表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女乃禄  作者: 若猫老狐
関東合同訓練
68/182

式神召喚乃儀 (3)

「うん…今日は夕飯済ませてくるから」

夜道を歩きながら青井は携帯電話を閉じる。

先程まで通話していたのは青井の母親だ。

一息入れてその足取りは軽くなる。

「たまには一人で夕飯!」

行き着いた場所は"ほろあま庵"、常連となっている馴染みの喫茶店だ。


「こんばんわー」

「あらいらっしゃい青井ちゃん」

既に数名の客がおり店主の彩は厨房と席を往来している。

「……青井?」

客の一人がこちらに気付き手を招く。

「ぁ…え!?小百合さん!?」

思わぬ客人に青井は驚いてしまった。

年相応の私服で気付くのが遅れたがその笑顔は確かに小百合だ。


「相席でも構わないわよね?」

「もも…勿論です!」

テーブル席に対面し青井は少し緊張した面持ち。

「相方は…そういえば見回りに就てたわね」

空き皿を前に小百合はコーヒーを含む。


「今夜は一人で夕食に挑戦しようと思ってたんですけど風花や娘伯さん以外の知り合いに会うとは…」

「あらそう…なら今夜は私の奢りにしてあげる」

思わぬ提案に当然青井は慌てる。

「お夕飯は決まった?青井ちゃん」

「ええっと!それじゃあディナーセットAで…飲み物はいつものをお願い!」

彩に注文を促され目に付いたそれを頼む青井。


「ふーん…此処の常連なのね?

なら私が奢られる方が良かったかしら…」

「うぇ!?それはちょっと勘弁してください」

「冗談…子供に払わせるなんてダメ人間の所業よ」

誰を思ってか小百合はため息混じりに呟く。

厨房では彩の絶叫が聴こえるが先程経験したばかりの小百合も常連の青井も気にしない。


しばらくしてサラダ、ライス、鶏の照り焼きといちごオレが青井の前に現れる。

「ねぇ…貴方は娘伯様の事をどれだけ知ってるの?」

小百合から不意に訊かれ青井はむせかけた。

「あらごめんなさい…食べながら聞いてくれればいいから…少し気になる事があってね…」

スプーンとフォークをいつもより速く動かし夕飯を食べていく。

小百合の表情は打って変わり真剣な物だ。


「昼に行った式神召喚乃儀…娘伯様が招いた式神は四神が一柱…玄武」

玄武からも言われた通り格の高い彼を喚んだ人間は娘伯が初めてだ。

「いくら娘伯様が…人間でも四神ほどの存在を召喚するのは不可能なのよ」

「心技体と霊力が高ければどんな式神も召喚出来るのでは?」

いちごオレを飲み儀式の説明を思い出す。

「どれだけ人として出来上がってても霊力が高くても所詮は人間の限界

…彼女にはもしかしたら人を超えた何かが備わっていると私は考えているわ」


人を超えた何かと言われても青井にはピンと来ない。

「娘伯様から昔の話は聞いてないかしら?」

「えーと…確か生まれた頃に両親は事故で亡くしたとか…」

娘伯本人から明かされた話。

しかしそれが人外への覚醒に繋がるとは思えない。


「10歳の頃に受けた妖滅巫女認定試験で妖怪と戦った時に小刀も御札も使わず追い詰めたとか」

「それは…和泉と同じく体に霊力を纏わせただけではなくて?」

「娘伯さんと戦った妖怪から聞いた話なのでなんとも言えません…」

やはりきっかけには欠ける事。

ならば人間ではありえないトラブルはどうかと小百合は問う。


「御山での依頼で人間は通れる結界に何故か娘伯さんは阻まれてました」

「……やはり彼女は妖怪の類かしら」

御山の出来事を知り小百合はそんな憶測を呟く。

「でも小百合さんの作った結界は通れますよね?」

妖怪を阻む結界に娘伯が通れるなら彼女は妖怪ではないだろう。

「はぁ…謎は深まるばかりね…」


青井が食べ終わった頃にちょうど彼女の携帯が鳴る。

「あ…見回りが終わったから皆銭湯に行ってるみたいですよ」

メールを一読し報告する青井。

「小百合さんも一緒に行きませんか?」

「私はホテルのシャワーで十分よ…それに和泉が居るなら騒がしくなるでしょう」

変わらぬ表情で小百合はコーヒーを飲む。


「じゃあ夕飯代を…」

伝票をサッと取られて青井は慌てる。

「奢りって言ったでしょ?気が変わらない内に行ってらっしゃい」

「ぁ…ありがとうございます!それではまた明日!」

一礼し手を振ると青井は彩にも挨拶を済ませ店を後にする。

「娘伯様…貴方は一体何者…」

摘んだ伝票を眺めながら小百合はふと言葉を漏らした……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ