【20】異変
「娘伯様?あんまり寝てると目的地を過ぎちゃうわよ?」
人気の少ない2両編成の電車に揺られ巫女は暇な時間を過ごす。
小百合に肩を揺さぶられ娘伯は目を覚ました。
「ん……おはよう」
「もうとっくに昼を過ぎてる」
窓からは田園風景が続くばかりで山も近い。
事の始まりは数時間前。
妖滅連合の遣いが清天神社に訪れ依頼を伝えたのだ。
郊外に妖怪の動きを察知したので調査せよとの事。
詳細な情報が分からない以上向かうのは少数がいいと判断し、
小百合と娘伯が向かう事となった。
和泉も同行を願ったが先日の傷が癒えていない事もあり却下させた。
「ほら着いた……二度寝しない」
頬をつついて娘伯を再び起こす。
人が利用しているかも怪しい駅に到着し巫女2人は降りる。
「良い天気…」
これから妖怪の調査を行うに相応しくない快晴。
30分ほど歩き続けていかにも限界集落な村に着いた。
「話は付けてるから一先ず村長の家に向かいましょう」
家よりも田んぼが多いだろうか、
道は緩やかな坂が続き他より少し大きな住居を見つける。
「お待ちしておりました…」
元斎と同い年の老人が玄関から現れ部屋に招く。
座布団に巫女は座り村の事情を知る。
「数日前から夜に不気味な声が聞こえるんです」
「村人が気をおかしくして喚いてるだけでは?」
小百合が厳しい指摘をするが村長は首を横に振る。
「見回りをしてるのですが村の周辺には誰も居ないんですよ?」
「山の妖怪が悪さしてるのかも…娘伯様は…あ?」
反応が無いので振り向くと娘伯はまたも居眠りしていた。
「娘伯様!」
「うぃ!?…ん…ごめんなさい」
最近は夜更かしが過ぎるのか居眠りが多い。
「また夜になったら様子を伺います」
「そうですか…隣が空き家なので妖怪騒ぎが済むまでお使いください」
小百合は会釈し眠気まなこの娘伯を摘み外へ出た。
「娘伯様…夜はしっかり働けるんでしょうね?」
「夜は…だいじょぶ…」
「はぁ…念の為村の周辺に探査札を貼りましょう」
近辺に妖怪が潜んでいる筈は無いがこれで見つければ儲けものだ。
数枚の御札を取り出した直後、
いきなり一枚が光り出した。
「もう反応!?しかも村の中じゃない!」
光を辿ると少し離れた家屋で反応が最も強くなっている。
「まさか此処に妖怪が潜んで…」
娘伯は壁の隙間に聞く耳立てる。
中では女性と子供の声が何か話をしている。
「この声どこかで…」
娘伯が思い当たるより早く小百合は家屋の扉を叩き開いた。




