逆襲 (3)
「うらぁ!」
鬼の横腹に拳が鋭くめり込む。
殴り飛ばしたそれは和泉の左手だ。
「和泉…!」
「倍返しと行きたいとこやけど…此処が限界や…」
満身創痍に至り和泉は倒れこむ。
「トドメは任すで!」
「ん!」
瓦礫を退かし鬼が咆哮する。
韋駄天で頭上まで跳び上がり娘伯は霊刀を構える。
「この…」「っ!」
鬼の手甲と娘伯の小刀が互いの顔を掠める。
頬に傷がついたのは娘伯、
そして首を斬られたのは鬼の方だった。
「貴方達を従えてるのは…誰」
まだ消えかける鬼の頭を掴み僅かに睨みつける娘伯。
「う…」
声を漏らした直後一際強い風が通りに吹く。
「娘伯!後ろや!」
和泉の忠告で振り返るが何かが娘伯を吹き飛ばし鬼の手甲を回収してしまう。
「逃がさない!」
体勢を整えて飛び立とうとするその脚を娘伯は掴んだ。
「ち…離せ!小娘!」
片脚を引かれ激昂する妖怪はもう一方の脚で娘伯を蹴落そうと試みる。
「うぅ…っ!」
手を放すも振り上げた霊刀は空振り尾羽を散らすだけに終わる。
「いつまで…いつまで…」
巨大な鳥の妖怪はそんな事を呟きながら都会の空へ消えてしまった。
地へ叩き落とされるも娘伯はすぐ立ち上がる程余裕である。
「大丈夫かい娘伯!」
「だいじょぶ…でも今の…」
舞い散る羽を拾い和泉へ見せる。
「今夜はもうあかんな…神社へ戻って報告や」
和泉の怪我の手当ても必要だ。
娘伯は屈んで背中に乗るよう目配りを送る。
「この方が速い」
「脚を怪我しとる訳やないし…うおわ!?」
無理矢理でも和泉を背負って帰路へ向かう。
通りに残るのは火を上げる廃車だけだった……。
「ん〜やっぱり居ないなぁ…」
風花は反応の無い物置をノックして肩を落とす。
小さな神社の横に添えられたそれは本来なら中が異空間になっているクリュウ達の住処だ。
しかし今は只の物置であり当然住んでいる形跡も残っていない。
「何処か遠くに行っちゃったんじゃない?」
青井は見回りに戻るべきだと言うが風花も諦めきれないらしい。
「そこで何をしておる!」
通りへの参道から声が掛かり2人は振り返る。
「あ!椿鬼さん!」
警戒していた椿鬼は緊張を解き堪らず駆け寄る。
「あ〜久しぶりなのじゃ〜!」
「抱きつくほどですか…」
関西巫女が現れてから椿鬼はずっと外に居たらしい。
「結界を通り抜ける御札は貰ってる筈ですよね?」
「彼奴らは信用できん!いつ寝首をかかれるかも分からんからのう!」
椿鬼もクリュウ達の元で厄介になろうと思ってた様子。
しかしもぬけの殻と知らされ珍しく不安な顔を見せた。
「やっぱり何処かへ引っ越して…」




