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巫女乃禄  作者: 若猫老狐
バイト巫女、参戦
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暴れ蜘蛛 (3)

勝一の悲鳴が木霊する。

「娘伯!いきなりどうしたんだ!?」

元斎が止めにかかるも娘伯は華麗に避けて地べたの勝一にマウントを取る。

そして何度も何度も顔面を殴りつける。

「正気を失い最も嫌いな者へ暴力を振るう…」

昼間に読んだ新・妖怪図録を思い出す風花。

「そんなの言ってないで!娘伯さん止めないと!」

娘伯の血相は大切な物を壊された子供のように怒り狂っている。

とても常人が抑えられる状態ではない。


「おぅおぅどうしたんじゃ?"まじ"喧嘩かの?」

どこからともなく椿鬼が現れた。

「妖怪のせいで凶暴化してるんです!なんとかしてください!」

しかし娘伯は顔を上げ椿鬼に気付くと一気に走り出す。

「今度は儂か?来い娘伯!」

「つぅばぁきぃ!」


渾身のストレートが椿鬼の頬へ直撃した。

「良い拳じゃ…しかし足りん!」

霊力の込もっていないそれで椿鬼は全く動じず。

腹へ弱く…それでも吹き飛ぶ程の威力で椿鬼は娘伯を殴った。

「つ…椿鬼さん少しは加減して!」

「"まじ"な相手に加減などできよう…」

娘伯は拝殿へと激突するも気を失っただけで済んだ。

「今回ばかりは恩に着るぞ椿鬼」

元斎はボロボロにされた勝一を、

青井と風花は娘伯を担ぎ社務所内まで運んだ。


「しかし冷静な娘伯がこうも"まじぎれ"するとはの…何があった?」

満身創痍の二人を布団に寝かせ元斎は残る椿鬼達に状況を説明する。

「蜘蛛の妖怪…まだ町で暴れてるんですよね?」

蜘蛛と聞き飄々とした表情が固まる椿鬼。

そして社務所を出て行ってしまう。

「あ〜蜘蛛か〜すまぬが儂は調子悪くて敵わないかもしれぬの〜」

風花が茄子を見た時と同じ顔をしてるので青井は全て察した。


「だったらもう私達しか居ない…妖怪と戦います元斎さん!」

風花が拳を固め決意を示す。

青井はまだ戦う意欲を出せずにいる。

「私は…」

「少しでも娘伯さんの力になるんでしょ!」

図書館で自らが言った言葉に唇を噛んだ。


「二人に何も持たせず行かせるつもりはない」

元斎はペンケースより一回り大きい木箱を二つ取り出す。

「この前の試作を改良した大幣と名付けて"霊的空気銃"だ」

大幣は形こそ変わらないがより頑強な造りになった。

そして霊的空気銃は回転式弾倉に6発弾が入り動作性も安定した代物だ。

「娘伯は2人の事をよく話し信頼している…だからこれを託そう」

元斎からの頼みに最早退く余地は無い。


「こ…今回だけですから!」

勢いで霊的空気銃を取る青井。

にっと笑って風花も大幣を手にする。

「2人で妖怪をやっつけよう!」

「うむ…あとは娘伯の袖から御札を取ってくれ」

また起きないか心配になりながら2人は娘伯の袖から数枚の御札を取る。

その内の1枚は淡く光っていた。

「御札の模様と同じ場所に妖怪が居る」

古びた地図を出して光ってる御札と同じ模様を探す。

これだ、と青井は小さな神社を指差した。


「危険な戦いになる…もしもの時は身の安全を第一に行動してくれ…いいな?」

「はい!行ってきます!」

風花は青井の手を引き清天神社を後にする。

残った元斎は娘伯達の看病だ。

「娘伯や…良い友に巡り会えたな」

一人で戦ってきた元斎は眠る娘伯にぽつりと呟いた……。

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