表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女乃禄  作者: 若猫老狐
関東合同訓練
71/182

逆襲 (2)

「妖怪の反応はあったん?」

探査札を手にする娘伯へ訊ねる和泉。

人通りの無い脇道をすいすいと進むが見回りは空振りに終わりそうだ。

「居ない…怖いくらいに静か…」

ため息をつき落胆する娘伯。

和泉は肩をぽんと叩いて気にするなと励ます。

「んな毎回妖怪が来られても困るやろ!それより終わったらまた銭湯に行かへん?」

「ん…」

「でも…男湯に入るのは勘弁な?」

先に釘を刺され娘伯は渋い顔をしてしまう。


しかし平穏な時間はあっさりと崩された。

何処かでクラクションの音が聞こえ直後に爆発音が響く。

「こっちや!」

通りに出て騒動の方へ急ぐ2人。

車道には炎上する車が煙を立てていた。

「…あれの仕業」

その先にボロ布を羽織る鬼がただ一匹こちらを凝視している。


「たった一人で暴れるとはいい度胸や!」

「くっくっ…来い」

自動車を飛び越し拳に霊力を込める和泉。

「…あ!待って!」

娘伯の声も届かず互いの拳が激突した。

「んな…?」

鬼の左腕には鉄の手甲がはめられている。

霊力と妖力が交わらなければ肉と鉄のぶつかり合い。

「ぐあ!?」

右腕から血を噴き出し和泉は倒れてしまう。


妖怪が施した対策は想定通りの成果を上げた。

苦悶の表情で右腕を押さえる和泉へ鬼の脚が迫る。

「まず一匹…」

踏みつけるより速く娘伯が和泉を抱え距離を取る。

「逃すか…」

放置された車を片手で掴み娘伯達へ投げ飛ばす。

「一旦逃げる」

後方へ退きまだ混乱の残る人混みへ逃げ込む。

鉄の鬼が車を吹き飛ばす頃には2人の姿は無かった。


「最悪や…あんなん聞いてないで…」

脇道へ逃げた和泉は腕を押さえて弱気を晒す。

「治癒の御札…無い」

懐を漁るが間が悪く怪我を治す御札を忘れてしまった娘伯。

「つぅ…骨まで行ってるかもしれへん」

戦力低下を余儀なくされ娘伯も身を硬ばらさる。

「私一人でなんとかする」

「待ちや!足手まといとは言わせへんで!」

虚勢のつもりか和泉は娘伯の袖を引く。


決断が遅れる間にも通りから爆発音が聞こえてくる。

「街を守るのは私達の仕事」

和泉の手を振りほどき娘伯は大通りへ戻ってしまう。

「…後輩に弱音なんて吐けないわな…」

巫女装束の袖を裂き右腕に巻いて無理やり止血する。

ゆっくりと歩き和泉は娘伯の後を追った。


「何処へ行った…巫女ども…」

邪魔な車を破壊していく鬼は殺気に気付く。

韋駄天で素早く間合いまで詰めた娘伯の小刀を左腕の手甲で受け止める。

「っ…厄介!」

掲げた御札が爆ぜ鬼の視界を塞ぐ。

娘伯は回り込み鬼の背後を狙った。


「甘い…」

鬼はそれより速くコンクリートを殴り壁を築く。

そして壁を押し込み娘伯へ吹き飛ばす。

「な!?」

迫り来る壁を際どく避けるも地へ転がり倒れてしまう娘伯。

「これで…」

鬼の腕が振り上げられる。

対処の隙も無いまま娘伯は瞳を見開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ