技能測定試験 (4)
互いが疲れるまでと小百合は思ったが激しい拳の応酬は中々収まらない。
鬼とバカが争ってる間に放置されたチョウへはアイサが迫る。
「覚悟!」
『ヒイイィ!?お助けー!』
鉈を持つ両腕を青井と風花が取り押さえた。
「待ってください!」
「2人は元々神社に住んでる無害な妖怪だから!」
しかしアイサも和泉も止まりそうにない。
娘伯が駆けつけて和泉と椿鬼の間へ割り込む。
「んな!娘伯避けるのじゃ!」
「やば!」
拳が衝突する前に衝撃札を当て2人を弾き飛ばした。
「いつつ…何するんや娘伯…いだ!」
起き上がる和泉に小百合がゲンコツを食らわせた。
「妖滅連合からの報告書を読んでないでしょ!
彼女は特別保護対象の椿鬼よ!」
「ぬぅ…あ!娘伯!何で儂を閉じ込めたのじゃ!」
「まず…無闇に人を襲わない約束…!」
出会った頃に交わした契約で椿鬼は歯ぎしりしてしまう。
「これは…奴が先に襲って…」
「ちゃんと謝って」
いつになく蛇のような睨み方で椿鬼は蛙のように縮こまってしまった。
「……すまぬ」
椿鬼を蔵に幽閉した理由はこういう衝突を避ける為であった。
落ち着いた雰囲気の中で紹介すれば問題は無かっただろうが。
「貴方が椿鬼ね?そしてあちらがチョウ」
「御主らは何者じゃ?」
小百合が近寄り友好の意を示す。
「人を襲わない優しさは評価してあげる」
差し伸べられた手を掴み椿鬼は引き揚げられる。
「もしおかしな行動をすれば狐の餌にしてあげるから」
椿鬼は咄嗟に手を放し娘伯の陰へ隠れてしまった。
「……どうしたの?」
「此奴ら怖い」
まるで童のように涙目を浮かべる椿鬼だった。
アイサ達はいまだに取っ組み合いをしているが小百合が鉈を取り上げて場を収める。
「喧嘩ごっこは終わり!早く昼食にするわよ!」
「ありがとうございます小百合さん…」
「むぅ…」
青井と風花から感謝の言葉が出るがアイサは納得してない様子だ。
アイカが近寄りアイサをじっと見つめる。
「分かってる…もう終わり」
独り言を呟いて2人も社務所へ戻った。
「椿鬼も一緒にご飯食べよう」
「嫌じゃ!あんな物騒な奴らと…ぬわあ!」
娘伯に襟を掴まれ引きずられてしまう椿鬼。
「大丈夫?チョウ」
『助かったっす…』
風花に抱えられながらチョウも社務所へ向かう。
「…戸締り」
蔵の戸は放置しているが青井も2人に続いた。
その日の昼食はこれまでで一番の賑わいを見せた……。




