今日は早く寝てしまうことにする。
朝出発の時、商業ギルドに行くと慌てた様子で積み荷を積んでいた
「あんたらがこんなに早く着くとは思わなかったもんで、昨日の夜から慌てて用意してるんだよ」
「それは申し訳ない」
「いや、すまない嫌味ではなくありがたいんだよ、ちょっと早めにほしい商品があったし
早めに売っておきたい商品もあったからな。」
そういうと男は戻っていく、ほどなく準備もでき
俺たちは馬車に乗ってドロアを後にする。
「ケイ、次、盗賊来たらどうする?一応キルする?」
「ん~ハンターギルドからはキル希望出されてるっすよ」
「あれ?ケイってリアルPKしたことあるの?」
「俺自身は無いっす、ただ盗賊討伐依頼をグループで行ったぐらいっすよ」
「う~ん、俺もリアルPKは難しいなぁ、まぁそんな能力もないんだが・・・
それじゃぁ、全無視特攻よろしくで」
「どこの暴走族っすか?」
そこから中継ポイントの野営地を目指すはずが
2回ほどの休憩を挟みつつ、野営地を越え 夕刻にはミリーナの街に着いてしまった。
ちなみに何故帰りが早いかと言うと、ドロアへの道を俺が知らなかったため
少し速度は落としていたのだ
なので俺のスキルを十分に発揮すると3日かかるところが1日になる
ミリーナの街に入り商業ギルドに馬車と積み荷をお届けする。
商業ギルドに着くと、ドルが口を開けてこちらを見ていた、まるで幽霊を見たかのようだ
「どうした?ドル、まるで幽霊が光魔術を食らったような顔をして」
「成仏してそうっすねその幽霊」
「な!?・・・・・・」
「な???」
「なんでお前がここにいるんだ?到着まであと3日くらいあるだろう」
「だから、俺のスキルが乗り物に関することだっていったろ?」
「いや、だからって半分の日数で往復なんかできるかよ!」
「出来ちゃったし、お馬さんも元気だぞ?なぁ?」
馬たちがそうだ!と言わんばかりに鳴き出す
「すげえな、魔獣とか盗賊とかは居なかったのか?」
「居たけど・・・俺のスピードについてこられる奴なんて・・・いねぇよ」
と無駄にかっこつけてみる、隣でケイがため息をついていた。
「こんなに早く着くとは思ってもみなかったから、なんも用意してねぇぞ?
成功報酬やら食費なんかは明日の昼にはまとめるからそれ以降にしてくれ」
俺たちはそれを了承し、馬と積み荷の乗っている馬車を返す
依頼書に完了のサインをもらい宿屋に帰る。
夕食をとるみんなと合流し、和木さんに今回の報酬を渡す
ちなみに報酬の50パーセントは自分のもの、残りは皆のお金として集めている
今回の俺とケイの取り分は2万5千リズ、成功報酬が入れば+2万5千リズ
懐が少し暖かくなるなぁ~
「おつかれ~~他の街はどうだった~?」
「沖さん、おつかれで~す。そうですね、奇麗な街でしたよ」
俺たちはドロアの街がどんなところか教えるのだが
ドロアの街はミリーナの街同様に、きれいな街なのだが
俺たちの興味を引くような、迷宮だったり、遺跡があったり、図書館や逸話があったりする場所ではなかった。
ただ、魔獣の被害が少ない、いい街という印象だ老後に住むにはいいところだろう
俺とケイは明日は休み
他のみんなはハンターギルドへ行ったり、依頼があったりするそうだ
休みは何をしよう・・・そんなことを考えなら体を休めるのだった
~~異世界召喚20日目~~
ゆっくり寝るつもりが、早くに目を覚ましてしまった
最近の俺は能力向上のために朝ランニングをしている、結構白い目で見られるのだが
これをやっておかないと、俺はみんなの戦闘に付いていけない。
スキルが騎乗とか意思疎通とかなので戦闘力は皆無なのだ
少しづつでもいいので、成長してくれないかな?
騎士の詰所の近くを走っていると、リフェルさんの声が聞こえた
騎士たちも訓練をしているみたいだ、興味本位でのぞいてみる
そこには地獄があった・・・鎧と大きな剣を担いで、小柄な大人の大きさの麻袋を持ち
必死の形相で走っている騎士の姿。
なにかの拷問なのだろうか?
俺は遠くから騎士に手を合わせ、潔く逝ってくれと願う
騎士は毎日あんなにすごい訓練をして己を成長させている
俺が毎朝走っているだけでは強くなれることはないのかもしれないが
それでも、皆に置いて行かれたくない、皆と一緒に異世界を堪能したいという
気持ちがあるために、俺は俺のやれることを少しでもやっておかなければ
宿屋に帰るとみんなはすでに朝食をとっていたので合流
朝食を食べ終わったらみんなに手を振り送り出す
さて、昼は商業ギルドに行くとして
午前中はどうしよう・・・・そうだ!
ワイクの工房を冷やかしに行こう!
ということで俺とケイでやってきましたワイクの工房
ケイも暇そうにしていたので声を掛けた
俺は受付のおねぇさんに声を掛けワイクを呼んでもらう
「おう!、タキ今日はどうした。」
「おはようワイク、ちょっと冷やかしにきたぞ」
「冷やかしなら、帰れよおまえ」
「まぁまぁ、ちょっと装備類を見せてもらうよ」
「いいだろう、俺は工房の奥に戻ってるから、なんかあったら嫁に言ってくれ」
「え!?、あの奇麗なおねぇさん嫁さんなの!?」
「なにが、奇麗なおねぇさんでぇ・・グフォっ・・・」
工房の裏手に行っていたはずのワイクの嫁さんがいつの間にか
ワイクの後ろになっていた。
ワイクは何をされたのわからなかったが膝がら崩れ落ちる
「あら?私が奇麗なおねぇさんと呼ばれてうれしく無いの?ねぇ?」
ワイクの頭を鷲掴みする、とても冷たい目をしていた・・・
「いえ、とてもうれしいです。はい」
「そうよねぇ、うれしいわよね、奥さんが奇麗って言われているんだもの・・・・」
とてつもなく怖い、本当に怖い
この工房が氷点下まで下がってしまった幻想を抱くほどに
「あら、ごめんなさいね。お客様の前で、私はワイクの妻のミックスと言います」
「すみません、こんなお奇麗な方がワイクのお嫁さんだとは知らず、本当にワイクは幸せ者ですね~」
「あら、お上手。おほほほ」
奇麗というのは嘘ではない、事実ワイクがこの奇麗な人をどうやって落としたのか
すごく興味が湧く。
すごく聞きたいのだが、今のワイクはものすごくガクブルしているのでそっとしておいて
俺たちは装備類を見せてもらうのだった
「お兄ぃ、この手甲ってどうっすかね、かっこよくないっすか?」
「おすげぇ、手のところに何か禍々しいのが付いてるな、殴られたら呪われそうだ」
「ケイ、これも凄いぞ盾が俺よりもデカいこんなの持てるやついるのか?」
「その手甲はルビアンテ鋼という鉱石で作ったものだ、魔力をこめて相手に打ち込むと少しの間痺れて動けなくなる
タキの言っている盾はタワーシールドの類だ防衛戦で使われるものでよく騎士や衛士なんかが使うやつだ」
「あれ?ワイク工房のほうはいいのか?」
「ああ、取り合えずは済ませてあるからな。」
俺たちは仕事を済ませたワイクに解説を求めつつ装備品を眺めていた
そういえば、ワイクに聞きたいことがあったのだ
「ワイク、聞きたいことがある、鉱石やらってどこで買うの?」
「あん?鉱石買ってどうすんだ?って、ああ~島のねぇちゃんか」
ワイクには島さんを紹介しており
こんな風なスキル持ってますよとざっくり話してある。
以前ワイクに俺たちが使っているナイフを見てもらったのだが、ワイクが島さんにアドバイスをしたり
逆に島さんがワイクにこんな武器はないのかとアイデアを出していた
「そ、鉱石があれば俺のスキルのための乗り物も作れないかなって思ってな」
「ん~鉱石類や宝石類はここいらでは結構貴重でな、鉱石の売買は国の管理下に置かれている
一般人やハンターが鉱石を買うなんざ、国も許可は降りんだろ」
「そっか~やっぱり貴重なのか~」
「それなら、この国の迷宮に行ってみたらどうだ?」
「ん?何故に迷宮?もしかて鉱石とか採れるの?」
「ああ、採れる。迷宮産の鉱石の場合、採ったらすべて国管理ってことはできないんだろ
まぁある程度は国も目を瞑っているらしい」
やはりロマンの迷宮か、今はまだ迷宮に行くことはできない
だって迷宮のある都市まで馬車で20日もかかる、ミリーナの街から王都を挟んで反対側にあるのだ
乗り物くらい作らないとやってられない。
今はそのための資金の調達と資材集めをしている最中だ
それから俺たちはワイクの工房を後にする
ケイは工房で見た手甲を買っていた
昼食をすませ、商業ギルドに立ち寄り
成功報酬を受け取る。俺たちは屋台を冷やかしつつ
宿屋に戻るのだった
~~異世界召喚21~26日目~~
それから、俺たちは資金の調達、戦闘訓練、資材集め(商業ギルドの倉庫の一角を借りている)
魔術の訓練と忙しい日々を送っていた。
俺たちは、何度かヘゼルの森へ出かけ少し大柄な魔獣と戦えるまでになっていた
皆、魔術と剣との戦いに慣れてきた証明だ
もう一度教会でステータスを確認すべきだろう、皆の成長が目に見えるように発揮されていた
そんな折、騎士からリフェルさんの伝言を伝えてきた
知人を紹介するから、明日騎士の詰所まで来てほしいとの事だ




