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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
関東合同訓練
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覚醒 (4)

「……それが…事実なの?」

娘伯の両親は生きている。

ウェンフーに首を絞められながら言われた事は戯言だと思っていた。

『あの時僕は娘伯と親御さんを助ける為に娘伯の身に宿った…此処清天神社でね』

生じた霊力にウェンフーは怯み撤退、

ツクヨミはそれから長い眠りに就くが娘伯と両親は事無きを得たのだ。


「ど…どうして娘伯さんの両親は事故で死んだって嘘を?」

話を聞く風花達も驚きを隠せない。

「まず一つに妖怪に恨みを持つべきではないと思ったからだ」

親の仇が妖怪と知れば娘伯は私情に溺れ身の破滅を招くだろうと考えていた。

提灯お化けのチョウとの出会いも妖怪が必ず悪い者ではない事も知った。

その甲斐あって娘伯は依頼に対し感情的にならず務め上げる事が出来た。


「そして二つに娘伯の親を危険から遠ざけるべきだったからだ」

娘伯の身に宿る何か…つまりツクヨミを妖怪は狙うかもしれない。

ならば両親が命の危機に晒されるのは当然。

親の了承もあり娘伯は元斎の元に引き取られ妖怪と戦う術を手に入れた。


『僕だけでは娘伯が霊力を操るなんて出来なかった…元斎の助力と娘伯の才能が僕を覚醒まで導いたんだよ』

「私の力は…私とツクヨミの物?」

『そうだよ!だから自分に誇りを持って!世界でただ一人の現人神さん!』

ここで少し恐縮に青井が手をあげる。

「あの…八尾狐は娘伯さんを最初から狙ってたと言ってましたよね?」


命を狙うならチャンスは何度かあったはずだ。

田舎で小百合とすり替わった時点では特に好機はあった。

「でもわざわざ過去をはぐらかして娘伯さんを焚きつけて正面切って戦った理由って?」

『ふむ…あれは長く生きた妖怪故に賢い…ただの不意打ちでは満足できないんじゃないかな』

「多分だけど…八尾狐は争いを好んでいる…妖怪を操って都会を脅かす事に喜びを感じている」

ならば一刻も早く八尾狐を滅せねばならない、

娘伯は拳を握り使命を露わにする。


「どこにいるか分からないんじゃ手の打ちようが無いですけどねぇ…所で…娘伯さんの両親は今どこに住んでるんです?」

風花が話を戻すと元斎が答えた。

「伊勢に住居を構えている…アマテラス様の祀られた伊勢は此処より平和だからな」

「なら今度会いに行けばいいんじゃないか娘伯!」

戸惑いを隠せない娘伯は両親と会うべきか悩んでいる。

ましてや今まで死んでいたと聞かされていた者、

血の繋がりはあっても果たして家族と呼んでくれるだろうか。


「いずれはこの時が来ると覚悟はしていた…暇が出来たら行ってみるといい」

元斎の助言に娘伯は頷く。

『でもその二人に都会の守りを任せるのは不安だなぁ』

ツクヨミは青井と風花を見つめ役不足を憂う。

「な!何言ってるんですか!」

「私達は一人前の妖滅巫女ですよ」

『霊力を込めた武器だけでは太刀打ち出来ない事は思い知らされたでしょ?』


虚勢を反論され青井達はぐうの音も出ない。

「そりゃ娘伯さんと違って神様宿してないし…式神も二人掛かりで金魚一匹だし…」

風花の発言でツクヨミは何か閃いた。

『式神…!なるほどいい手を借りられるぞ!』

「期待していいんですか?」

『任せてよ!僕を誰だと思ってるんだい?』

三貴神の企みに娘伯と元斎は僅かな不安を感じた。


「はぁ…暑い…ねぇねぇ今から銭湯行かない?」

残暑を感じて風花はそんな事を呟く。

「私は別にいいけど風花は大丈夫なの?夏休みの宿題」

学生として当たり前の会話に風花は表情を硬くした。

『何なら手伝ってあげようか?八百万の力があれば…』

「ダメ」

壮大なズルは娘伯によって止められる。

夏休みは残り一週間ほどだった……。

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