謀略 (3)
夜の住宅街を歩く巫女2人。
白い髪からは良い匂いが流れ後ろの青井を複雑な心境にさせていた。
「げ…元斎さんが…娘伯さんは隠し事してるって…」
伯父の名を出され娘伯は歩みを止める。
あれにだけは敵わないとため息をこぼす。
「やましい事で無いならきちんと話すべきです!」
「……」
「誤解を生まない内に…お願いします」
頭を下げて懇願する青井。
「ダメ」
短く放った言葉には確かな意思も込もっている。
「っ…どうして!」
やっと振り返ると娘伯は言葉を続けた。
「言えばみんなに危険が及ぶ…」
「でも!」
青井が言いかけた背後から殺気を感じ取る。
「危ない!」
娘伯は青井を抱え地面に伏せる。
間一髪で斧が頭上を掠めた。
「ちっ!あれを避けるか!」
首の無い馬に跨る妖怪はそんな悪態を放った。
「あれも妖怪?」
「確か首切れ馬と…首無し鬼?」
「夜行だ!見た目だけで決めつけんじゃねぇ!」
青井の浅い知識を首の無い鬼…夜行が訂正させる。
「どうして私達を狙う…」
「そんなの教える訳無いだろ!」
首切れ馬がいななき娘伯達へ迫り来る。
夜行の斧が娘伯の小刀に弾かれる。
反撃の霊刀は届く前に距離を取られてしまう。
「この!」
風呂敷から取り出した霊的三弾銃を青井が構える。
「そんな物!当たるかよ!」
連続で発射された球は華麗に避けられてしまう。
自らの手足のように首切れ馬を操る夜行。
「おらぁ!」
投げ飛ばした斧が青井へ迫る。
「ひっ…」
娘伯の繰り出した衝撃札に弾かれる。
「このままじゃ…ジリ貧…」
夜行は跳ね返された斧を取り妖滅巫女から逃げる。
誘ってるつもりかその方向は都会の大通りへ至る。
「追いかけないと!」
「……良い方法がある…妖怪に追いついて決定打を与えるかも」
わざわざ耳打ちで作戦を話す娘伯。
「本当にやるんですか!?」
何故か頬を染め青井は恥ずかしがる。
「私を信じて」
疑いが決心を鈍らせるが娘伯の瞳は真剣そのもの。
「わ…分かりました…今回だけですから!」
「ありがとう」
青井は渋々ながら娘伯の策に応じた……。
「やつら…怖気付いて追ってこないか?」
車道を堂々と駆ける夜行と首切れ馬。
目撃者など目にくれず巫女に備えて走るだけだ。
「だったらひと暴れ…ぁ?」
振り上げた斧に何かが当たる。
霊的三弾銃の球が爆ぜたのだ。
「な…なんだぁ!?」
妖怪でありながら背を追う存在に驚く。
「これ本当に大丈夫なんですか!」
「だいじょぶ!」
娘伯が肩車するのは霊的三弾銃を構える青井だ。
韋駄天は首切れ馬の脚力に追いつける。
そして霊的三弾銃は夜行を仕留めるに十分な射程距離を誇る。
唯一の問題は走りながらの射撃で狙いが定まらない事だろうか。




