【18】式神召喚乃儀
「元斎さん…なんで俺たちだけ拝殿から締め出されてるんですか?」
昼餉を済ませ妖滅巫女達は拝殿で何か行おうとしていた。
特に勝一は立ち入り禁止と釘を刺され今は戸の隙間から覗こうとしている。
「関西巫女の鍛錬ならば問題は無いだろう」
元斎は悪事を働いてるような勝一にため息を残し社務所へ戻ってしまう。
「妖怪の出没…討伐の妨害をする者…私達は今こそ戦力を求められています」
並んだ妖滅巫女と向き合い小百合はそう話を切り出す。
「メンドイ話なら勘弁や!さっさと本題を言い!」
和泉に口を挟まれ咳払いし空気を整える。
「今から皆さんには式神召喚乃儀を行なってもらいます」
既に配置された八方を囲う御札。
最初に召喚がどんなものか小百合が実演する。
「小百合さんが普段使ってるのも式神ですよね?」
風花の質問に小百合は頷く。
「式神は召喚者の心技体…そして霊力に見合った者が顕現します」
成功したなら式神を御札に宿すか還すか召喚者に一任される。
小百合は若い時に狐の式神を2柱同時に召喚できた。
「まずは祝詞…言葉の意味を考えず腹の底からゆっくりと声に出す」
「退屈やな〜」
唱え始めた小百合が和泉へ式神を放つ。
額へ直撃しふざけた悲鳴が響く。
「召喚乃儀に集中できないと式神は何も応えてくれないわよ」
「悪かったなぁ…うちは身体一筋や…」
祝詞を最後まで唱えると陣の中心が青く光る。
そして普段のと変わらぬ大きさの狐が姿を見せた。
「これで3柱目…私も衰えてはいないようね」
少し安堵した様子で御札に新たな式神を納める。
「さぁ…貴方達もやってみなさい」
アイサが手をあげる。
しかし出てきた言葉は意外なものだ。
「辞退する…アイサとアイカ…神の力は借りない」
「借りるのではなく力を合わせるの…霊力だけでなく式神の信仰を合わせれば人の力は何倍にも…」
説得を試みるが遮ったのは和泉の意地悪な笑いだ。
「それは胡散臭い宗教の勧誘や!人の力は霊力で決まる!それが昔からの習わしやろ」
「せっかく準備を施したんだから試しにやってみなさい!ねぇ風花さん?」
「え!私!?」
無理やり袖を引き陣の前に座らせる。
「祝詞は覚えたかしら?」
「風花は暗記が苦手ですから私が代わりに詠みます」
本人が言うより早く青井が詠唱を務める。
意識を集中させ青井と風花が2人掛かりで召喚に挑む。
「なるほど…1人では厳しいけれど2人なら…」
小百合の推測は当たり陣から光が放たれる。
「やった!」
しかし現れたのは普通のより少々太ましい金魚のような生き物。
宙を泳ぐ姿はお世辞にも可愛いものではない。
「……まぁ最初はそんな物よ」
「役に立つんですかこれ…」
風花は金魚のような式神をつつく。
「式神は戦いで使役する存在ではないわ…そうね……偵察くらいには適してると思うわよ」
話し合いの結果この式神は青井が扱う事となった。
式神を御札に納め懐に入る。
「いいもん見せて貰ったなぁ小百合」
「和泉はせめて虎くらい大きい式神を召喚して見せなさい全く…」




